混迷していく反抗期
親や学校に矛先が向かう本物の反抗期に対して、誰にも迷惑をかけず、身近なものに牙をむいてみる大人の反抗期。あまりうまくいってる気がしないが、触れる物全てにギラギラしていたあの頃をうまくリプレイしてみたい。
続いてのターゲットはのど飴だ。薬っぽい味がするのは苦手なので、普通のキャンディに近いようなフルーツタイプのものを選んでみた。
ゆっくり溶かして、のどをケアするために摂るのど飴。ここに反抗したい。ゆっくり食べるかどうかは俺が決める。
口の中で転がすことなく、いきなり噛み砕く。どうだ!
バリボリと音を立てて細かくなっていくのど飴。そこにはのどをケアすることへの意味のない反逆がある。
それにしても飴を噛んで食べるなんて久しぶり。子供の頃にはときどきやった覚えがあるが、こんな頭蓋骨全体に響くような衝撃があっただろうか。
そしてその衝撃のあとにやってくるおいしさのビッグウェイブ。そう、飴は噛むことによって表面積が何倍にも増えて、味が一気に濃くなるのだ。
おいしさを大量に放ちながら、ぐいぐい溶けていくのど飴。ちょっとした幸福感がそこにある。
続いてはガムだ。粋がって辛口ミント系のを選んだりすることなく、味のチョイスはまたしてもフルーティ。果汁をいっぱい使ってるそうで、おいしそうだなと思ってのことだ。
反抗期とガムはよく似合う。どんなときにもクチャクチャと噛んでいるのは、一般的なマナーに反抗する雰囲気を演出できるからだ。
ただ、大人の反抗期にそんな青さは必要ない。
リアル反抗期なら、そこら辺にペッと吐き捨てたりもするところだろうが、大人になった今、そういうマナー違反はしたくない。噛んだガムをそのまま飲んじゃうのだ!
あとから写真を見ると、飲み込む瞬間やや顔を上げて、神妙な表情をしている自分に気づく。でかい薬のカプセルを飲むときと同じ感じだ。
続いてはプリン。その中でもロングセラーであるプッチンプリンを選んでみた。
プッチンプリンと言えば、底のピンを折って逆さにすることで、きれいに器に盛りつけられるギミックが特徴のもの。子供の頃、そんな風にして食べるのが楽しかった記憶がある。
続いては同じく定番商品の「シーチキンマイルド」。「シーチキンワイルド」だったら反抗期っぽいが、惜しくもマイルドだ。
けれども、実体は魚なのに「シーチキン」というのは反抗期と共通のスピリッツを感じなくもない。この缶詰にどうやって立ち向かえばいいだろう。
缶の両面のうち、片側はプルトップになっているこの缶詰。基本的はプルタブをひっぱって開ければ、簡単に中身を出すことができる。
反抗期の場合、そこをあえて逆さにして缶切りで開ける。その行為に何かの意味を見出そうとはしない方がいい。あくまで理由なき反抗なのだ。
そういえばこれ、反抗期と関係なくやったことある。今ほどプルトップ缶が一般的ではなかった頃、簡単に開けられる面に気づかず、わざわざ缶切りで開けたことがあった。
あとから反対側に気づいて「なーんだ」となったあの日。そんな思い出がよみがえる大人の反抗期だ。
どうでもいいことに反抗すると、なんだか間抜けな感じがする。ここまでやってきてわかったのはそういうことだ。
それでいいのか。お前の反抗心はそんなものか。こんなことだけで終わらせたくはない。家でちまちまやってるだけでなく、この気持ちを抱えたまま外に繰り出そう。