94点以上を10回出すとボトル1本
ここで「綾」のカラオケシステムを紹介しよう。「綾」はUGAの通信カラオケを採用しており、歌い終わると自動的に採点される。94点以上を出すと、ノートに日付と名前、楽曲名を書き込む事が出来る。そして、94点以上を10回達成すると好きなボトルを1本プレゼントされるのだ。100点の場合は一発でボトル1本である。
よし、100点を狙おう。
ママの受けを意識して、新沼謙治さんの「津軽恋女」を歌う事にした。 この曲で100点を狙う。
自分では最高の出来だったと思う。 ママも拍手をしてくれている。さあ、何点だ?
モニターに点数が表示された。
惜しい! あと4点でボトル1本だったのに…。
それでも94点以上は獲得しているので、ノートに名前を書き込めるのだ。
それにしてもあの出来で96点とは。本当に100点なんて出るのだろうか? ママに聞いてみた。
「凄い人がいてね、10回連続で100点を出したのよ」
なんと、100点を10回連続で出した人がいるという。
「その人、83才なんですよ。凄いでしょ」
83才が100点を10回。プロか?
「100点以上の人だけが書けるノートがあるのよ」
と、ママが別のノートを出してきた。
ノートのグレードが一気に上がった。94点以上は普通のノートで、100点は和紙である。
ママの言う83才の人の記録は残っているのだろうか?
達筆な文字で10回、曲名と日付が刻まれている。 本当だったのだ。
さらに、この記録には注目すべきポイントがある。
僕が歌った「津軽恋女」が2回もエントリーされていたのだ。 完全に負けた。
よし、この人がチョイスしそうにない曲で勝負しよう。
ここぞ、という時には必ず歌う「哀愁のカサブランカ」である。これなら100点をもらえるはずだ。
万全を期して、立って歌う事にした。
完璧だ。今までにない「哀愁のカサブランカ」を表現出来たと思う。
さあ、何点だ?
なんと、「津軽恋女」よりも低い。
「哀愁のカサブランカ」で無理なら僕にはなす術がない。100点を10回連続で出した83才はモンスターだ。
とりあえず、94点ノートに名前と曲名を書き込んだ。
いやぁ、すっかりスナックを楽しんでしまった。
そろそろお会計を、と思い始めたたその時!
「もう1つ軽いものを作るわね」
とママが厨房に入った。
そうだった。
僕はここに「何か軽いもの」を食べに来たのだ。カラオケで高得点を出してボトルをもらう、という企画ではない。
今宵2品目の「何か軽いもの」を待つ。