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ひらめきの月曜日
 
ご飯を干したら旅に出よう!
これが糒。弁当というより、走る際の補給食として持って行きます。


「糒(ほしいい)」という食べものがあります。一度炊いた米を水で洗い、それを天日に干して作ります。

古くは日本書紀にも記述される糒は、炊きすぎた米の保存用、携帯食として作られたもので、弁当の最も古い形と考えられています。

今回は古代の弁当を持って旅に出ます。目的地は江ノ島。もちろん古代の弁当なので、旅も乗り物なんて使いません。自分の足で江ノ島まで走ります。その距離約70km。

吉成



まずは糒を準備

糒は「干し飯」とも書きます。または「乾飯(かれいい)」とも呼ばれます。稲の栽培が始まった弥生時代には保存食として存在し、戦国時代になると兵糧として武士が携帯していました。よく似たものに災害用非常食などで見るアルファ化米があります。

糒の作り方はとても簡単。米を炊いて水で洗い、それを広げて天日に干します。もち米ならば炊くのではなく蒸したものを使います。また、水洗いが無くても構いません。まあ、要するに炊いて乾かした米ですね。


米を洗って天日干し。ライター必携の品「干し網」。我が家には3つ有ります。

以前、デイリーのメルマガ「うっかりニフティ」でウエブマスターの林さんが「修行中のお坊さんは炊いた御飯を井戸に沈めて保存食にするという話を聞いたことがあります。」と書いていました。恐らくこの糒を作る準備段階だったのでしょう。洗っただけの米はたぶん美味しくない。


完成した糒。2.5合分の米を乾燥させています。

炊いて洗った米を干すこと約4日。ザルに入れて干していたので一日ごとに混ぜて中心部もよく乾かす。乾かした米はパラパラで手に取ってもくっつくことはありません。携帯性は十分。


糒は手にはつきません。お口で溶けて手で溶けないのはM&M’s。

 とりあえず少し食べてみました。炊飯器の隅で固まったような米と同じ見た目ではあるものの、一度洗ったためか変な臭みは無い。食べても特に問題はありません。

しかし、何も味付けされてない煎餅とでもいいましょうか。硬くて乾燥しているので、よく噛んでいないとハッキリとした味がしてきません。食べられるけど、このままではそれほど美味しいものではない。

まあ、作っている時点で味の予想は大体ついていました。その特性を克服して美味しく食べる対策も考えてあります。とにかくこの古代の弁当を持って旅に出ましょう。糒の携帯性の良さ、エネルギー補給の有用性について身をもって体験したいと思います。

 

ご飯を干したら旅にでます

そんな訳で出来上がった糒と、着替え、カメラや三脚などの撮影装備、水、糒を食べる為のグッズ等をザックに入れて朝6時過ぎに家を出発。旅の出発地点に設定した都立城北中央公園にやってきました。


まだ桜がわずかに残る4月中旬の朝の公園。晴天。

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練馬区と板橋区の境界あたり。東京23区北部。


 旅の目的地は江ノ島に設定しました。江戸時代には気軽に行ける観光地としてにぎわっていたのだとか。私もそれにならい弁当を持って江ノ島詣でをしたいと思います。古代の弁当を持って行くので、通常は車で行くような距離をあえて自分の足で移動します。糒を食べながらのランニング旅。

走行ルートは、都立城北中央公園から環状七号線に出て南下。国道246号線を西へ。大和市付近で境川にぶつかったら川沿いのサイクリングロードを南下。藤沢市まで出たら更に南下して江ノ島を目指します。およそ70km。地図上での計測では65kmぐらいですが、アップダウンやカーブのロスを考えるとその程度でしょう。

ちなみに、こういう旅のような長いランニングを、ランニング好きの間ではマラソンとピクニックを合わせた造語でマラニックと呼ぶことがあります。前回紹介したウルトラマラソンの一種。やはり理解されづらい世界だけれども、やってみると楽しい世界なのです。そこについてはまたいずれ。では出発。


まずは環七まで走る。

より大きな地図で 環七 を表示
この辺り。まだ1.2kmぐらい。

環七まで来たら南下します。この日は4月中旬の割にはかなり気温が高く、既に汗かいています。昔の人の旅は大変だ。


旅なのでコネタを探したり色々見たりしながら走りましょう。

「B’z」とは全く関係ない。だろう。
夢と書いて「ムー」。そういえば、「ムー」っていうオカルト雑誌があったな。読んだことはない。

途中の公園にあった伝言板。杉並区付近。
貼るのも剥がすのも自分で。自由だ。

鋭角な飲み屋。その名も「かどっこ」。ツタが絡まる階段は2階の居住スペースに上がる為のものか?
「かどっこ」では納豆風味のオクラオムレツが一押し!

八重桜かな。満開です。風流だねえ〜
出入り口マットで寝る犬発見。撫でたいけど撫でられない。その肉球に触れたいけど触れられない。

店の看板や掲示板に目をやり、花や犬に見とれながら走り続けてそろそろ2時間。国道246号線にぶつかります。


上馬交差点。三軒茶屋とかが割りと近いです。

より大きな地図で 246 を表示
このあたり。まだ15kmぐらい。

ここからは246号線に入って西を目指します。しばらくして多摩川を渡ると神奈川県に入ります。


交差点には他の旅人も。いや、普通にジョギングしている人ですね。
途中ぶつかる緑道には桜並木。なぜか吠える犬の像。

やがて多摩川を通過。

より大きな地図で 多摩川 を表示

この辺りまで来ました。およそ20km。まだ旅は前半。


ここらで出発地点からおよそ20km。走り始めて2時間半を過ぎた頃です。そろそろ長めの休憩をとって糒を食べてみます。河川敷はバーベキューの準備を始める人や野球少年でなかなかの賑い。


袋から糒を取り出す。サイクリングをしている人に変な目で見られた。

取り出した糒は袋に入れてザックに詰めたときと変わらずパラパラの乾いた米粒のまま。何の変化もありません。携帯性に問題無し。


ガバッと口に放り込んで噛む。土手に刺さっていたコンクリートの柱にカメラを置いて自分撮り。柱が見切れた。

まあ、不味いとは言いませんが、乾いていて良く噛まないと食べづらい・・・


 喉が渇いた状態で食べた為でしょうか。家で食べたときより乾いた硬さが際立つ。かなり噛んでないと柔らかくならず、なかなか飲み込めません。味は問題なし。米の味がします。変な臭みも無い。

携帯性、エネルギーの補給という点では十分でしょう。しかし、食べづらいのは否めない。朝しっかり食べてから出発していて空腹感はないので、とりあえず時々少し食べながら進むことにします。

残すところあと50kmほど。日が傾く頃には到着するはず。頭の中には既にビール欲が出始めた多摩川河川敷での休憩でした。
さあ、先に進もう!


 そろそろ美味しく食べる方法を探りつつ江ノ島を目指します。 >
 

 
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