アルミならどうだ
継ぎ目のない大きな板状のもので、台所で使われてそうな素材といえば鉄やアルミあたりが妥当だろう。
さらに、スパゲティがアルミ板という的を外しても大丈夫なように、周辺にはビニールの袋も敷いた。
スパゲティが簡単に張り付いてくれないことは、古賀さん宅で証明されている。
だから、これはあくまで肩慣らしのつもりだった。深い意味など何もなかった。気まぐれに、とりあえずホイッと投げてみただけなのだ。
それなのに。
「はい?」と思った。「なんでアンタが張り付いちゃうんだ?」と思った。目を疑うとはこのことである。
いよいよイタリア人のことが信用できなくなりつつある。茹で時間12分のスパゲティが5分で張り付くって、まるっきり意味がわかんねーですよ。
もしや、あの話はガセだったのか。いや、でも。
ショックを受けた状態で3分が過ぎ、今度は箸で麺を掴んだままポイッと放ってみた。
5分で張り付いたものが、8分で付かないわけがない。もしかしてイタリアの台所の壁ってアルミなのか? だとしたら茹で加減が滅茶苦茶なはずだぞ? 一体どうなってるんだ?
結論を出すのは、用意したもう一枚の板を試してからにしよう。
なんちゃって大理石はどうだ
「果たして壁に大理石が使われるだろうか」とは私も思う。思うが、他にこれといった素材が考えつかなかったんである。
アルミに替えてこの板をセットし、同じように5分経った状態のスパゲティを投げてみた。結果は…。
まぁ写真をご覧になってくださいよ。その隙に、ちょっと頭を抱え込ませてもらいます。
企画が根底から崩れ去る音を聞いた。確かに聞いた。
結局、継ぎ目のないツルツルした板というのは、どんな茹で加減のスパゲティであれ簡単に張り付いてしまうものらしい。それだけは確かだ。
だからといって、ここでおめおめと引き下がってはいかんだろう。台所といえばやっぱり誰がなんと言おうとタイルが主流なんだし、なんとかタイルで再度挑戦してみたい。
今度はちゃんと自分の家の台所を使おう。そして納得がいくまで麺を投げてみよう。もしかしたら、なにかコツらしきものが見つかるかもしれない。