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林: こういうスタイルも久しぶりですね。
住: ええ、ちょっと空いてしまいました。
林: 前回の壁で落胆しているのではないかと心配してました。
林: 部屋の中が見えなくて。

住: もう大丈夫です。労力の割に報われないって結果は慣れっこですから。
林: 報われたところで自社の会議室が見えただけですもんね。
住: そうなんです。そこが一番の落とし穴でした。
林: ドアスコープをつけるという手もあったかもしれませんが。
林: モナリザがデメキンみたいになったかもしれませんし。

住: そっか。ドアスコープか。今度やってみますよ。
住: あと、壁紙貼るのうまくなったので、林さんの家の張り替えとか手伝えるし。
林: 一カ所ぼろいところがあるのでぜひお願いします。
住: あの茶色い壁紙でもいいですか? 余ってるので。
林: あれかー。いいですよ。
住: 本当は何色ですか? 壁。
林: ピンク系ですね。
住: ピ、ピンク!
住: そういえば、前の乙幡さんの家の壁が変な色とか言ってませんでしたっけ?
林: そうでしたっけ? 家の形がへんなんですよ。
林: まるい窓とかある。

住: ああ、そうでした。
住: ラブホテルみたいだって、本人が。

林: じゃあ今週は寒中水泳で。
住: 何ですか、唐突に。絶対やりませんよ。
林: きょう寒中水泳で、って言うの3人目です。
林: 藤原と工藤さんにさっき言いました。

住: どうしてそんなにやらせたいのかが分からない。
林: 禊ぎですよ。2008年の汚れた体を清めたいという。
住: 誰の?
林: 僕の。
住: 林さんの?
林: そう。僕の代わりに誰かにやってもらいたい。
住: 自分でやらきゃ意味ないでしょ。
林: 誰もやってくれないので僕の身体は汚れっぱなしです。
住: 禊、人任せ。
林: ということで、寒中水泳でいいですか?
住: いや、それは是非自分でやってください。
林: じゃあ、今週は何を?
住: 今週、芥川賞の発表があるんですよ。
林: ええ。
住: で、その連絡を待ちたいと思っていて。
林: 連絡を待つ?
住: ええ。僕が獲れるかもしれないので。
林: え?


向き合ってチャットしてました(200/1/13収録)









1月15日に芥川賞の発表があるというニュースを聞いて、居ても立ってもいられなくなった。

もしかしたら受賞出来るかもしれないのだ。

というのも、昨年、デイリーポータルZが発行する区報「デイリーポータルZ区」という冊子に、オリジナル小説を発表しているからだ。林さんから「区報に小説を書いてください」と依頼されたのだ。日本語で書かれたオリジナル小説である。可能性はゼロではない。もし受賞となったら、真っ先にデイリーポータルZ上でご報告しないといけない。

というわけで、芥川賞が発表される1月15日、すべての予定をキャンセルして受賞の連絡を待つことにした。

(text by 住 正徳




作品のおさらい

まずは昨年発表した小説「アリスの花」の全文を掲載させていただこう。

〜北官能小説「アリスの花」〜

 アリスはシティホテルの一室にいた。さっき出会ったばかりの男と2人。男は既にシャワーを浴びてベッドの上に腰掛けている。腰にタオルを巻いただけの格好で、男はアリスにシャワーを浴びるよう視線だけで促した。アリスは、その視線が自分の肢体に纏わりつくのを感じ頬を紅潮させた。男はそんなアリスを更に辱めるように、下顎を突き上げ「早く行け」と命令した。脱衣所でブラウスのボタンをゆっくりとはずすと、家を出る前に体にふったパフュームの香りが薄らと香った。普段は、香りを身に纏うことなどない。10年連れ添った夫は、アリスに色気を求めなくなっていた。このまま花を枯らしたくない。下着をはずすと、全裸姿の自分が鏡に映った。躯の線はまだ崩れていない。これから、名前も知らない男に躯を見られるのだ。夫への罪悪感が過り、アリスは鏡の肢体中の自分に向かって小さく囁いた。
「んなもん、おっちゃっとけばいがっぺ」
両手で軽く頬を叩き、シャワールームの中に入った。そう、新しい自分に出会うために。(おわり)

掲載スペースの都合上、とても短い作品に仕上がっている。この長さでも受賞出来るのか? 一抹の不安は残るが、芥川賞は短編、中編を対象とするらしい。多分大丈夫だろう。むしろ、IT化が進んでみんなが時間に追われている昨今、これくらいの長さの方が時代に合っていると思うのだ。

また「北官能小説」という新しいジャンルを開拓したという自負もある。オチに北関東弁が出てくるので北官能小説である。純文学に「オチ」が必要なのかどうかは知らないが、その辺は「斬新」ということで解釈されることを望む。





 

 
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