270km走るマラソンはそれでも楽しい

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ひらめきの月曜日

動かなくなる

日が傾き始め、2度目の夜が近づいてくる頃。180km付近の白川郷を通過しています。

世界遺産をバックに空元気。

本当はこんな感じだったけど。白川郷入口付近。

この時点で違和感は痛みに変わり、かなり足の動きが悪くなっていました。ひとまず早歩きか、それより少し早く走ることはまだ出来たので、滑り込みぐらいにゴール可能。休憩時間を極力減らし、先を急ぎます。

岐阜から富山県に入る。石川県はまだ先。もうすぐ日没。急げ！急げ！

やがて日が沈み2日目の夜が来ました。気温が一気に下がり、ゆっくり走っている程度では寒くなる。そして、防寒具を着ようと立ち止まり、しゃがんで立ち上がって走り出した時。右足がほとんど曲がらなくなったのです。

色が変わって1.5倍ぐらいに腫れていた。こりゃまずい！

どうやら脹脛の部分の筋を痛めたようで、どうにも曲がらない。スタートから37時間半ぐらい。200km地点にもう少しのところでした。この時点で時間内ゴールは断念。無念です。

それでも、金沢へ向かう公共交通機関が無い場所。有ってももう走っていない時間なので先へ進まなくてはいけません。時間外でもいいからゴールまで行くことを決意し足を引きずりながら暗闇を進んでいきました。

あっさり心が折れる

暖かいって素晴らしい！欲望に正直になってしまいました。

いや、時間外でもいいからゴールまで行く事を決意したのです。這ってでも行く気持ちでした。そんな決意をしたのですが、ヨタヨタと歩いている私の横に一台の車が止まりました。

「大丈夫ですか？乗っていきますか？」

「はい！ありがとうございます！」

即答でした。

車に乗せてくれた方は更に先で私設エイドをやっていた方々。まだこの後に走っているランナーがどのぐらいいるか見回っていた最中だったようです。こういう状況の時の心は、ひと夏放置された素麺以上に細く簡単に折れる。

深夜、続々とゴールする人を見守る。今回時間内ゴール出来た率は47%ぐらい。雨でかなり下がったそうです。

そして、最終的にゴール地点の温泉施設まで送ってもらえました。あのまま歩き続けた事を考えると助けてもらえて感謝です。次は私もあのテープを切りたいぞ！

それでも楽しいのがウルトラマラソンなのです

天候に振り回されたり、装備の不備があったり。毎回このクラスの長いマラソンに出ると何か起こります。大体が厳しい状況に追い込まれる出来事なのですが、あとから考えるとその一つ一つが全て楽しく感じられる。それがウルトラマラソンの世界。「112kmのマラソンはとても楽しい」の記事でも書いた通り、理解されることはほとんどないですが、それぐらい楽しいのです。

足の爪が剥がれて、幻覚が見えて、膝が壊れる。サプリメント飲みまくって、オニギリとか同じような物食べ続けて、寝不足になって不健康極まりない。参加選手に医者もいるのですが、「普段は健康に悪い事はするなと患者に言っているが、これほど健康に悪い事は無い」なんて冗談で言っていたりもします。けど、走り終わると楽しいのです。だから何度でも参加したくなる。さて、次はどの大会に出よう。

そして、最後に。エイドを出してくれた方々。全ては撮りきれなかったけれども、全ての方に感謝します。ありがとうございました。走る力になりました。