●パンダこれでもかこれでもか
最後に紹介するのは、東京都杉並区・阿佐ヶ谷にある「パンダ珈琲店」。
おっと、うっかり「パンダ珈琲店」と書いてしまったが、よく見たら「ぱんだ珈琲店」だった。確かにパンダのふわふわした感じは、角張ったカタカナよりもひらがなの方がよく表せるかもしれない。
店構えからもういくつかパンダが見える。ずるい、と言いたくなるくらいのパンダぶりだ。
店内にもいろいろなパンダグッズが配されていて、どこを見てもパンダが目に入ってくる。見る度にいちいち「かわいいな」と思わされてしまい、パンダのかわいさ疲れすら感じるくらいだ。
テーブルに置いてあったメニューも当然パンダ柄。よく見ると、伝票立てにもパンダの顔が彫り込まれている。
むむ、隙がない。パンダラーメンとは異なり、具体的なパンダが目白押しなのだ。
人間とは勝手なものだ。可愛さ余って憎さ百倍ということなのか、ここまでぐいぐいやられた自分の心に湧いてきたのは、パンダに負けたくないという気持ちだった。
何を評価の軸にして負けたくないと思っているのかはわからない。ただ、パンダのかわいさに汲み取られてはならないんだという、謎の対抗心が燃えてきた。
オーダーしたものはまず「ぱんだセット」。もう「ぱんだセット」というセットがあるというだけで、恥ずかしながら声に出したくなってしまう。注文せずにはいられない響きのある言葉だ。
写真はそのうちのクッキーとアイス。アイスはともかく、クッキーがもろにパンダ。
その表情はただ単にかわいいというわけでなく、微妙な含みがある。パンダのかわいさにやられているこちらの気持ちを見透かされているようにも見える。クッキー相手にこんなことを考えて、いよいよおかしくなってきた。
こちらはセットのうち、「ぱんだオレ」と称されたカフェオレ。スチームミルクにココアでパンダ柄。ミルクの白さを生かした構成だと思う。
これは劣勢だ。パンダをかわいいと思う気持ちに流されてしまいそうな自分がいる。
つづいてやってきたオムライスも、パンダが描かれていてゴングが鳴り響く。カンカンカン…もう僕の負けだ。
葛藤していた気持ちの緊張感が一気に解け、もういいんだ、戦いは終わったんだと自分に言い聞かせてパンダのオムライスを食べる。パンダと一体化する自分がそこにいた。
やっぱりパンダはかわいい。パンダの中に身を投じて、改めてそう認識せざるを得ない戦いだった。
戦いと葛藤はもう終わった。パンダはかわいい。素直にそう思うことを受け入れたい。
写真は「ぱんだ珈琲店」にあったパンダの折り紙。動物折り紙の中には、ちょっと無理があると感じるものも時々あると思うが、これは立派にパンダ。
カクカクしてもこんなにかわいい。ポージングを含め、このかわいさを自分も取り入れて、これからの人生を豊かにしていきたいと思う。