石川:このノートを一目見たときに、僕は「古文書だ!」って思ったんです。やっぱり愛着とかありますか?
中山:別にないです。むしろ憎んでました。見る度に「コノヤロウ」って思ってた。
石川:ノートがそんなことになった経緯を教えてください。
中山:去年の12月3日のことですね。ここに日付が書いてあるからわかるんです。当時はこのノートもおろしたてでした。
その日は料理の写真撮影の仕事をしていました。時間もなかったので、作りながらどんどん撮っていくような現場で。狭い場所でバタバタとやっているうちに誰かがオリーブオイルを倒して、そこにちょうどまだ真新しかったこのノートが…。
石川:その時どうしたんですか?
中山:「あっ!」と思ってまずはオイルを振り切って、ペーパータオルで拭きましたね。応急処置はそのくらいで、それからは普通に使ってました。最初の1週間くらいは、カバンの中でいろいろなものに染みてました。仕事の書類とか、マンガとか。だいたい1週間たったらそういうのもなくなって、ぜんぶ染み込みきったかなと。
石川:その後、憎しみは和らいできました?
中山:今は特にどうも思わないですね。(少し考えて)…いや、若干の憎しみがまだあります。
石川:最初の憎しみを100とすると?
中山:16くらい…。うーん、26くらいかな。
石川:いいペースですね。ちょうどぜんぶ使い終わったときに0になりそうです。
憎しみを抱えてまで使い続けているのには理由があるんですか?
中山:私はいちど使ったノートって、古いのも捨てずに取っておくんですよ。だから、どちらにしろ取っておくのなら、せっかくなら使おうと。それに、油紙ってあるじゃないですか。あんな感じで紙が強くなったかも、と思って。水とか、雨とかに。
石川:実際のところ、強くなってますか?
中山:ちょっと濡らしてみますね…(ストローで飲み物を1滴たらす)…染みますね。
石川:強くなってないですね…。
中山:でも、こぼしたのが油でよかったです。水みたいに紙がビロビロにならないし。
石川:周りの人に「古文書っぽい」って言われます?
中山:いいえ。
石川:評判はどうですか?
中山:「染みてるね」、とか。匂いを嗅がせてあげたりもするんですが、たいてい嫌な顔されますね。
石川:料理って火を扱う仕事ですし、油だから燃えやすかったりとかしませんか?
中山:あまり意識したことはないですね。普通に扱ってます。
石川:いま古文書っぽいノートを作っているんですが、何かアドバイスとかありますか?
中山:特にないです。
石川:どうもありがとうございました。 |