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ロマンの木曜日
 
電車やバスでダムに行こう

マイカーではたどり着けない日本最高峰のダム


さて、公共交通機関を使って、都内各所のダムに出かけてみた。徐々に距離を遠くして、電車だけ、電車+徒歩、電車+バスと難易度を上げ、ダムの規模も大きくしていった。ここまで来たら、いっそ公共交通機関で行ける日本最高峰のダムに行ってみよう。何がいっそなのか全然分からないけど。

というわけで、あまりにも突然だけど、大糸線の信濃大町駅にやってきた。


すごい速いけど酔ったスーパーあずさ
多くのダムの玄関口

東京からも名古屋や大阪からも、それぞれ中央線で松本まで来て、そこからおよそ1時間。僕はスーパーあずさに乗って来たけど振り子で酔った。

ここからしばらく路線バスに乗車。路線バスとは言っても観光バスタイプだった。平日だったせいかバスにはほかに乗客がおらず、完全に貸し切り状態。


観光バス風だけど路線バス
シーズンオフとは言え貸し切りとは

信濃大町駅を出発して少し走ると目の前に北アルプス山脈がそびえる。11月の半ばだったけど、山々はもう白く雪をかぶっていて近寄り難い雰囲気。


遠くの山々は早くも雪化粧
徐々に紅葉してきた

バスは市街地から農村地帯を抜け、紅葉真っ盛りの山道に差しかかる。高度が上がってくると徐々に紅葉が終わり、いつの間にか完全に落葉して枝に着氷した森林地帯を縫うように走る。終点に近づくと山の斜面を覆う木々は完全に真っ白になっていた。積雪はないのに木の枝だけが真っ白い。普段見られない不思議な光景。これが樹氷だろうか。


今が紅葉のピークだなと思ったら
数分後には樹氷に変わった

樹氷に囲まれた砂防ダム群、かっこいい!
そうこうするうち終点に到着

バスの終点は扇沢駅。電車からバスに乗り換えたけど、まだ目的地ではない。ここでもう1度乗り換え、今度は電気で走るバス、トロリーバスだ。

かつては東京の街中でも走っていたという話だけ聞くトロリーバス、今はここだけでしか運転されていないらしい。


夏は激混みの扇沢もいまはガラーン
寒いからみんな中にいるのかな

なんと改札にも誰もいない!
結局、トロリーバス5台で乗客は僕たちだけ

出発してすぐ、バスはトンネルに突入。これ、史上稀に見る難工事で映画化までされたトンネルで、トロリーバスの車内放送もしきりに難工事っぷりをPRしている。今はとても快適に通過できるので当時の苦労は想像するしかないけど、おかげであんな秘境にダムを造ることができたし、僕たちも気軽に行くことができるのだ。通るたびに畏怖と敬意を忘れてはいけない。


こんな空いてるトロリーバス初めて!
石原裕次郎のあの映画のモデルになったトンネル

やがてトロリーバスの終点に到着。まだトンネルの中だけど、ここから階段を上がって行くと、いよいよお目当ての日本最高峰のダムを眺められる展望台だ。


トロリーバスの終点はトンネルの中
この階段いつも足早になってしまう

公共交通機関で来られるダムの最高峰、黒部ダム

というわけで、高さ186mで日本最大、関西電力の発電用ダム、黒部ダムにやってきた。日本にダムは数あれど、やっぱり大きさ、風格、かっこよさ、どれをとっても黒部を越えるダムはなかなかないと言える。

ここは自然保護の観点から、マイカーは扇沢までしか入れない。つまり最終的にはトロリーバスに乗らなければたどり着けないのだ。まさに公共交通機関で行ける日本最高峰のダムと言えるだろう。

しかし、初夏から秋までの観光放流が行われている期間は大勢の観光客で賑わう黒部ダムも、観光放流が終わって冬期休業に入る直前の、ある意味短い期間のオフシーズンは人もまばら。顔に当たる風が冷たすぎて痛いけど、ダムをじっくり観るには放流してない今の時期の方が断然いい。


ダムをじっくり観るなら放流してない時期がおすすめ

黒部ダムにはレストランが隣接していて、珍しいメニューが売られている。ごはんをダムの堤体、ルーを貯水池に見立てたダムカレーだ。最近各地でダムカレーを使った街おこしが行われているけど、僕の知る限りここが元祖だと思う。


ダムの傍らに立つレストハウス
分かる人には分かる、分からない人には分からない形

ダムカレー越しにダムを見る
このカレーむちゃくちゃ辛かった

ちゃんとごはんがアーチしてて、放流や水しぶきも表現しているとのことだけど、さらに貯水池をグリーンカレーで表現するというこだわり。正直そこまでしなくても...とも思うけど、このカレーがまた、ニンニクやココナッツが効いていて、なかなか強烈な味わいだった。すっごい好き嫌い分かれそう。

さて、今シーズン黒部ダムに行けるのは今月いっぱいまで。

扇沢の樹氷や、がらんとしてるトロリーバス、放流していないのでよく観察できる堤体の迫力など、ほかの季節にはない、黒部のもう一つの顔が観られるのでお勧めだ。


本当に誰もいないよ

というわけで、今度の休日、ぜひどこかのダムに出かけてみてほしい。

え、車がない?大丈夫、電車とバスを乗り継いで行けるから。

電車でダム、よかった

ダムをめぐるようになって10年が経ったけど、今まで電車を使ってダムに行ったことがほとんどなかった。なのでイチから楽しさを探る旅だったけど、どこも楽しかった。

最初に少し書いたけど、たとえば大井川鐵道とかJR只見線とか、ダムを造るために敷かれた路線もあるので、それに乗ればもっと楽に楽しくダムに行けるんじゃないかと思う。

黒部もそうだけど、小河内ダムも観光客のほとんどがアジア系外国人だった。よくここまで来たなーという思いと、日本人ももっと国内観光しようぜという思いが交錯する

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