Fは元気元気で、牛皿の付いた、1000キロカロリーくらいのセットを食べていた。
「ここから、酒まつりの会場、西条まで、電車で40分くらいか」
「ちょうど、祭り開始の10時前には着くかな」
「全然、混み具合とかわかんないね」
「さっき、駅員さんに『酒まつり行きたいんですけど、この電車でいいスか?』って訊いたら、『酒まつり』自体を知らなかったもんね」
「有名じゃないのかなあ。一体、どんな祭りなんだろ…」
「とりあえず現地行くしかないねえ」
「まずはザラッと会場の様子をみて、決めよう」
検索エンジンで、「酒まつり」と検索すると、
トップに上がってくるのが、この東広島・西条のイベントだ。
酒! まつり!
なんという、シンプルで力強いネーミング。
今年で第20回目。80年代から始まった、意外に若い祭りだ。
西条は、この春、広島に旅行した際に、寄ってみた町だった。
ここは酒蔵だらけ。お祭り以外の時期でも、試飲をやっている。そして酒蔵ごとにTシャツが売っている。しかも価格帯低め(1枚1500円)。
少し不思議だったので、店番をしていたおかみさんに、「ここのへんの酒蔵は、どこでもTシャツ売ってますね、変わってますよね?」と訊いたらば、
「ああこれは、フェスTシャツなんです」
と答えたのだ。
フェスT!?
「年に1回のお祭りの時に、作って売るんです。街中、お酒だらけになるんですよ。外国人観光客の方も多いから、日本語の書いてあるTシャツって売れるんですよー」
え、町じゅう? 外国人? 売れる?
ていうか、国内でそんな有名じゃない祭りなのに? 外人? 来るの?
「去年、ウチ、緑色のTシャツ作っちゃったら、あんまり売れなかったんですよー。外国人には、紺とか黒とか、渋い日本っぽい色がウケるみたいで」
そ、そういうもんなんですか?
「お祭りの時はねえ、日本酒は飲み口がいいし、おちょこで少しづつ試飲出来るので、自分の限界が分からなくなっちゃう人が多いみたいで、グデングデンになる方も多いんですよ、うふふふ」
うふふふ…、って、そんな祭りが!?
と、いろいろひっかかる情報を聞いていたので、今年の夏休みはどこにも行かずお金をキープ、酒まつりだけは行くことに決めていたのだ。
広島から、わりと混んだ電車に乗って、山の中を走り抜け、現地に到着。
駅構内では「混んでいるのでお気をつけくださーい!」と駅員さんが叫ぶ。でも首都圏のクレイジーな混み方と比べると緩やかだ。 |