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ロマンの木曜日
 
電車やバスでダムに行こう

バスに乗って東京最大のダムへ

鳩ノ巣駅からふたたび奥多摩行きの電車に乗って、終点の奥多摩へ向かう。とは言ってもたった2駅、しかもほとんどトンネルなのであっという間だ。


やってきた奥多摩行き
ここから先はほとんどトンネル

奥多摩駅は、ここが東京都内とは思えない山に囲まれた小さな終点駅だけど、これから登山やハイキングに向かう人、帰りの電車に乗る人でごった返していた。

改札を出るとすぐ目の前にバス乗り場があって、ここからはバスに乗り換えてさらに山奥へと向かう。どのバスに乗ればいいか分かりにくいけど、「奥多摩湖経由」と書いてあるバスなら大丈夫。そう、向かう先はそのまま奥多摩湖。ダムの名前は小河内(おごうち)ダムだ。


観光客でごった返す奥多摩駅
終点は山小屋ロッジ風の奥多摩駅

バスが発車して、国道411号線を登って行く。バスの高い車窓から見ると、橋の下を流れる多摩川は深い渓谷で、こういう光景はマイカーの運転席からは見られなかっただろう。

バス停はたくさんあるけど、ほとんど乗り降りする人もいないまま、トンネルが連続するようになると目的地はもうすぐ。


奥多摩湖と書いてあれば間違いない
こういう景色が見られるのもバスならでは

ふと、あるトンネルを抜けると目の前に巨大なコンクリートのすべり台が現れる。


突然視界に巨大なすべり台が 水が流れてるとバスの中で歓声が上がること間違いなし

あまりの唐突さ、そして大きさに目が釘付けになること間違いなしのこの物件、小河内ダムの水門から放流された水が流れる余水吐なのだ。普段は水が流れていないけど、小河内ダムは上水道用のダムで、洪水調節、つまり治水の用途はないから、台風が来たりすると豪快に放流している光景が見られる。そんなときはこのすべり台の目の前、滝のり沢バス停でピンポンだ。

その先でバスは一旦国道を逸れ、小河内ダムの脇にある資料館や駐車場の前にある奥多摩湖バス停に到着。バスを降りれば目の前に広大な貯水池が広がっている。


奥多摩湖バス停で降りると
その目の前が、そう奥多摩湖

青梅線とバスを乗り継いでようやく来た、ここが奥多摩湖。正式名称は小河内ダムによって造られた小河内貯水池だ。

ここに貯まっている水はすべて東京都の上水道用の水で、そういえば、この水が家の蛇口から出るまでには、ここまで見てきた全てのダムを経由することもある。つまり、小河内ダムから多摩川に流され、白丸ダムを通って、途中の堰で取水されて、導水管を通って村山下ダムで一旦貯められ、浄水場に送られてから一般家庭へ配られる。

何の意識もなくダムを見てまわっても、実は知らないところで水のネットワークが繋がっていたりするのだ。そういうところも面白いと思う。

奥多摩湖に来たら、広い貯水池や目の前に並ぶ水門に目が行ってしまうと思うけど、まずその手前の詰所のようなところにある、現在の貯水池の状況を表す表示パネルを見よう。


小河内名物、現在のダム状況パネル

一見なんのこっちゃだけど、貯水率が少なければ何となく水不足なのかな、と意識できるし、放流量が多ければ多摩川が増水しているから気をつけよう、などと頭に入れることができる。なにより小河内ダムが常にはたらいている、ということを実感できる。

そこから余水吐の水門の上を通って堤体へ歩く。水門の上から下流を見ると、さっきバスから見えた余水吐の水路がまっすぐ延びていて、先の方でストンと落ちている。子供のころからこれを見て、たとえ水が流れていなくても、頭の中で水が流れている様子を思い描いて大興奮していた。

ちなみにここは僕が産まれて初めて連れて来られたダムらしい。なんという情操教育!


ずらりと並ぶ余水吐の水門
その上の通路を通って堤体に向かう

大人になっても心の底で開かないかなと願う
この余水吐を見て子供のころから大興奮

堤体の上は広い遊歩道だけど、子供のころ見たときはもっともっと広かった気がする。でも堤体の上から見下ろしたときの足のすくむような高さは相変わらず。それもそのはず、小河内ダムは高さ148mで、完成した昭和32年当時は日本で2番目に高いダムだったのだ。


これも小河内名物、地方のバスターミナルっぽい建物!
堤体の上には見物人がたくさんいた

このダムの個人的な欠点は下流側から写真を撮れないことだけ
すぐ下の建物は発電所であれでも5階建てくらいの大きさだ

都民の水がめとして、戦後から高度経済成長時代を支えた小河内ダム。計画された昭和初期には想像もつかなかったほど東京が拡大したいま、水がめとしての立場は利根川水系に譲り、バックアップ的な役割が中心だけど、相変わらず多くの人で賑わっていた。

ここで休日を思い思いに過ごしている人々は、このダムの役割や自分の生活との関わりをどのくらい知っているだろうか。

ま、知らなくてもいいのだけど。


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