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土曜ワイド工場
 
すごすぎる日本酒フェス@広島(前編)

会場に入る際、おちょこと、黄色い冊子が渡された。
「冊子ぶあついな、何、コレ?」と見たら…。
その時、情報不足だった私たちは、初めて知ったのだ。
そこの会場が、広島&近県のお酒を集めた試飲会、とかじゃなくて、
日本全国の酒900種類を飲み放題、という、とてつもないイベントだ、ということが。
900種類!?
っていうか900種類!?


そんな、おちょこと、こんなすごいリスト渡されても。日本酒初心者としては、どうにもこうにも…。

会場は公園なのだが、慣れている人たちは、レジャーシートを持って来ていて、そこらじゅうに敷いて円座になっていた。


おつまみを持ちこんでいる人も多数(フードコーナーもあるのだが)。あと、おぼんを持ち込んでいる人も多かった。誰か1人が取りに行って、座って飲むわけだ。

あぜんとする私に、Fは
「とりあえず、並んでない所の酒、飲んじゃえばいいじゃん!」
と、飲みはじめた。
飲むかー!

しかし。正直に言おう。
私は日本酒の味のことは、「水みたいに飲みやすい/ムッとして飲みにくい」「香りがいい/香りが好みじゃない」「すっきりしている/もったりしている」、その程度の判断でしか分からない。
だから900種なんて…、パニックになった。
とりあえず飲もう、そして飲んだ酒のチェックだけはしようと、パンフとペンを持って、必死でメモした。
でも、「沖縄って日本酒あったんだ! 飲みた―い!」とか、「変な名前のお酒だから飲みたーい!」とか、適当なセレクト。
でも、マニアっぽく、がっつり採点しながら難しい顔をして飲んでいる人なんて、いなかった。いや、いたのかもしれないが、たぶん笑顔であった。
ほとんどの人は、私同様、「新潟は米が美味いから、やっぱり酒も美味いねー!」とか、「酒類総合研究所の出してる非売品の酒は、今年も30分でなくなっちゃったらしいねー!」とか、かなりラフな姿勢でのぞんでいた。


みんな、冊子を確認しながら試飲する。銘柄でなく、番号で言わないと、ついでもらえないのだ。

結局、私が飲んだのはこんな感じ。


特別純米オバステ正宗(長野/特純)
女城主(岐阜/特本)
開運純米ひやおろし(静岡/純吟)
尊王(愛知/本醸)
おかげさま(三重/その他)
瀧自慢(三重/本醸)
ちょびっと(兵庫県/純米)
純米吟醸おめでとう(和歌山/純吟)
死神(島根県/その他)
極聖(岡山/純吟)
武蔵の里山廃†仕込純米酒(岡山/特純)
神招(広島/純吟)
神雷上撰純米酒(広島/特純)
美の鶴純米酒(広島/純米)
辛口純米大吟醸(広島/純大)
寿齢(広島/本醸)
八重の露吟醸純米(広島/純吟)
御幸(広島/本醸)
吟醸辛口(広島/吟醸)
吟醸ゴールド西條鶴(広島/吟醸)
吟醸将進(広島/吟醸)
賀茂輝吟醸酒(広島/吟醸)
日本酒白牡丹千本錦吟醸酒(広島/吟醸)
桜吹雪辛口純米酒(広島/純米)
菱正宗秘造り吟醸ひろしまの酒(広島/吟醸)
華鳩「ハナ、ハト、コメ」(広島/純米)
島の香(広島/その他)
龍勢備前雄町(広島/純吟)
朱泉本仕込(広島/純吟)
大安吉日(山口/本醸)
雁木純米吟醸(山口/純吟)
海響(山口/吟醸)
阿波美人(徳島/純米)
山丹正宗ひやおろし(愛媛/純米)
奥伊予地酒相生(愛媛/本醸)
吟醸大番(愛媛/吟醸)
野武士(愛媛/本醸)
本醸造「黎明」(沖縄/本醸)


広島の酒を中心に、あとは「比較的空いてるブース」に並んで飲んだので、日本全国、まんべんなくは飲めなかった。
味についても、いちおうメモしていたのだが…、最初は「香りが花のよう」「カモミールのような風味」とか、頑張って書いていたのだが、後のほうになると、「飲みやすい」「飲みにくい」「水みたい」「これも水みたい」「ていうか水」等、雑にもほどがある表現っぷり。
フードライターには絶対になれないな、と思った。
ちなみに、上記の中で、「あ、これ苦手」と思ったのは1銘柄しか無く、他はみなそれぞれ美味しかった、と思う。

天気は晴れ。日光を浴びて、昼酒がまわる、まわる。


ものすごく、晴れていた。

飲み過ぎちゃった人には、すぐにスタッフ(おそらく地元消防員の方)が対応していた。毎年のことだからか、とても慣れてる感じだった。

くたびれて、ちょっと体育座りをしていたら、見知らぬ女性が、トコトコと寄って来た。
「おねーさん、メモとかとってて、熱心ですねえ」
彼女も酔っぱらっている。
「ひょっとして、関東から来ました?」
何で分かるのかな、と思いながら、ハイ東京です、とこたえる。
「わー、私も東京に長く住んでたんですー。うふふ。すいません、私、酔っぱらっちゃってて。私、酔ってると知らない人に話しかけてしまうんです、うふふ。お酒、詳しいんですか?」
好きなんですけど、あんまり詳しくなくて、と返す。
おすすめのお酒ありますか? と訊いてみる。
「****、ウマイですね、今日はないけど。****は、コンスタントにいいお酒出すけど、ホームランはない酒蔵って感じですね。あと****は、要チェックです」
幾つか教えてくれた。ふむふむ、とメモする。
お詳しいですね、と言うと、
「ええ、お酒好きなんで。でも事情があって、10年くらい、飲んじゃ駄目だった時期があるんです。うふふ」と笑顔。
え、ええ?
「今日、広島に泊まるんですか?」
はい、と言うと、「広島市内の、安くて美味しいフグ屋さん」を教えてくれた。
フグは広島名産じゃないけど、美味しいのか…?、でも前回広島に来た時、観光居酒屋で大失敗したから、地元の人おすすめの店のほうがいいのかな?、ウーム、などと考えていたら、彼女の旦那さんらしき人がヌッと現れ、私の顔を見て、コメントもなく、彼女を連行して行った。
彼女は笑顔のまま、手を振っていた。

 

ポカーンとしていると、酔っぱらったFがやって来た。
「今まで純米酒がいちばん美味しいと思ってたけどさあ、大吟醸ってやっぱ飲みやすいわー! なんかそういうのが分かっただけでも収穫だー!」
と、嬉しそう。
「そういわれれば、そうかな」
私は、どれが美味しいとか…、全然把握出来なかった。100人集まる合コンで、誰ともちゃんと話せず、お気に入りを見つけられなかった、そんな感じ。ただ圧倒されっぱなし、浮かれっぱなし。合コン行ったことないけど。
「ところでさあF、今夜、広島に戻ったら、フグとか食べない? 安くて美味しい店があるらしいんだけど」
「ハア?」

この時、私の胃は、まだ痛くなかった。痛くなかったというか、身体の異変に、脳が気が付いてなかったというか。

とりあえず「酒ひろば」を出ることにした。さあ、次は酒蔵めぐりに出発だ!(つづく)


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