今はなき「佐とうのレバーフライ」

ところで、次のレバーフライ屋にいく前にちょっと思い出ばなしをさせて頂きたい。実は数年前まで月島一丁目に「佐とう」というレバーフライ屋があった。

西仲通り商店街の路地をちょっと入ったところにあった。 おやじさんとおばちゃんが二人で切り盛りしてる小さな店だったけれど、四方田犬彦の『月島物語』でも紹介されているほどの名店だった。しかし、一昨年ぐらいから店が開いてないことが多く、どうしたものかと心配していたのだけど、昨年おやじさんが亡くなって、店じまいをしたのだということを風の噂にきいた。きいたというか、ネットの書き込みで知ったのだけど……。

何年か前、花火大会の日に花火を見ながら食べるレバーフライを予約するため、開店前に訪ねたとき、店の奥で山盛りのレバーを一つづつ丁寧に包丁で下処理しているおやじさんを見かけたことがあった。レバーに付いている余分な血管や甘皮を黙々とはいでいるのだ。その姿は実に誠実な光景だった。

職人肌のおやじさんは、レバーフライのレシピや作り方を一切誰にも伝えてなかったらしい。佐とうのレバーフライは、マミィとひさご家阿部のさらに中間といった感じの味で、ボリュームがありつつもレバーのくさみはそんなにしない、じつに美味いレバーフライだった。前に買ったときに撮った写真が残っているかと思ってパソコン内をあさってみたけれど、残念ながら写真はなかった。

あのレバーフライが、もう食べられないのだと思うと実に寂しい。

三軒目「緑川」

さて、三軒目のレバーフライは、お肉屋さんのレバーフライだ。

三軒目の「緑川」は、ビルの奥にある月島観音の参道横にあるお肉屋さんだ。実はぼくはこの日まで気がつかなかったのだけど、この店のレバーフライは牛レバーを使っているらしい。今まで何度か食べてきて、レバーの味が濃いなあとは思っていたけれど、牛レバーだったのかと、軽くショックを覚えつつ、レバーフライ（126円）を注文。

ウスターソースにジャブジャブ漬けてもらった揚げたてアツアツのレバーフライを持って、近くの公園で立ち食いを開始。

やはり牛レバーはレバーの味が強い

緑川のレバーフライは串刺しされていない上に、整形されていないので、見た目が凶暴だ。見た目だけでなく、味もレバーの味が濃いので、素人やレバーが苦手な人が食べると火傷をしてしまうかもしれない。しかし、そこはレバーフライ。衣とウスターソースの味が牛レバーの風味と相まって実にビールのつまみに合いそうな味に仕上がっている。はたして、二人の感想はどうか？

「なんかちょっと粉っぽくないですか？」「うーん、ぼくはたくさんは食べられないですね……」と、やはりレバーが苦手な尾張さんは少し苦手のようだ。

「わたしはだいぶん好きですね」「これ衣のアシが長いからソースが良く絡んでてうまい！」「今まで三軒中ここのが一番好き」とレバー好きの古賀さんには大好評だ。やはり、牛レバーは味や食感のくせが強いので評価が分かれるようだ。

からしではなく、柚子胡椒で食べてみたらどうか？

ところで、以前からこの緑川のレバーフライでやってみたいと思っていたことがあった。 それはからしの代わりに、柚子胡椒で食べてみるということだ。牛レバーのくさみも、ゆずのフルーティーなフレーバーがプラスされれば意外と美味しく食べられるのでは？　と思ったのだ。せっかくの機会なので、スーパーでチューブ入り柚子胡椒を買ってきて食べてみた。

まずは一口食べてみる、口に入れた瞬間、ソースの風味とゆずの風味が鼻に抜ける。うん、安心感のある美味さだ。さすが何につけても美味い柚子胡椒。いや、待てよ。よく噛んで味わうとソースの塩味に柚子胡椒の塩味がプラスされてちょっと塩辛い……風味はいいのだけど、やっぱりちょっとしょっぱいなこれ……。ビール飲みながらならいいかもしれないけど……。

期待はずれというほどでもなかったのだけど、思ったほどでもない。なんだかすっきりしない結果になってしまった。

これは「レバーフライに一番合うチューブ入り薬味はなにか？」という別企画で詳しく追求してみたほうがいいのかもしれない……。

次は、いよいよ最後のレバーフライ屋だ。