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ひらめきの月曜日
 
本わさびはツーンとしないのか

味を確かめよう

過去に飲食店などで本わさびを手にしたことはあっても、すり下ろしたらすぐに薬味として使ってしまっていたせいで、未だに本わさび単独での味がどういうものなのか知らないままでいる。

あれこれ検証する前に、まずはその正体を知らないことには共に闘えないだろう。


まずは茎を取って、と。
きれいに水であらったら準備完了。皮ごと使います。

しかし、どうやって味を確かめればいいというのだ。本わさびは酸素に触れることで辛くなるというし、包丁や下ろし金の金気を嫌うともいう。

ちょっとでも味に影響を及ぼしそうなことは避けたい。


だったらこれしかないだろう。 覚悟の上だ、止めてくれるな。 ガリ。
…えっ? お、おおお? これは!

ツーン具合がどうだったのかは、一連の写真をご覧いただければお分かりになると思う。我ながらどんな苦悶の表情をさらけ出すことになってしまうのかと恐れていたが、最後はなんと笑ってかじり付いていた。

とにかく爽やかなのだ。ほとんど辛くない。これに醤油でも付けて食べたなら、いつまででも日本酒を飲み続けられるのではないかと思えるほどである。

「口の中を駆け抜ける一陣の爽やかな風。その名は本わさび」…こんなキャッチコピーまで浮かんでしまった。

いい。これはいい。とてもいい。これを薬味として使ってしまうなんて、とんでもなく贅沢なんじゃないのか。

 

でも薬味として食べよう

まあ、なんのかんの言ったところで、わさびがその本分を発揮するのは薬味としてだろう。ならばそのフィールドで勝負といこう。


鮫皮おろしでクルクルと円を描くように。
さらには「辛みがなくなる」と言われる下ろし金で上下にガスガスと。
残りは包丁で処理。
みじん切りとスライスとを用意しました。

チューブ入り2つを含め、計6種類の薬味が勢揃い。

本わさび単体ではツーンとしないことはもう分かった。ならば、下ろし方や切り方で味にどんな違いが生まれるのか、次はそれを知りたいのだ。

わさびがいい物だけに、ここは相手にもそれなりの出自が求められよう。品格及び風格、本わさびを前にしても怯まぬ態度、そしてみなぎる自信と我の強さ。それらを有する相手じゃないと、本わさびに負けてしまう。

主役はあくまでまだ見ぬ相手であり、本わさびが「オレがオレが」という態度では、どんなにおいしくとも薬味としては失格なのだ。「分をわきまえろ!」って話なのだ。記事での主役は本わさびだが、食卓の上での主役は残念ながらあんたじゃない。


と言いつつ、せっかくの本マグロ(大トロと赤身)が霞むほど薬味が幅を利かせてますが。

完全に主役を食っている。さしもの本マグロでさえ「え、お前ら一体なに、どういうつもり? 下克上?」と戸惑っているかに見える。マグロよすまん。今日ばかりはどうにか堪えてくれ。

段取りを整えたのは自分であり、こういう趣向の企画だと分かってはいるのだが、まさに「どっちが主役だ?」な状態になってしまった。

ま、こんなことはもう起こらないだろう。二度と見ることのできない風景として、心に焼き付けておきたい。

では、それぞれを食べてみましょうか。


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