ハンドルネーム:匿名さんの損した話
19歳の時、裏ビデオサギに引っかかりました。もう15年以上前の話です。
一人暮らしをしてるとどっからともなく、そういう「ご禁制のビデオ通販しまっせ!」みたいなチラシやらがポストに投げ込まれていたんですよね。そういう「有名人の○○ビデオ!」みたいなのが、これ以上ないほどにうさんくさいモノということは、よく分かっていました。当時もアイドルの丸見えビデオがあるとかないとか言われていて、じゃあ誰か見たのかと聞けば「先輩の友達の友達の兄ちゃんがヤクザの事務所で見たらしい」とか…。なんというか、都市伝説みたいになってましたし。
怪しいとは分かっていたんです、分かっていたんですけど、ある日、投げ込まれていたチラシは今までにものとは違いました。当時、僕が好きだった某アイドルの画像が載っていたんです。それもどっかのグラビアを複写したものではなく、もう何か真っ最中って感じの表情を浮かべて、いわゆるバック方面からイタサレている画面写真がサンプルとして。
もうその時点で理性やらなんやらは吹っ飛びました。「これ本物やん!だってこんな写真撮れるわけないし!」と。そうなると、そのチラシに書いてある、いかにもな能書き(なんでこのビデオが撮られて、流出したか…みたいな)ものも、にわかに真実味を帯びてきます。1本5万円というあり得ない価格も、僕にとってはその裏ビデオの信憑性を高めるものでしかなかったのです。
「見たい!絶対見たい!コレは買うしかない!!」貧乏だった僕は、共同購入者を募りました。自分が2万払うから、1万で乗っかれと、いぶかしがる友達に、いかにこの裏ビデオチラシの信憑性が高いのか、どこが他の裏ビデオチラシとは違うのかと、熱のこもったプレゼンを繰り広げたのです。
ほどなく3名の出資者を集め、業者に5万を振り込みました。2週間ほど気を持たせて、届いたのは案の定、なんかよく分からないアダルトビデオをダビングしたようなシロモノでした。届いた瞬間の高揚感から、「騙された!」と気付いたときの衝撃の落差といったら…。今になってもそれ以上のショックは経験したことがありません。
今考えると、あのチラシに載っていた画像はTVドラマからそれっぽい表情をキャプチャーして、他の裏ビデオの画像と合成した「アイコラ」でした。ビデオが届いた後の、恥ずかしいプレゼンを繰り広げてしまった面々(出資者は3名で、プレゼンそのものはけっこうみんなにやっていた)に対してのいたたまれなさといったら、今思い出しても頭をかきむしりながら、そこの窓からダイブしたくなるほどです。 |