晴れた日に再訪
あまりに雨だったので晴れた日に再訪させてもらうことになった。前回訪れた時も、その前1週間は晴れで、調教師の方に「(雨の日を)狙ってきたの」と言われる程だった。僕もそれを受けて「そういうことになりますね〜」と意味の分からないことを言っていた。
ついに晴れた、と喜んでいたら今度は全休の日だった。 基本的に調教はお休みということだ。槍が降ってもやる調教だけれど、そういう日もあるのだ。行ったら田村調教師に「ゴメンね〜、休みだった」と言われた。それでも、調教している馬もいるので自由に見せてもらうことにした。
晴れた日の調教コースは開放感があり気持ちがいい。 全休で調教している馬も少なく、そんな場所を独り占めして走っている馬はとても気持ちがよさそうだった。
今まで知らなかったのだけれど、走るとき馬は鳴くのだ。 一完歩(人間でいうところの一歩)すすむごとに「ヒヒン」「ヒヒン」と。僕も鳴きながら走ると早く走れるのだろうか。
晴れた日の厩舎
厩舎も自由に見せてもらった。 休みの日だけれど、カッポ、カッポと音を鳴らしながら馬が闊歩していた。なんとなく馬も人ものんびりしていた。あるいは雨が降っていないから、のんびり感じるだけかもしれない(それと前日忘年会だったらしい)。
外に出ている馬を、ガラス越しにトランペットを欲しがる子供のように見ていたら、触ってみる、みたいな優しい言葉をかけてくれた。怖いので崩れやすい細い崖の上を歩くように近づくと、馬の視線をかなり浴びた。彼は視線で殺すタイプだ。
この馬は北海道競馬所属の「カネマサコンコルド」というかなり強い馬だ。川ア競馬場で行われるレースに出走するために遠征に来ていた。
G3という格の高いレースも勝っていて実力もある。 そんな馬に見つめられた僕は、電車でバッタリ会った女医に見つめられている感じで、視線を合わせられない。照れて、照れて、緊張するのだ。ホント、彼は視線で殺すタイプだ。
厩舎には獣医さんがいる場所や、体重を量る場所など、おおよそ競走馬に必要な物が揃っている。砂がひかれた地面の部分には蹄鉄(馬の靴みたいなもの)の跡が残っている。
ここでないと味わえない世界が広がっていて楽しい。前回は雨が降っていて何にも見えなかったから初めて気が付いた。
さらに歩いていたら、今度は「ガッサンプリンス」という馬に触らせてもらった。厩務員の上野さんが優しく馬に話しかけながらメンコまでつけてくれた。まるで友達と話すかのように馬に話しかけている。言葉は通じている気がした。馬が優しい表情になった気がするのだ。
やっぱり馬は人参が好きなのか聞いたところ「馬によるね」とのことだった。馬=人参好き、みたいなイメージがあったけれどそうでもないらしい。男性がみな女性が好きとは限らないのと一緒だろうか。