ばんえい競馬インタビュー
ツアーを引率してくれた広報の小泉さんに、ひきつづきお話をうかがった。
京都出身だという小泉さん、それまでは特に競馬に興味があったわけではなかったが、ばんえい競馬を見て一気にその魅力の虜になってしまったのだそうだ。そしていまではこうして、競馬場の職員として働いている。(小泉さんの発言は、少し関西なまりに変換してお読みください)
石:レースのおすすめの楽しみ方みたいなのはあるんでしょうか?
小:馬とならんで一緒に走ってみるのがおすすめです。人間の小走りくらいのスピードですし、距離も200m、時間にすると2分くらいですから、けっこう簡単について行けます。最初から最後まで間近で見られて、臨場感が楽しめますよ。
あとはやっぱり競馬ですから、馬券を買ってみてほしいですね。馬に対する思い入れというか、見てて興奮の度合いが全然違いますから。
石:レース中、特にみどころなのはどのあたりですか?
小:第2障害物前の平地ですね。ここで騎手は馬を止めてもいいことになっているので、険しい第2障害に備えて、馬を休ませてペース配分をするんです。ここで馬の特性や土の状態、レースの状況なんかを考えて、遅れすぎないように最適な休ませ方をする。この駆け引きが面白いところです。
石:お客さんは、観光客の方もよく来られるんですか?
小:ええ。ここ数年、特に増えていますね。そういった方にもより楽しんでいただけるように、夏場はバーベキューセットを用意して、レースを見ながらの焼肉なども行っています。
石:遠くからのお客さんにおすすめのシーズンは?
小:夏場でしたら、10月頃ですね。旅行シーズンも過ぎて、少しゆったりとレースを見ることができます。
でも本当は、帯広競馬場のメインシーズンは冬なんですよ。特に一年で最大のレース、3月のばんえい記念。これは遠地からもたくさんのファンの方が来られます。
そう、帯広競馬場のメインシーズンは冬なのだ。レース自体は年間通して行われているのだが、こうして「メインシーズン」なんていわれるのには理由がある。そこには、ばんえい競馬のおかれている現状と深い関係がある。
存続の危機
実は今、ばんえい競馬は存続の危機に瀕している。以前はレースは北見・岩見沢・帯広・旭川の4つの競馬場で開催されていた。季節ごとにこの4つの競馬場をめぐり、帯広では冬にレースが行われていたのだと(これは帯広競馬場にはロードヒーティングがあるからだ)。これが、冬が帯広競馬場のメインシーズンといわれるゆえんだ。
ところが金銭的な理由により、帯広以外の3つの競馬場は2006年に次々とばんえい競馬の廃止を決定。それ以来、ばんえい競馬は年間通してこの帯広競馬場で行われることとなった。
帯広競馬場だけは廃止を免れたものの、毎年毎年、次の年もレースが存続されるかは綱渡り状態だそうだ。ひとまず来年度の開催は決定。しかしそれ以降はまだまだ先が見えない状況だという。
ばんえい競馬の魅力とは
石:ばんえい競馬の魅力ってなんですか?
小:北海道の馬の歴史が凝縮されている、というところですね。ばんえい競馬は北海道の開拓時代、馬と人間の共同作業の中から生まれたものです。
ルールひとつ取っても、たとえばばんえい競馬の場合、ゴールの判定は馬の鼻先ではなく、ソリの一番うしろで決まるんですよ。これはばんえい競馬がただのレースではなく、「荷物を運ぶ」競争だからです。馬と人が協力して北海道を開拓した、そんな歴史の名残ですね。
ばんえい競馬はただのギャンブルではなく、北海道の歴史を伝える文化でもある。そんなばんえい競馬の存続のため、小泉さんはじめ職員の方々も、日夜がんばっているのだ。 |