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チャレンジの火曜日
 
チリのフライは大分の唐揚げ? チリ高級料理試食会へ
友達の結婚式に行ったわけじゃないんですよ

「チリ」と聞いて私がまず思い浮かべるのは、ベトナム料理でよく出るチリソースだろうか。甘くてとっても辛い。

いやいや、そうじゃなくて国の方のチリ! といわれてようやく、あ、あの南米の、なんだか長い国? と思い至る。

それくらいチリについてまったく無知識のところへ、チリのシェフによる料理を食べる機会にめぐまれた。しかもなんとB級グルメじゃなくて、高級料理、A級グルメなのだ。

チリのA級グルメ……、どんなものなんだろう。想像もつかないぞ。奮えて食べてまいりました。

ちなみに、チリではあまり辛いものは食べないらしいよ。意外!

古賀及子



「チリ・ウィーク」の関連企画でした

東京で6月の第1週に「チリ・ウィーク」というチリの料理、アート、カルチャーをビジネス関係者を中心に一般向けにも紹介する「2010チリ・ウィークin東京」が開催された。

その一環としてチリの素材を活かした料理とワインの昼食会、というのががメディア向けに開催されたのだ。

異国のひとが食べているものに興味がある、というだけで参加を申し込んだものの、正直、当日までどういうことが行われるのか全く想像がついていなかった。


ちなみに「チリ・ウィーク」はホテルでのグルメフェア(6/8まで)やギャラリーでのチリ人画家による展覧会(6/22まで)などが催されております

会場は高級ホテル

会場は新宿のヒルトン東京。高級なシティホテルであることは事前の案内でもちろん知っていたのだが、心ではで「なんでホテルなんだろう?」と思っていた。

というのも、チリ・ウィークとういう語感から、公園でよくやってるフードフェスティバルのようなものを勝手に想像していたのだ。現場ヒルトンだっていってるのに。

実は、こういったご招待をいただくことはこれまでもあまりない。そりゃそうだ。普段は納豆1万回まぜてフィーバーしたりするサイトなのである。それだけに、何がなんだか分かってなかったのだ。

会場に着いて、本当に自分が到着したのがヒルトン東京で、ロビーへのドアをベルボーイの方が開けてくれたので驚いた。あ、本当に高級ホテルなんだ。

ヒルトン東京を目指してやってきて、着いた場所がヒルトン東京で驚くって、どういうことだろう。自分の置かれた状況がここまで飲み込めてないって我ながらすごい。


しかも、びびってヒルトンの写真を撮れなかったので、もらった資料からチリの地図を。どうだろうこの国土の長さ

こんなに長いといろいろ大変なんだろうな


大使もいらしてますよ

会場はホテルの2階にあるレストランだ。入ると、なんか全体的にキラキラしている。うおお。

このあたりでようやく、「これはえらいところに来たぞ」という現実感と恐縮とわくわくが押し寄せてきた。

なにせ、駐日チリ大使も来てるのだ。実は大使の参加も事前資料に書いてあったことで私も知ってはいたのだが、ご本人を目の前にしてまた「あ、本当に来てる」と思ったのだった。百聞は一見にしかずってこういうことか(こういうことなのか?)。


大使のスピーチが英語で。同時通訳つき

中央テーブルにはチリの食材がずらりと飾られております


席には友達の結婚式でしか見たことないみたいなジャーン! という感じのセットが

ロケット鉛筆しか持ってなくてごめん


英語の会話を小耳に食べます

とにかく一番すみっこの席に、と思ったらスピーチスペースの真後ろだった。次々に挨拶する大使、ヒルトンの偉い人、料理を担当したシェフ、ヒルトンのチーフソムリエといった方々の後ろ頭を見ているうちに、いよいよ料理が供されはじめた。

会場にはやはり外国人も多い。私の斜め前の方と、1つ席を空けて(お隣は空席だった)隣の方もどうやらチリの方のようだった。

チリの公用語であるスペイン語で話したり、私の向かいで静かに食事をする日本人の男性とは英語で喋ってる。

そうなのだ、どうやらこの会に来ている方々は日本人もみんな英語やスペイン語ができる風なのだ。キャー!

私は始終、いつこのチリの方に外国語で話しかけられるのではと気が気でなかった。これぞまさにアウェイ、である。

ちなみにこのチリの方には最終的に本当に話しかけられてオタオタしたのだが、そういう私の心の揺れ動きはひとまず置いておいて、まずは今回食べたチリのシェフによる特製のお料理3皿をご紹介させてください。


司会の方による乾杯でスタート。ソムリエの方によると「ジャスミンティーのかおりがする」というワインであります

メニューリストも英語か?! と思ったらそこはさすがに日本語・英語表記だった。ふー


前菜

あ、コロッケ

写真左下のリッツのようなものはカボチャのパンケーキ。ガジガジという固さで素朴。コンビーフ的な牛肉と、さらにその上に乗っかってるのは南米アンデス地方産の穀物である“キヌア”だそうだ。

グラスに入っているのはセビーチェというチリ料理。

中央にあるのが日本のコロッケのようで、あ、コロッケだ、と思っていた。あとでシェフに聞いたら「うん、コロッケだよ」とのことだった。この日は日本人の口にあうようにチリの料理であるシーフードプディングをコロッケの中に入れたそう。

なんか、ちょっと緊張が抜ける。そうか、コロッケか。


メイン

チリのフライは中津のから揚げ

左のマグマのようなものはサーモンの天ぷら。チリではフライは衣にニンニクとハーブの下味をつけることが多いそう。あ、それ大分のから揚げと同じだ!

中央は豚ロース肉のソテーで、マッシュポテトがかわいく乗っかっている。豚がかなり固く焼き上げられていて、やわらか至上主義の日本の肉のあり方との違いを感じてうれしくなった。ぎゅうとかみ締める。

奥の魚はチリ産のホキという魚。メニューによると「ホキのソテー ルクマ入りフムスとともに」と書いてあって、何がなにやら感がすごい。

ルクマはチリの果物で、フムスはヒヨコ豆のペーストだそうです。


デザート

唐辛子っぽいなと思ったら本当にそうだった

グラスに入っているのはオリーブオイル入りムース。前にパラパラと散っているのはメルケンという、チリのその名も“燻製粉唐辛子”だそうな。

この燻製粉唐辛子は何かにつけて使うのだそうだ。なにせデザートにも使うほどなんだからよっぽどだろう。

中央はメレンゲ。これについては後でまたシェフに話を聞きました。

いわゆる創作料理とのこと

今回のセットはザ・チリ料理というよりも、現地の一般的な料理をかなり洗練させ、さらにシェフが日本人の口に合うようにアレンジしたものだそう。

豚のソテーのインパクトや唐辛子やメレンゲの甘さにある異国感に、中津のから揚げとかコロッケが乗り入れててなにやら親近感むんむんだった。

ただ、そうなるとやっぱり知りたいのは、現地の人たちが日常的に食べているもののことだ。


ふたたび会場ディスプレイより。サーモンはチリの主力輸出品 なんか引き出しみたいのにもいっぱい入ってるぞ

おっかなびっくり情報収集

実は、食べ進むうちに完全アウェイの私に救いの手が差し伸べられていた。先ほどまで目の前に座って隣のチリの方と談笑していた日本人の方が話しかけてきてくれたのだ。

チリワインの輸入に携わってられるそうで、年に1度はチリにも行くという。現地の事情を日本人目線でいろいろと教えていただいた。それによると…

・前菜に出た「セビーチェ」は庶民的な料理でもある。普段着バージョンだと、もっと雑で大皿にどばっと盛ってある
・ワインも美味しいが、ビールもおいしい。地ビールも盛ん
・マクドナルドはもちろんある
・スーパーで巻き寿司を売ってる
・魚はたくさんとれると思うけど、どちらかというとみんな肉を食べてる
・辛いものはあまりない。苦手な人が多いんじゃないか


セビーチェは前菜ではグラスに入ってウニまで乗って提供された。確かにこれはよそ行きですよね

シェフ登場

そうして和気あいあいと話ていると、ベロベロベローっと隣のチリの女性にいよいよ英語で話しかけられた。

分からないながらに、どうやらシェフが各テーブルを回っているから、あなた何か質問したら? 的なことをいってくれているらしい。

ふが。

どうしよう。私は何しろ「マイイングリッシュノットイナフ」なうえ、スペイン語といえば「グラシアス」って言葉は知っているものの、その「グラシアス」がどういう意味なのか、こんにちはなのか、ありがとうなのか知らないくらい全くなのだ(ちなみに「グラシアス」は「ありがとう」でした)。


そしてマティアス・パロモ シェフがやってきた! 

豪華! 通訳付き!

なんと、ここでまたも救いの手が差し伸べられた。

あわあわしている私にどこからともなく、スペイン語のできる日本人の方が現れたのだ。一時はチリに在住し在日大使館でスタッフをしていた方だそう。

おかげで今日のメニューをもとにいろいろとお話を聞くことができた。せっかくなので、インタビュー風にまとめてみよう。質問の後に通訳さんが付いていると思ってぜひ読んでみてください。

−シェフは修行以前はチリの郷土料理に親しんでられたということですが、今日のメニューにもそういった料理が取り入れられていますか

「前菜のカボチャのパンケーキがそうです。チリでは冬の寒い時期にハチミツをつけたりしてよく食べますね」


この台座の部分。しっかり噛みごたえがあってちょっと滋味だけどどこか華やかな甘さで、確かに南米の食べ物! という感じがして郷土料理好き(私です)としてはかなりぐっときてたんですよ


家庭料理といえばとうもろこしのケーキ

−チリの代表的なメインディッシュというとどんなものですか

「とうもろこしのケーキでしょうか。夏によく食べますね。コーンと牛乳をミキサーにかけてから煮たものに肉と玉ねぎを入れて、チキンやゆで卵を置いて、その上に砂糖をかけて焼いたものです」

−砂糖? 甘くするんですね

「甘いメレンゲを乗せて食べる家庭もあるんですよ」


メレンゲはこの日のデザートにもあった、甘い泡。チリではよく食べるものらしく、ケーキも甘いメレンゲまみれのものがあるそうです

シェフは大福とおまんじゅうとどら焼きが大好き

−デザートもとてもおいしかったです。チリのデザートと日本のデザートを比べるとどうですか

「チリのデザートはとても甘いです。日本のに比べると本当に甘い。日本のスイーツは洗練されていますね。フランスのスイーツを思わせます。大福とおまんじゅうとどら焼きが大好きです」


老練菓子ならまだたくさんあるので持ってくればよかった

日本のスイーツは甘すぎず、洗練されていておいしい。そういってくれたシェフ。日本料理のことも大変にほめてくれた。こういうの、単純にすごくうれしくなりますね。

ちなみにシェフの髪型は、プープーテレビに参加している宮城さんと全く同じであった。


宮城さん

そんなシェフ、甘すぎない日本のお菓子として「大福とおまんじゅうとどら焼き」を好きだと言ってくれたけど、それ日本ではかなり甘い分野のお菓子じゃなかったか。チリの甘味の本気が気になります!


そうして、おみやげまでいただいて帰ってきた。日本語でチリの遺跡が紹介された斬新なトートバッグと、キャップだ!

あと、ワンピースで来て本当によかった

学生の頃、国自体の形(すごい長い)のインパクトでどの国よりも場所と名前を覚えやすかった、チリ。なのに場所以外は最近地震で大変だったろうなくらいしか知らないなんて、ちょっと申し訳なさすぎだ。料理はおいしいし、食材もすごく魅力的で豊富なんですね。

そんなチリへの興味が沸いたと同時に昼食会を終えて思ったのは、ワンピースを着ていって本当によかった! ということであった。

この日、着いたら周りの人々がみな男性はスーツ、女性もスーツやきちんとした格好だったのだ。開催案内を冷静にながめれば簡単に分かるようなことだったのだが、私は日々かなりカジュアルな服装で仕事をしているので勢い危なく同じ服装でくるところであった。

妊娠したお腹がだいぶ大きくなってきたからという理由で本当に偶然、ワンピース、しかも奇跡的に綿ではなくサテン地の! を着ていたのはおぼしめしとしか思えない。神よ。

そんな偶然やまわりの人々(通訳してくれた方や声をかけてくれた方)に支えられて私は今日も生きていて、地球は回っていて、そうしてチリでも人々が生きているのだろう。あまりにも遠かったチリとい国との突然の出会いに気持ちがやたら大きくなってます。

民族衣装のスタッフの方は安産祈願をしてくれた。やさしいなあ


 
 

 

 
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