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ロマンの木曜日
 
歩き遍路はじめました〜遍路日記まとめ(前編)〜

おばぁちゃんと藤井寺に到着、そして遍路ころがしへ

10番札所の切幡寺から、11番札所の藤井寺までは10km弱の道のり。これまでで、最も長く距離が開く区間である。

四国三郎という異名を持つ吉野川を越え、藤井寺まで後2km程といった所で、もう一本のルートで歩いてきた、おばあちゃんのお遍路さんと出合った。


吉野川では良い感じの沈下橋を渡る
藤井寺まであと一息の所で、そのおばあちゃんは現れた

ゴロゴロとカートを引き、ステッキを突いて歩くこのおばあちゃん。白衣を着ているので遍路には違いない。歩く速度が私とどっこいどっこいなので、必然的に並んで歩く事となった。

折角なのでお話を伺ってみると、当然のごとく1番札所から歩いてきたという。昨晩は7番札所の宿坊に泊まったそうだ。5月5日まで、行ける所まで歩くのだという。

ん……そういえば、このカートを引く姿には見覚えがあるような。そう思い、iPhoneの画像リストを開いてみると……あ!


ばっちり、写っていた

これは、3番札所の金泉寺から4番札所の大日寺へ向かう途中、神社で休憩している時に、私を追い抜いていくお遍路さんという事で、リアルタイムブログに乗せる為に撮った写真だ(このポスト)。

黒色のカートに紺色のツバ付き帽子。小柄な体格。うん、間違いない。いやぁ、なんという邂逅だろう。


そして、おばぁちゃんと11番札所の藤井寺に到着

失礼ながら、そのお年でよく頑張れるものである。ここまでの道のり、私もまたかなりしんどい思いをして歩いてきた。その事を思うと……いやはや、脱帽である。

しかし、この先の事を考えると、一抹の不安を拭う事はできない。次の12番札所は、この11番札所の境内から登山道に入り、山を越えていかねばならないのだ。その遍路道は非常に険しく、「遍路転がし」という異名を持つ、序盤の難所である。おばぁちゃんが登り切るには辛いような……。

そんな思いを胸に、この日はおばぁちゃんと分かれた。そして翌日、私は13番札所において、再度仰天する事になる。


中ボスクラスの難所である、遍路道「焼山寺道」へ突入

遍路転がしその1
遍路転がしその2

遍路転がしその3
遍路転がしその4

遍路転がしその5
遍路転がしその6

へろへろになりながら、12番札所の焼山寺に到着

朝の6時30分に藤井寺の境内から登山道に入り、焼山寺に到着したのは15時ジャスト。おおむね、8時間半かかった事になる。その道のりは、「遍路転がし」という名に違わぬもので、焼山寺の山門が見えた時は、心の底から「おぉ!」と叫んだ。

荷物を下ろして、お参りをして、納経をして、そして再び荷物の元へ戻ってくると、私の目に飛び込んできたのは……あのカートとステッキ。そして、おばぁちゃんだった。


こ、このカートは……
お、おばぁちゃん!

正直、私はおばぁちゃんをなめていた。こんな険しい山道を、おばぁちゃんが登ってこれるはずが無い、そう思ってしまっていた。しかし、そんな事はなかった。おばぁちゃんは、立派に遍路転がしを登り切っていたのだ。

話を聞くと、今日は朝7時に出発し、ちょうど私がお参りを済ませた頃に到着したらしい。カートは背負えるようにもなっており、他の方とグループを組んで、登ってきたそうだ。

時間的には、私と大して変わらない。年の差を考えると、私なんかよりもずっとタフだ。いやぁ、おみそれしました。

 

顔なじみになった、フランス人の二人組み

私が交流を持ったお遍路さんとして、カートおばぁちゃんの他に、フランス人の二人組がいる。

彼らとのファーストコンタクトは2日目、7番札所の十楽寺でお参りを終え、さぁ寝床を探そうと思っていたその時だ。二人のうちの一人が私に近寄ってきて、英語で「この辺にレストランはありませんか?」と訪ねてきた。私は通りかかった地元の人に聞き、食堂が併設されている温泉を教えてあげた。

それ以来、私は行く先々でちょくちょく彼らと再会しては挨拶を交わし、一言二言、会話をするようになった。


陽気で楽しい二人です

右が十楽寺で私に尋ねてきた人で、名前はポング。左はポングのボーイフレンドだそうで(そういうお仲だったのね)、名前は……スミマセン、発音が難しくて聞き取れませんでした。

ポングは英語ができる(ペラペラではない)。もう一人の彼は、全くダメなようだ(フランス人は英語ができない人が意外と多い)。後に再会した時、彼が「サヴァ?(元気?)」と言ってきたので「サヴァ(元気だよ)」と返したら、喜んでくれた。

ちなみに、この焼山寺までの登山道でも、私は彼らに抜かれている。彼らはとてもタフで、そして楽しい人たちだ。


焼山寺から下山してテントも張り、景色を眺めていたら
ポングが上半身裸に菅笠というスタイルでうろうろしていた

彼らもまた、私と同じように徒歩で通し打ち(88ヶ所一気に周る事)をやっており、かつテント泊である。この日、私はたまたま、彼らがテントを張った近くで幕営する事になった。

私は杖杉庵(じょうさんあん)という無人のお堂の敷地を借りたのだが、彼らは見晴らしの良い果物畑にテントを張った。そして暫くすると、彼らのテントから、ギターの調べが聞こえてきた。そう、彼らはギターを担いで遍路をやっているのだ。

余計なものを持たないのが鉄則である歩き遍路においてもギターを持っていく。私は、そんな彼らのファンになった。

 

私と彼らは古道を行く

さて、12番札所から13番札所までは24km程。13番札所は大日寺という名であり、4番所のと同じ名前であるが、もちろん違うお寺だ。四国八十八箇所霊場に、大日寺は3ヶ寺、国分寺は4ヶ寺存在するのである。

13番札所まで、私は一般的な鮎喰川沿いのコースではなく、大日寺の奥院である建治寺というお寺を経由する遍路道を選択した為(建治寺への道は、古道が残っているのだ)、その道は結構険しいものとなった。

そんなコース、他に行く人はいないだろうと思ったら、なんとポングたちもこちらのコースを選択していたのでびっくりした。ちなみに、彼ら以外には全く人と出会わなかった。


峠を越えて、鮎喰川を目指す
まるでロードムービーのようなポングたち二人

鮎喰川から離れ、こんな道、誰も行かんだろうと思っていたら
その先の建治寺に二人がいて、思わず笑った

ちなみに、建治寺から大日寺への道は、鎖で崖を降りたりする
このハシゴには、本気で命の危険を感じた

無事人里に降りられた時の安心感が半端じゃない
そうして、13番札所の大日寺に到着

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