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フェティッシュの火曜日
 
青春の砂鉄
砂鉄=蹉跌です


 「青春の蹉跌(さてつ)」という作品がある。青年が挫折する話だ。

 “蹉跌”という聞きなれない単語は、「つまずき」とか「挫折」とかいう意味だそうだ。僕の人生にもだめなことは多かったが、それを「蹉跌が多い」と言い換えるとかっこよくなる。

 ところでサテツと聞くと、まず酸化鉄の粉である"砂鉄"を思い出す。ここで砂鉄と蹉跌にものすごい関係があるのではないかという飛躍的発想が僕には生まれた。

 そんなわけで、僕の人生の蹉跌経験をヒントに砂鉄を集めてみようと思います。

 

(text by 藤原 浩一

砂鉄と蹉跌

 砂鉄を集めようとするのが今回の目的だ。記事に「青春の砂鉄」というタイトルを付けた時点で半分くらい満足してしまっている感もあるが、頑張ろうと思う。

 ダジャレによる動機付けによって今日も僕は動き出す。

 まず磁石を用意した。説明書きを読むと普通の磁石より磁力が弱いそうだが、その用途として砂鉄集めが含まれていた。何か導きみたいなものを感じる。



右上のイラストの磁力線が変だ。リモコンか。

磁力は弱いらしいが…


 磁力が弱いと書いてあり若干油断していたのもあって、うっかり磁石の上にデジタルカメラを置いてしまった。すると勝手に電源が入ったので、あなどりがたいと思った。


我が青春、サテツが多いのはどこだろか?

 さっそく砂鉄集めに入る。

 今回は小学校・中学校・高校時代それぞれの蹉跌ポイントを回って、その場所の砂鉄を集めてみたい。

 蹉跌ポイントというのは今僕が命名したポイントだ。人生において「ここで躓いたなー」「ここで引っかかったなー」ということを感じさせるポイントである。人それぞれいろいろな蹉跌ポイントがあるはず。

 「蹉跌ポイントには砂鉄が多いのではないだろうか?」という仮説を立てようになったが、それは引っ込めて、まずは小学生時代の蹉跌ポイント。何が見えてくるだろうか。


ここが最初の蹉跌ポイントだ!


 なんの場所かよく分からないかもしれないが、ここはかつてプラモデル屋だったところだ。

 今はどう見ても人んちだが、10数年前に通った頃は外壁が緑の店っぽいものがあった気がする。久しぶりに来て、周囲の景色も変わり果ててしまっているので、本当にここなのか自信がないけど、たぶんここだったはず…。



確かあったはずなのだが、面影もない


 なぜこのプラモデル屋が蹉跌ポイントかというと、ここの店主がちょっと怖い人だったからだ。「店内で飴をなめてはいけない」「店内で騒いではいけない」という明文化されたルールがあり、それを破ると退場させられてしまう。

 ルール自体はまっとうだが、どうせならもっと気楽な店でミニ四駆を買いたかった。しかし当時はそこ以外買いに行けるところがなかったのだ。背に腹は代えられない。

 それまで割と明るく生きていた僕は「世の中には怖い人がいる」ということを知り、ただでさえ少ないコミュニケーション意欲ががっくりと低下したという。



まあ、いいか。ここで。

蹉跌をかみしめながら砂鉄を集める


 磁石にビニール袋をかけ、さっくりと砂鉄を採取する。

 砂場や海岸以外に砂鉄はまったく存在しないんじゃないかと不安になったが、ないことはなかった。ちょっぴりだが、磁石の先に砂鉄がついている。ただの泥のように見えてもぽろぽろと落ちていくものとくっついたままのものに別れ、くっついたままのものは間違いなく砂鉄であることが分かる。


一応ではあるが、砂鉄は落ちていた



 妙な感動に満たされた。磁石に砂鉄がくっつくことに対する感動と、自分の青春の砂鉄を眺める感動を混同しそうになるが、もちろん後者に対する感動である。と思う。

 飴を舐めていた友達が退場させられたので自分もなんとなく退場したあの日も、目立つ所に置いてあったので雷神モーター(タミヤじゃないモーター)をうっかり買ってしまったあの日も、砂鉄はただ黙ってそこにいたのだ、という感動である。

 続いて中学時代の蹉跌ポイントに移る。


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