本気の卓球大会らしい

備品のスリッパを履き、スリッパラケットを手に持って、体育館の中に一歩入ると、汗とサロンパスが混ざったような体育館でおこなうスポーツ独特の匂いが充満している。

館内にはすでにたくさんの卓球台が置かれており、出場選手がウォーミングアップに励んでいた。

しまった、これは本気のスポーツ大会だ。

「卓球があまり上手でない方」という参加資格を鵜呑みにしていたのだが、どうもほとんどが卓球経験者のようである。着ているものも、ちゃんとした卓球用のユニフォームの人が多く、最低でもジャージくらいは着ている。

私はスリッパ卓球っていうくらいだから浴衣でいこうかと思っていたくらいなのだが、それでも家にあった服の中で一番卓球っぽい服を選んできたのだが、どうにも会場で浮いている気がする。

スリッパ卓球だけどスリッパでは参加できない

ピンクのポロシャツは客観的に見て昭和っぽいというだけで大きな問題はないのだが、困ったのが足元だ。体育館の備品のスリッパを履いていたのだが、プログラムに書かれた注意事項に「試合は、必ず上履きで行ってください。」と書かれているのだ。

スリッパ卓球大会なのに、スリッパを履いての参加は禁止。スリッパをラケットにするけれど、スリッパを履いて試合してはいけないとはこれいかに。どうせならシューズも専用スリッパを開発してくれればいいのに。

シューズを買いに行っている時間もないので実行委員会の人に相談をしに行ったら、委員の方のシューズを貸していただけた。柔軟な対応、ありがとうございます。

実行委員にインタビュー

シューズを借りたついでに、実行委員会の方にインタビューをしてみた。

まず一番気になる「なぜスリッパで卓球なのか」という疑問なのだが、これは1997年に開催された高齢者のスポーツイベントである「ねんりんピック」が事の発端なのだという。

昔から卓球が盛んなここ河北町が、ねんりんピックの卓球会場に選ばれたのだが、せっかくなので集まった選手や町民が交流できるスポーツを考えようということで生まれたのが、生産量日本一を誇る河北町のスリッパを利用したスリッパ卓球なのだ。

これがおもしろいと評判で、毎年ここ河北町で行われるようになり、世界大会と銘打つようになって今回が第五回。

ちなみにボールは通常のピンポン玉より大きいラージボールというものが使われる。空気抵抗が大きいのでスピードが出ないボールなのだ。

そしてこのスリッパ卓球、普段使っている普通のスリッパで卓球をやるのではなく、わざわざ専用のスリッパラケットを開発したのにも理由がある。

卓球を愛する人の中には、履き物のスリッパをラケットにすることを不快に思う人もいる。テーブルなどは普通の卓球でも使うものだし、どうしても不謹慎な感じがする。だが地元の名産であるスリッパを使いたい。じゃあ卓球専用のスリッパをつくっちゃえ、ということになったそうだ。

ちなみにこのスリッパラケットは毎年微妙につくりが違うらしく、年によって底の素材などが異なっている。毎年わざわざ京都から参戦しているヨシイさんの話によると、第三回で購入したスリッパラケットが、一番スピードがでるのでおススメなんだとか。グレートヴィンテージっていうやつですかね。

一応、本当に国際大会です

会場にきて謎だったのが、外国人の参加者が思ったよりも多いということ。世界大会というくらいなのだから外国人がいて当たり前なのだが、さすがに海外でこのスポーツが有名だとは思えない。

どうやって国際大会といい張れるだけの外国人を集めたのだろう。

実行委員会の人に聞いてみたら、今日参加している外国人は、ほとんどが山形大学の留学生で、ゼミやサークルに声をかけて多国籍な参加者を毎年集めているのだそうだ。世界大会って大変ですね。