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とくべつ企画
 
新宿で野生のキノコを見つける
ニョキッと伸びる東京都庁。

ここは東京の副都心、新宿。「コンクリート・ジャングル」とも呼ばれるこの超高層ビル群には、意外に本当の緑も多かったりする。
しかし、東洋一の歓楽街を有する新宿という街に似合うのは、もっと陰鬱で後ろめたさを持った、そういう「自然」ではないだろうか。
キノコである。
雑然としたこの大都会のビル陰に、生白いキノコが一本ニョキッと生えていたらと思うだけで、私は興奮してくるのだ。
そうだ、新宿でキノコを、探そう。

野津圭一郎
(のづけいいちろう)

1992年長崎生まれ。大学生が嫌いだから友達がいないのか、友達がいないから大学生が嫌いなのか、もうわからないです。


キノコといえば

ルールは簡単だ。制限時間は、午前11時から午後3時までの4時間。それまでにキノコを見つけることができれば、私の勝ちである。戦いに備え、お守りとして、コンビニで「きのこの山」を購入。キノコといえばこれである。心強い。意気込みも十分に、炎天下の新宿へ出た。

私を守ってくれ。たのむぞ。
まさに「きのこの山」である。このくらいたくさん生えてたらいいなあ。

いざ、歌舞伎町へ

私が(勝手に)思うキノコの三大群生条件。それは、
@暗い
A汚い
Bじめじめしている
である。二秒で答えは出た。歌舞伎町へ行こう。

そこはキノコの庭なのか、大遊戯場歌舞伎町。
日陰の植え込みを隈なく探す。ジャンプにキノコ、生えず。
こういう汚い隙間に生えてそう。キノコ探しの秘訣は、我に返らないことだ。
ラブホの入口付近は必ず日陰になっている。狙い目である。

見つからない。ネズミの死骸はあったのに、キノコの一本生えてないとは一体どういう了見だ。

新宿焦熱地獄

しかし暑い。暑すぎる。しかもキノコが見つからない。もう正午をとっくに過ぎた。暑さと焦りで、私は企画の方向性を徐々に見失っていった。脳内では「きのこ、のこのこ、元気の子〜」の歌が永遠にリピートされている。こんなにキノコのことを考えたのは初めてだ。 きのこの山。たけのこの里。ひとりぼっちの僕。

ひさびさに取り出した「きのこの山」は、どろどろになって一体化していた。
もう、地面から生えてさえいれば何でもよくなってきた。

そして西口へ…

最後の手段として、私は東京のセントラル・パークこと新宿中央公園を目指した。本当は、ビルの谷間のアスファルトから生えるキノコを見たかった。新宿とはいえ公園なら当然、キノコの一本や二本、生えていることだろう。だがもう、キレイ事は言っておれない。そして何より、早く帰りたい。

まさに都会のオアシス。ここにキノコが無いはずない!

 しかし…

探せども、
探せども、
どこにもキノコなんか無い! 有るのはセミの死骸だけ!
うおおおおおお
ぎええええええ

もう、何がキノコで何がキノコじゃないか、分からなくなってきた。石ころも、樹の皮も、全部キノコに見える。キノコとは何なのだ。

もう、うちへ帰ろう。


新宿にキノコは生えていなかった。一本も。それが今回の結論だ。とにかく疲れた。暑かった。いっそ自分の下着にキノコが生えるまで待ってやろうかと思った。キノコ探しは二度とやらない。だがもう遅い。これから先、私は新宿へ行くたび、無意識のうちに目でキノコを探しながら歩くことになるだろう。だから、いつかあなたが新宿でキノコを発見したとしても、私には報告しないでほしい。

探索中、いちばん「死にたい」と思った場所。


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