電話の相手は?
相手は誰ですか?
何やら深刻そうな話をしている。 残念ながら 芥川賞からの連絡ではなく、仕事の電話のようだった。電話が長引いている。
林さんの電話にはキャッチホンが付いているだろうか?
長電話の間に芥川賞からかかって来たら大変だ。
そんな僕の心配を他所に、林さんの電話は延々続く。
ケチャップで「祝 芥川賞」と書こうとしたら、「祝」という字を間違えてしまった。
こんな芥川賞作家、いる訳ない。
あきらめました
結局、7時を過ぎても芥川賞からの連絡はなかった。フリードリンクとポテトで粘るのも、もう限界だ。
あきらめて帰る事にした。 今回はダメだったかもしれないが、また次がある。
別れ際、林さんから
「もっと長いの書かないとダメじゃないですかね」
と意見をもらった。 確かにそうかもしれない。次回作は、枚数を稼ぐ方向で考えよう。
賞は取れなかったけど
15日の選考会には、あらかじめ5作品がノミネートされていて、僕の「アリスの花」はもちろんその中に入っていなかった。最初から無理だったのだ。
ジョナサンから事務所に戻ると、さっきまで一緒にいた林さんから荷物が届いた。 箱を開けるとバースデイケーキが入っていた。
大きいロウソクが3本に、小さいロウソクが9本。
そうだった。1月15日は僕の39回目の誕生日だった。 これから30代最後の1年が始まるのだ。
芥川賞は獲れなかったけど、無事に1つ年を取る事が出来ました。 ありがとうございました。
(おわり)