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フェティッシュの火曜日
 
「普段づかいの古文書」づくり


古文書の使いごこちインタビュー

一週間待つあいだに、古文書インタビューでお楽しみください。僕が最初に打ち合わせで見て「古文書だ!」と思ったノート、その持ち主に、話を聴くことができた。


この方が持ち主。中山さんです
そしてこれが例のノート

古文書ノートの持ち主は、中山さんという女性。といっても、別に中山さんは古文書マニアとか、古文書づくりの専門家とかではない。料理関係のお仕事をされている。僕がたまたま中山さんのノートを見て、「古文書だ!」と思っただけで、別に本人もそんな風に思ったことはなかったという。そんな身に覚えのないインタビュー依頼に、半分とまどい気味で応じてくれた。


このビンがこうやって倒れて、ノートが浸ることに

この面のくすみ具合が、それっぽいではないか

水を落としてみたところ。Lの文字の横、しっかり染みてます

油の効果か、ペンの色がすっかりあせている

前ページで紅茶やコーヒーを見た今、見劣りする感は否めないが、初見では僕はこのノートにすっかり驚かされた

石川:このノートを一目見たときに、僕は「古文書だ!」って思ったんです。やっぱり愛着とかありますか?

中山:別にないです。むしろ憎んでました。見る度に「コノヤロウ」って思ってた。

石川:ノートがそんなことになった経緯を教えてください。

中山:去年の12月3日のことですね。ここに日付が書いてあるからわかるんです。当時はこのノートもおろしたてでした。

その日は料理の写真撮影の仕事をしていました。時間もなかったので、作りながらどんどん撮っていくような現場で。狭い場所でバタバタとやっているうちに誰かがオリーブオイルを倒して、そこにちょうどまだ真新しかったこのノートが…。

石川:その時どうしたんですか?

中山:「あっ!」と思ってまずはオイルを振り切って、ペーパータオルで拭きましたね。応急処置はそのくらいで、それからは普通に使ってました。最初の1週間くらいは、カバンの中でいろいろなものに染みてました。仕事の書類とか、マンガとか。だいたい1週間たったらそういうのもなくなって、ぜんぶ染み込みきったかなと。

石川:その後、憎しみは和らいできました?

中山:今は特にどうも思わないですね。(少し考えて)…いや、若干の憎しみがまだあります。

石川:最初の憎しみを100とすると?

中山:16くらい…。うーん、26くらいかな。

石川:いいペースですね。ちょうどぜんぶ使い終わったときに0になりそうです。
憎しみを抱えてまで使い続けているのには理由があるんですか?

中山:私はいちど使ったノートって、古いのも捨てずに取っておくんですよ。だから、どちらにしろ取っておくのなら、せっかくなら使おうと。それに、油紙ってあるじゃないですか。あんな感じで紙が強くなったかも、と思って。水とか、雨とかに。

石川:実際のところ、強くなってますか?

中山:ちょっと濡らしてみますね…(ストローで飲み物を1滴たらす)…染みますね。

石川:強くなってないですね…。

中山:でも、こぼしたのが油でよかったです。水みたいに紙がビロビロにならないし。

石川:周りの人に「古文書っぽい」って言われます?

中山:いいえ。

石川:評判はどうですか?

中山:「染みてるね」、とか。匂いを嗅がせてあげたりもするんですが、たいてい嫌な顔されますね。

石川:料理って火を扱う仕事ですし、油だから燃えやすかったりとかしませんか?

中山:あまり意識したことはないですね。普通に扱ってます。

石川:いま古文書っぽいノートを作っているんですが、何かアドバイスとかありますか?

中山:特にないです。

石川:どうもありがとうございました。


当初は「普段づかいの古文書」についてその魅力を語ってもらうつもりだったのだが、いざきいてみると、ノートに対する中山さんの愛憎入り交じる複雑な感情を浮き彫りにするインタビューとなってしまった。(あと、古文書だと思ったのは僕だけだ、ということも浮き彫りになった。)

ノートははかなり分厚いものだったが、いまでは5分の3くらいまで使われている。いろんな気持ちを抱えつつも、それなりに愛用されているのだ。そして「水に強いかも」なんて、ちょっと頼りにしている部分もある。

…無理やり前向きな部分だけを抜き出してみた。そんな僕の気持ちを汲んで、どうか古文書に対するテンションをあげて次ページに進んでほしい。

さあ、次ページは、いよいよ待望の実験結果だぞ!

 

 

 
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