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土曜ワイド工場
 
老練菓子アソート,その理想と現実
老練菓子アソート、こういうの!

スーパーのお菓子売り場は広い。店の規模にもよると思うが、かなりの占有率なんじゃないか。

その拡張に一役買っていると私が思っているのは、ひっそりと、しかし必ずある「老練菓子コーナー」である。

「老練菓子」との命名は私が勝手にしたものだが、実際は「駄菓子(子ども向けの低価格のばら売り駄菓子とは別)」や「半生菓子」というコーナー名がつけられていることが多い。

かりんとうや芋けんぴが置いてある棚だというと分かりやすいだろうか。

ここに、ずっと気になるタイプの袋菓子があるのだ。それが、老練菓子アソートである。

古賀及子



魅惑の老練菓子コーナー

老練菓子アソートの紹介に入る前に、まずはこの魅惑の老練菓子コーナーをご紹介したい。

先に書いたかりんとうや芋けんぴのほか、最中、あんこ玉、六方焼き、甘納豆といった和菓子屋さんにありそうなものを袋菓子化したものがメインコンテンツだ。


文字が猛々しく頼もしい

バウムだが、小倉。五家宝は私の祖母の好物でもある


このほか南部せんべいがあったり、そうかと思えばミニドーナツなど一見老練とは遠いようで実家っぽいお菓子もあって見逃せない(名古屋の「しるこサンド」も最近このコーナーで東京でも買えるようになった!)。

全体的に大手ではない菓子メーカーが作っているものが多く、パッケージや包装が素朴で独自だったり、量がやたら多かったりする。

渋めのお菓子が多いので「老練菓子」と呼んではいるが、老いも若きも、甘いものが好きな方はきっと注目している棚だろう。

私もビッグメーカー物のお菓子よりよっぽど好きで、何の用がなくてもスーパーに行くとかならず寄ってしまう。

そうだ、以前記事にした、スポンジケーキのきれはしを詰めたキュウスケケーキもこのコーナーで見つけたのであった。そういう、わくわくしたお菓子がたくさんあるのだ。


若者が好きそうなタイプのお菓子にもかかわらずにじみでる生活感こそ、老練菓子コーナーのお菓子の特徴

プリンであるが、餅


幅をきかす和菓子の詰め合わせ

そんな魅惑の老練菓子コーナーで幅をきかすのが、今回ご紹介したい「老練菓子アソート」だ。

平たく言うと和菓子の詰め合わせのこと。だいたい200円台後半から300円台中盤くらいの価格で売られている。

色々な和菓子がたくさん入っていて、寄り合いなどにはぴったりなのかもしれないが自宅で食べる用にはちょっとハードルが高く買うのに躊躇していた。

そもそも、何がどれくらい入っているんだろう。

今回は満を辞して購入し、その内容をつまびらかにしていきたい。


最初のうちは「やっと会えたね!」という嬉しさで一杯だった

買ったのは全5袋

買い集めたのは全部で5袋のアソート。3軒のスーパーをめぐって買った。予定ではもっと足を延ばしてたくさんの店をめぐり、その存在があればあるだけ欲しいと思っていたのだが……。

このアソートを通し、老練菓子の本気、隠された鋭い牙に触れ、そして5袋以上買うのは恐れ多いと知ったのだった。その恐ろしさとは。さあどうぞ、老練菓子アソートの世界へ。


1袋目「四季のあじ彩」

個数を円グラフでというのはヘンですが、雰囲気づくりということでひとつ

思った以上に本気の老練

渋い内容であると覚悟して購入したわけだが、すべて並べて驚いた。思った以上の渋さ。

最中や桃山といったセレクトは想像していたが、ゼリーやぎゅうひ(“餅”と表現してある)がこんなにも入っているのか。

ゼリーというのは冷やして食べるあのゼリーではなく、昔よくあった寒天で固めた甘いもの。そういえばちかごろ見ないなと思っていたが、しっかりと老練菓子の世界で生き残っていた。

テレビで見かけなくなったタレントが知らない間に活躍の場を舞台に移していたのを知ったときのような再会の気持ちが湧き上がる。

ちなみに、ゼリーとぎゅうひは本来別のものだが、このアソートの中においては同じような立ち位地らしい。ゼリーはそれだけでアソートを形成して売られてもいたのだが、しれっとぎゅうひとゼリーが一緒くただったのだ。


寒天、もち、ゼリーがぎゅうぎゅうに

日本のケミカルはおばあちゃんちにあった

さらに、ハッとなったのは色合いだろう。


ピンク×オレンジに砂糖コーティング みどりの皮で羊羹をサンド。羊羹にはざらめが

青いケーキに「アメリカってすげえ」と恐怖するわれわれだが、日本にだって確固としたケミカル文化があった。

私たちのアメリカはおばあちゃんちにあった。これはまさかの展開だ。

抹茶だらけの詰め合わせも

続いては抹茶に特化したアソート。老練にやはり抹茶はつき物だろう。確認すると前出の「四季のあじ彩」と同じメーカーのもの。

ここでもゼリーが大活躍だ。ゼリー、ぎゅうひ、寒天もちと名前をかえてほぼ同じ味で違う食感のゲル状のものが詰まっていた。


2袋目抹茶づくし」

一部、フライングで食べちゃったカラが入っておりまして、ご了承ください!

容赦のない、本気の甘さ

ゼリー、小さなきんつば、最中と試食する。

甘い。

いや、私は甘いものが好きなで楽しみにして買ってきたのだが、それにしても甘すぎないかこれは。

コンビニでばら売りされているもなかをよく食べるが、それとは比べ物にならないほど、一つ一つが全力で甘いのだ。

甘さ控えめの商品が多い昨今でありますが、甘さを控えないとお菓子はここまで甘いのか。剥かれた牙に、このあたりで気づいた。

老練菓子とはいえ、私のような青二才でも楽しめるものだとたやすく考えていた。が、どうも「まだあんたには早い」と言われているような、なにかお菓子サイドに拒まれているかのようだ。


抹茶のきんつば。この小ささでガツンとお腹にたまる。甘いから 牛皮(左)も、寒天餅(右)も、食感は違うが味が全く同じで、老練菓子界におけるゼリーとぎゅうひの同一性を再認識

それにしてもどれも長野県産

3袋目は最初の2つとは別のメーカー。ただ、先のものと同じく長野県飯田市内のお菓子メーカーだった。

飯田市を調べると水引が有名なようだが、東京(関東?)における老練菓子アソートの世界でもかなりのシェアを占めているんじゃないか。

(結局、このあと出てくる4袋目、5袋目も長野県のメーカーのものだった)


3袋目「味選菓」


ゼリー失速、しかし最中にぎゅうひが

ここへきてゼリーが失速。しかし、最中にやたらと「餅」が入っている。ぎゅうひだ。やはりもちもちしたものは外せないらしい。

そして、老練菓子界でもかなりの究極と私が目してやまない「落雁」が出てきた。しかもあんこが入っているやつだ。これは相当なプロユース菓子だぞ。

老練菓子アソートの手加減知らずをまた感じる。


これは甘いもの好きの自分でもちょっと買わないなと思っていたタイプのお菓子。すごいぞ老練アソート! 桃山が一気に盛り上げてきた。そして餅を入れずにはいられない最中たち

オアシスとも思える1袋、登場

正直、今回は甘いもの、特に和菓子が好きな私は笑いが止まらない企画だ! と考えていたのだが、まさに甘かった。

とにかく甘さに逃げ場がない。脳に砂糖が直撃する、アグレッシブな甘さのお菓子の連続なのだ。

ただ確かに、熱々の濃ーいお茶と一緒にひとつかふたつ食べるものだと思えばこれが正解肢なのだろうと思う。いちいち食べては「甘い!」「これも甘い!」と震撼する自分が情けない。自分はまだまだっす。

そこへ登場したのが、続いてのアソート。セブンアンドワイのプライベートブランド商品だ。


4袋目「小さな和菓子ミックス」


ぐっとソフトなセレクション

メインは最中だが、ミニどら焼きやまんじゅうといった、かなり初心者にもとっつきやすいハードルを下げた商品が詰まっている。おお、こんなのもあるんだあ、そうなんだあ、といきなりタメ口を利きたくなる商品だ。

これまでのがハードコア和菓子だとすると、こちらはだいぶソフト。チョコまんじゅうや焼き芋まんじゅうはこれまででは考えられなかった展開だ。だって、落雁が入ってたんだぞ、さっきまで。

和菓子の世界では宝のように扱われている「栗」もこちらは重点的に注入していて、人気を取りに出てるのがうかがえる。


しかしチョコまんじゅうの中身は白餡であった。ですよね こちらは焼き芋まんじゅう。芋あん、やはり甘いは甘い

ミニどら焼き。このかわいさも今までにはないもの

続いてもプライベートブランドから

もしかして、老練菓子アソートの入門編はプライベートブランドにあるのかしらと次に買ったのは東急ストアなどで扱っているバリュープラスの商品。


5袋目「和菓子茶房」


これぞというセレクション

5袋目にして、今回の総括のような内容かもしれない。さきほどのセブンアンドワイの商品ほどとっつきやすくはないものの、落雁ほど上級者仕様のものもなく、いかにもというものが詰まっていた。

意外に出ないなあと思っていた塩羊羹と六方焼きがここへきて登場し、ゼリーも健在だ。

いまさらですが、今回甘いものに興味のない方にはちょっと分からないであろう単語が続いていて恐縮です。


だんだん甘さに慣れてきて、栗饅頭はずいぶんするっと食べられた(でも甘いです) 六方焼きは、これ。ミニチュアの食パンのようにも見える。皮がそれほど甘くなくて食べやすかったが、これも慣れか

もち最中に書いてある「味」のなぞ

気になったのは、「もち最中」に押されていた“味”という一字。これ、確か前出の「小さな和菓子ミックス」にも全く同じものが入っていたぞ。

メーカーは長野県飯田市と下伊那郡にあって別の会社なはずだが、提携しているということだろうか。


メーカーをまたにかける「味」

気になって問い合わせてみると、小包装のお菓子は、自社で製造せずに近隣の和菓子業者から仕入れて詰め合わせていることもあるのだそうだ。

5袋も買ってああだこうだした今回、長野県のお菓子屋さんの手の上で踊っていたようなものだったのだろうか。


少し食べるよろこび

そもそも和菓子というのはたくさん食べるものじゃない。だからキュッと甘いんだろう。

私は10年くらい祖母と同居していたことがあったが、祖母の食べるものは甘いものじゃなくて、料理も全部味が濃かった。少ししか食べないので、多分凝縮されているのだ。

私は量を食べたかったので祖母とは別に味の薄いものを作ってたくさん食べていたのを、今回ふと思い出した。

老練菓子にはちょっとだけガツンと食べるよろこびがあるのかもしれない。老練菓子アソート、まだまだ私が上がっていい土俵ではなかった。いつかきっと!

甘いにおいに誘われて虫も来る! そして、うっかり空袋が入ってるかもしれないけどよろしくね、というナイスゆるさ(「味選菓」パッケージより)

 
 

 

 
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