「いぶし銀」への道 その3 [硫黄ガスによるいぶし]
硫黄泉自体が少ない箱根界隈だが、芦の湯の近くに溢れんばかりの硫黄ガス(硫化水素)が噴き出しているスポットがある。大涌谷だ。箱根火山の爆発によってできた爆裂火口の跡地で、岩肌からは硫化水素が激しく噴出しているという。
お湯とガスでは色のつき方に違いはあるのだろうか。最後の1本は、ここ大涌谷でいぶしてみることにする。
噴出する硫黄を間近で見学できる自然探勝路を歩き、硫化水素が立ち昇る火口跡付近へやってきた。ここも激烈なアンモニア臭を発している。くさい、くさいぞー。いい感じだ。
硫化水素が充満しているポイント(つまりはよりくさい場所)を探し、そこにスプーンを置く。ひときわ凶悪な匂いを放っているその場所にはあまり人が近寄ってこないので、腰を据えて色の変化を見守ることができる。
誰もこんなところでスプーンをいぶしているやつがいるとは思わないだろう。「ガチな匂いフェチがいるな」とか思うかもしれんが。
芦の湯温泉から大涌谷へと足を延ばす
開始後20分、斑点のような黒いぶつぶつが浮きはじめ、徐々にそれが全体に広がりを見せる。展開が早いぞ。
この探勝路は17:00で閉鎖されてしまう。いま16:00なのであと1時間が勝負。意を決して、噴煙が流れてくる風下へと移動した。ここがおそらく大涌谷の中でも一番くさい場所だ。
違う。これは1個食べれば寿命が7年延びるといわれる黒玉子でした。本当の結果はこちら。
ちょっと分かりにくいかもしれないので、元々のスプーンの色をご覧いただこう。こちらと比べると、ほどよいアンティーク感が出たのではないかと思う。
大涌谷がベスト
調査の結果、箱根で銀をいぶすなら大涌谷がベストだ。ムラなく全体的にアンティークな風合いが出せると思う。
仮に色味が気に食わなくても、銀の硫化現象は錆びとは違って、研磨剤などで磨けばぴかぴかの銀色に戻るらしい。みんなも温泉地で銀、いぶそうぜ!