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ロマンの木曜日
 
歩き遍路はじめました〜遍路日記まとめ(前編)〜

6ヶ寺周った2日目

さて、2日目だ。2日目は、2番札所の極楽寺から、7番札所の十楽寺まで歩いた。

遍路の序盤、特に徳島県の内陸部を吉野川沿いに西へ行く1番札所から10番札所までは、札所の間隔が狭く、少し歩けばあっという間に次の寺へと着いてしまう。この日歩いた1番から7番までの総距離も、20km足らず。

1日に6ヶ寺も周ったというのはこれが最初で、恐らく最後になるだろう。序盤にふさわしく、とんとん拍子で進んでいくので気も楽だ。


1番札所から2番の極楽寺までは本当に短く、徒歩10分
極楽寺からは、墓地の道を歩く

少し住宅地を歩いて、さらにこの畑の道を行くと――
3番札所の金泉寺に到着

雰囲気の住宅街を歩き――
さらには藤がキレイな里道を行き――

果てにはこのような古道の峠を越え――
たどり着いたのが4番札所の大日寺だ

大日寺から、少しの間緩やかな坂道を下ると――
5番札所の地蔵寺に着く

5番と6番の間は5kmと、少しだけ距離が開く
だいぶくたびれたものの、古民家に心癒された

6番札所の安楽寺に着いたのは16時過ぎである
17時に間に合うよう、7番札所の十楽寺まで走った

5番札所までは距離が短く、また景色も変化があって非常に楽しいのだけれども、5番札所と6番札所の間は少しだけ距離が開く。同じような住宅地がずっと続き、またちょうど疲れが出る頃でもあって、それなりにくたびれた。

それ故、6番札所に着いたのは16時を少し回ったくらい。お参りと納経を終えたら、16時半を過ぎてしまった。6番札所と7番札所は1km少しと近く、できれば7番札所まで行ってしまいたかったので、ここはかなり急いで歩き、最終的にはダッシュした。

しかし、やはり歩き遍路で走るのはダメですな。汗だくになるわ、荷物の重みが背中と腰にくるわ、途中の景色もほとんど覚えていないわで、ろくな事無し。のんびり、ゆっくり、自分のペースで行くのが一番良い。

 

歩き遍路の道しるべは、驚くほどに充実している

ところで、歩き遍路の最中、道に迷う事はないのか、と思われるかもしれない。実は、歩き遍路の道しるべは相当に充実しており、迷う事はほとんど無いのだ。むしろ、車や自転車での遍路の方が、道に迷いやすいのではないかと思う。

一応、私も歩き遍路用の地図は持っているが、万が一地図が無くなっても、この道案内に従えば、歩き遍路を続ける事ができるようになっている。


このような道しるべが、あちらこちらに張られている
これに従えば、迷う事はほとんど無い

間違えやすい場所では、このような注意も記されている
明治時代など、古い道しるべも数多い

特に道が入り組んだ市街地では、それこそ曲がり角がある度に、電柱やカーブミラー、ガードレールなどに、このような道しるべのステッカーがペタペタ張られている。郊外では少し密度が落ちるものの、それでも途絶える事は無い。

歩き遍路をやっていると、いつの間にか歩きながら電柱を見ている事に気づいてハッとする。無意識のうちに、このステッカーを目で追う習慣が付いてしまうのである。

ただし、一点だけ注意しなければならない事がある。これらの道しるべは、あくまで昔からの遍路道に沿って設置されているという事だ。昔からの遍路道は、今の主要道路と一致しない場合が少なくない。


闇雲に道しるべに従って歩いていくと――
いつの間にか、山道へと誘われる事もある

コンビニやスーパーなどのお店などは、これらの遍路道から外れないと見つからない場合が多い。盲目的にこの道しるべに従っていると、いつの間にか山道に入ってしまう事すらある。

具体的な例を挙げると、この道しるべに従うと徳島市街地を通らない。徳島市街地の南にそびえる眉山の裏の、地蔵越えと呼ばれる山道を経て、徳島駅周辺をショートカットしてしまうのだ。買い物など、町に用事がある場合は注意が必要である。

まぁ、私は古道、山道ウェルカム。むしろ市街地の方を避けたいというタチなので、全く問題は無いのだけど。

 

大変ありがたい、お接待という文化

さて、3日目も、2日目に続き徳島県の内陸部を西へ歩いた。3日目は、2日目よりのどかな感じになり、まぁ、悪く言えば田舎になっていくので、その景色の移り変わりがなかなか楽しい。


朝一で着いた8番札所の熊谷寺
田植えが行われたばかりの水田が良いですな

程なくして9番札所の法輪寺に到着
なかなか趣のある集落を縫うように歩き――

333段の石段を登った先にあるのが――
10番札所の切幡寺

なお、この日は遍路の多いゴールデンウィーク中だった為だろうか、切幡寺の入口では、参拝が終わった遍路に対し、地元の猟友会の方々が猪肉のうどんを振舞っていた。

基本野宿の遍路をやっていると、温かい食べ物にありつける機会はそれほど多く無い。大変ありがたくいただいた。猪肉は初めて食べたけど、これが思ったより柔らかく、癖も無く、大変おいしゅうございました。


ちょうどお昼時だったので、非常に嬉しかった

ちなみに、このように遍路に対して食べ物や飲み物を振舞う事を、お接待という。非常にありがたい、昔からの文化だ。

遍路道を歩いていると、突然声をかけられ、ジュースや果物を渡されたりする。時には、500円玉をそのまま手渡され、びっくりする事もあった。歩き疲れてへとへとになっている中、そのような施しを受けると、ありがた過ぎて泣きそうになる。

なお、それらを頂く際には、納め札を一枚お渡しする事になっている。せめてものお返しですな。


初日にも、霊山寺近くで飲み物をたくさん頂いた
大粒のイチゴを頂く事もあった

また遍路道の途中には、お接待所なる場が設けられている事もある。お接待所の形式は様々で、個人のお宅が軒先にポットを置いて、お茶をいただけるようになっていたり、地域の方々が寄り集まって、軽食をご馳走していただける場合もある。


このような、ポットとコップを並べた所から――
なんか、凄い事になっている所まで、様々

当たり前の事ではあるけれど、これらのお接待はあって当然というのではなく、無くて当然、お接待いただければ非常にありがたし、というもの。あくまで地元の方々の善意である事を、忘れちゃぁいけませんな。


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