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フェティッシュの火曜日
 
ベッタベタ!これがかっこいいシールの貼り方だ


シールでベタベタなのって、おしゃれだと思うんだ

シールでベタベタになっている物ってかっこよくないか。
画一的な工業製品も、シールを貼れば世界で唯一のアートになってしまうのだ。

そんなアートをふとした瞬間に見かけると、なんだかムズムズしてくる。僕もシールを貼りたい。本能のままにベッタベタにしてやりたい。

斎藤 充博



「シールでベタベタにする」を禁じられた幼年時代

なぜここまでシールでベタベタにすることにこだわるのか? いぶかしむ読者の方もいるかもしれない。
話は僕の幼年期にさかのぼる。子どもが誰でもそうであるように、僕もシールが大好きで、冷蔵庫にシールを貼りたくて仕方がなかった。あのつるんとした広い面にそそられたのだ。きっと君にもそんな過去があるだろう(あるという前提にしてこの記事は進みます)。


在りし日の僕

しかし、斎藤家においては、子どもがシールを冷蔵庫に貼ることは固く禁じられていたのである。

理由は簡単で「冷蔵庫が汚くなるから」だ。そんなつれない話があるか、シールくらい貼らしてあげなよ、今になって思う。


かくして、幼少期の欲求不満は、僕の青年時代(今のことです)に暗い影を落とすことになる。「シールでベタベタ」になっている物をみると、非常にうらやましく、かつコンプレックスを感じてしまうのだ。


親戚の子ども(小学六年生)の愛用しているDS。かっこいい。だけどルサンチマン。

「そんなにシールがうらやましいのなら自分で勝手に貼れば良いじゃないか」そういう意見は正しい。しかし、みんなが幼少期からやっている物を、今更にしてやるなんて相当のビハインドがあるのではないか…そこに躊躇がある。

…いや、しかし始めるのに遅いことなんてない!と思いたい。もうこんなモヤモヤしたつまらない夜とはもうオサラバだ。おれはシールを貼る!標的は勿論、冷蔵庫だ!

 

大坪さんの手帳はシールでベタベタ

と、そんな決意を固めたタイミングで格好の師があらわれた。なんかもう運命を感じざるを得ない。運命というのは「おれはシールを貼る」という運命だ。なんかペラッペラな運命だが、どうか笑わないで欲しい。

そして師とは、当サイトライターの大坪さんである。大坪さんの手帳はシールでベタベタだったのだ。


ちょうど、当サイト編集会議の時に出していた手帳が
(写真は「手に「て」って書いてあるグランプリ」より)


すごくかっこよかったのだ!これだよ、これ

DSも!

編集会議の帰り、京浜東北線の車内で、シール貼りに関してかなり詳しい話が聞けた。なにしろ僕と大坪さんは帰る方向が一緒なのだ。1時間あまりのロングインタビューも逃さずに遂行できた。これもまた運命か。すごく嬉しい。大坪さんによると、シール貼りのコツはこんなところにあるらしい。


−大坪さんの教え−

  1. 大きいシールを貼って、小さいシールを間に貼るとメリハリがつく
  2. 単に平面的に貼るのではなく、重ねるのがかっこいい
  3. 絵だけではなく、ロゴっぽいのがあると締まる
  4. 斎藤君のイラストをシールにしちゃえば良いんじゃないの

なるほど、そんな難しくなさそうだ。それでは、家に帰ってやってみます!

 

 

実際やってみた

それでは、大坪さんの教え「4.斎藤君のイラストをシールにしちゃえば良いんじゃないの」に従って、シールを作る所から始めてゆきたい。シールの台紙はお店に行ったらいろんな種類の物が売っていた。

なんだ、こういうことをやりたい人がいっぱいいるのか。みんな人に隠れてこっそりとシール貼りの練習をしているんだろうな。そうに決まっている。今度mixiにコミュでも立ててみようか。


これに直接絵を描いて切り取る。スタイリッシュになると良いな

在りし日の冷蔵庫にシールを貼れなかった僕が、僕の中で騒ぎはじめた

興奮の、初シール貼り

教え(1)「大きいシールを貼って、小さいシールを間に貼る」より、大きな山のシールを貼った。冷蔵庫のイメージに合わせて氷山だ


教え(2)「重ねるのがかっこい」に従い、氷山を重ねて貼る。アルプス山脈が出来上がった


そこになんの躊躇もなく、自画像を重ねる。更に教え(3)「ロゴがあると締まる」に従ってロゴも貼る

おお!なんか楽しげじゃないか。なんの変哲もない冷蔵庫が自分だけの物になった様な気がしてきた。クールだ。クールって書いてあるし。冷蔵庫だし。気分が盛り上がってくる。もっともっと貼ってゆこう。

…思えば、この時が冷蔵庫におけるシール貼りのピークだったのかもしれない。まだこの段階ではまとまりがあった。この後、僕は後戻りの出来ないシール貼りの、果てのない深みに飲み込まれてゆくのだった。

 

だんだんゴミっぽくなってくる

ここからじわじわと、シールを貼ったら、貼った分だけ汚くなって行く。しかし、この時の僕はそのことにまだ気づいていない。


近づき過ぎて、全体感が見えていない。ひたすらシール貼りに熱中している

教え(1)「大きいシールを貼って、小さいシールを間に貼るとメリハリがつく」に従って、小人と小魚。あとイクラ(ほら、なんかおかしくなってる)

熱中したまま、作業は進む。シールを貼ることには中毒性があるのだ。これが小さい頃からシールを色々なところに貼ってきて大人になった人だったら、抜ける術を知っているのかもしれない。

しかし、僕は冒頭にも書いた通り、これまでシール貼りの悦楽を知らなかった。文明開化で牛肉の味を覚えた明治人のごとく、新しい快楽に僕はハマってゆく。みんなも肉は好きでしょう?そういうハマり方だったのだ。


はっ…なにこれ?!

僕の中の、大人と子どもの両方が違和感を感じた

ずっと室内の写真が続いているので、見晴らしのいい景色をどうぞ

そう、用意したシールをあらかた貼り終わった後で気づいた。貼るのは楽しかったのだが、この冷蔵庫、全然かっこよくない。大坪さんの教えには割と忠実に従ったのになぜ?!と思う。

「間違った所からやり直したい」と、クラスの中で仲良しグループに入れなかった学生のようなことを考えたが、シールにやり直しはきかないことに気づいた(そういえば、学生生活にやり直しはきかない)。

じゃあ、どうするんだ。これはこのままなのか。こんな冷蔵庫に入れていたら、食材が腐ってしまうんじゃないのか(友達のいない学生だって腐りたくなるだろう)。

いや、別に性能には関係がないが、毎日見る冷蔵庫がこれでは辛い。数日間、自炊をする気が失せた。


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