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はっけんの水曜日
 
箸が転がり、M字開脚するカラクリ人形

工夫と、すごいなーの嵐

大阪への所用ついでに山口市まで足を伸ばした。「ついでに」と思っていたら、新幹線で片道2時間。あらけっこう遠いのね。関西方面の距離感覚がいまいちつかめない。

二象舎・原田さんに車で駅へ迎えに来てもらい、のどかな田園地帯を行くこと数十分。ついに山口のアトリエまで、来てしまった!


住居側の離れ家に、うらやましいスペース。
こちらが、「二象舎」原田和明さん。雰囲気はまさに作家という感じ。

上の写真が、作業場の奥にしつらえられた応接室兼ギャラリー。もう、素敵空間としかいいようがない。荒れ狂う「素敵」の波に飲み込まれそうである。

でも忘れてはいけないのは、ここで例の「転がる箸」や「股に白鳥」が生み出されたということだ。

一通りの挨拶をすませ、手土産を渡し、アトリエのそこかしこに置いてある物に視線を注ぐ。いや、人の仕事場って本当に面白いですよね、とタモリ倶楽部で安斎さんも言っていたが、至極同意だ。


普通のお菓子の缶を、塗装を削って焚き火の灰に突っ込んだら、古びたいい感じの缶になったという。
その方法を、ハンコ押すオートマタの朱肉ケース(写真左)にも応用。100円ショップの缶もしっくりなじむ。

ネットで買った古道具のベル。ボタンが固くてなかなか鳴らせなかった。
バラして、木で部品を作り替えたという。こんな小さい木片で、ベル再生。

いきなり、工夫の嵐だ。「オートマタの作家さんのアトリエ」に来ているという意識から、全部が工夫のカタマリに見える…というわけでもなく普通にいろいろなものが手作りで、手で直してあって、聞くといちいち面白い。うちもヨックモックの缶、今度炙ってみようと思う。

ところで、取材録音したレコーダを再生したら、乙幡は「すごいなー」とアホみたいに連発していた。どんなインタビュアーだ。

そして、録音時間と密度がなんだかすごいことになっている。
なぜかというと、原田氏よくしゃべるのだ。


一見素朴な作品たちを背に、素朴の対極にいる生みの親。

 

雑談の嵐

原田 「乙幡さんは、書くのと作るのと、どういう割合で仕事してるんですか?」
逆にこっちが尋ねられた。

乙幡 「半々ですかね」
原 「物を作る勉強はしたんですか?」
乙 「いやー・・・美大行きたかったクチですが…卒業しても食えないとか諭されて、やめてしまって」
原 「僕も一緒です!絵を描くのは好きだったのですが・・・人文学部を出て、普通に数年間サラリーマンやりました」

こういうものを作っているくらいだから、さぞや小さい頃から図画工作に秀で、その後も華麗に美術畑を歩んで・・・かと思いきや、意外な親近感である。小さい頃も、ガンプラとかミニ四駆を普通に楽しんでいたという。

そのサラリーマンになるまでに、相当な紆余曲折があったそうだ。クラブイベントのお手伝いで作成したフライヤーが評判となって、デザイナーを目指したり。デザイン事務所に入ったつもりが、なぜか書店員になっていたり(?)、そして結局は普通の会社に就職。

私も同じように紆余曲折した時期があるので(今でもそうだと言える)、すごくシンパシーを感じる。それに、美術をいつかは天職にしたい!と考える人々の中には、同じような経験をしている人もいるのではないだろうか。だいいちに食べていかなくてはならない、もどかしさ。美術の分野に限らないだろうけど。


動物オートマタでほっこりしてもらいましょう。作品名「DECOY」。鳥から何が出てくるか?


かわいいテディベアの頭が・・・作品名「TEDDY BEAR」


世界はつながっている。作品名「SHOWER」


ところで、オートマタの話には一体いつなるんだろう?と私も思いながら話を聞いている。楽しげにどんどん出てくる「原田」史の数々。もし最初に本人に会っていて、そのあと作品を見せられたら、「この人がこんな素朴でほんわかしたものを…!」と驚くに違いない。

もう少しでオートマタの話出てくるから、もうちょっと待っておくんなさい。

会社は会社として、ならば趣味をがんばろう!ということになる。おお、ここも私と一緒。失礼ながらシンパシーを勝手に感じてしまう。私も靴作ったり陶芸やったりフラメンコ、アロマテラピーまで手を出した(いずれもけっこうすぐやめた)。

楽器からスノボまで、さまざまな趣味を試していたという。そんなときに、原田氏は1冊の本と出会う―。


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