大阪市西成区天下茶屋。てんがちゃやと読むこの町に住み始めた友人が「犬のふんばかりですわ」と言う。
自分の住む街を紹介するときにまず第一に犬のふんを持ち出すことなんてあるだろうか。ああ、パリに行った人の話はそうだ。
じゃあパリか。パリなのか。天下茶屋は日本のパリである。この仮説が本当かどうか確かめることにした。
(このあとふんが登場することはないのだが、お食事中の方は念のため先に進むのをお考えいただきたい)
(大北 栄人)
憧れの花の都パリへ新幹線で
新幹線に乗って犬のあれ(=パリ)を見に天下茶屋へ行く。こういう記事を書いていると、いい大人が何をしているのだ、と振り返る瞬間がある。
しかし友人のあの一言が気になったのは自分なのだ。行くと決めたのだ。今回に限っては、振り返るとひどい自己嫌悪に陥りそうだったので、車内ではモチベーションの向上に努めた。
見たい。パリを見たい。今日はもしかしたら最後にパリを見て犬と横たわりながら天国に行くかもしれない。
とくにおかしなところも見受けられず
大阪で生まれて育ったが、こちらの界隈に来る用事はなかったので初めて降りた駅だった。駅前はなかなかきれいで、よくある腰の入った大阪市内の街、といった印象だった。
町名でいうところの天下茶屋の町は簡単に書いたものが上の地図だ。とりあえずは赤い矢印のように線路沿いを歩くことにした。
さあ、パリか?パリなのか?
パリ1ヶ
植え込みを注意してみてみるとパリがあった。ああ花の都、巴里…ではなく「パリ1ヶ」というドライな感覚(このパリもドライだった)だったが、遠い記憶を呼び覚ますような懐かしい思いもした。あとハエもいた。
パリ2ヶ
植え込みに注意して歩いていると数メートルと離れていないところにまたあった。パリだ。今度は今朝のパリだと思われる。
順調であるが
この後また10mくらい進んだところで発見。どれも植え込みの中にパリがあった。計3ヶ。順調にパリだ。
しかしどれも植え込みの中から発見したものである。もしかしたら犬猫トイレOKが暗黙のルールとなった特殊な植え込みであるかもしれないし、よく植え込んだトイレだったのかもしれない。
他の通りはどうか
天下茶屋の端に来たので大通りを左に折れる。車屋、ファミレス、など国道沿いの風景だった。これがパリか?果たしてここもパリなのだろうか?
大通り、なし
シャンゼリゼ通りかと目論んでいた松虫通りにパリはなかった。大きい道がパリっぽい、というわけでもないようだ。
どこだ、道を変えた途端にパタリとなくなったパリ。先ほど続けて3ヶ見たせいか、もしかしたらこの後もずっと見つからないのではないかと不安になる。
そしてその不安は的中する。
大通りから町の中に入っていった。道も少し難しくなってきたのでとにかく徹底的にぐるぐる歩くことにした。