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ひらめきの月曜日
 
ちょっとエッチなすごい奴・久米仙人まつり

 

大フィーバーの末に得た意外なもの

しばらくすると、やぐらの上に3人ほどの男性が登り、箱を運び込んだ。集まった人たちは、固唾を飲んでその様子を見守っている。

 

あふれるわくわく感

 

待ちきれずに「おにいさーん、こっちに投げてー!」と叫び出す子供もいる。やっぱりなんか、投げられるんだ。

ほどなく、寺のご住職からのあいさつ。そしてフィーバーの時は来た。やぐらの上から投げられたものは…。

 

ティッシュだ!

ティッシュティッシュティッシュ!

 

やっぱりティッシュだ!  えー、ティッシュ?と思っている私をよそに、待ちかまえていた人たちはヒートアップしてティッシュを奪い合っている。

 

わーわー!

わーわーわー!

 

歓声が響く中、かなりエキサイティングなティッシュ取り大会。ティッシュは相当な量が投げられていて、みんなそれを取っては持参した袋に入れていっている。

中には袋がかなり膨らんでいる人も。確かにあれだけティッシュがあれば、半年くらいはティッシュに困らないだろう。

 

たまたま撮れてた一枚

 

結構長い間、ティッシュ撒きは続いた。私は撮影しながらだったのと、対象がティッシュという部分にもやもやしたものを感じたのとで、結局2つしか取ることができなかった。

「これで最後!」と、やぐらの上の人の宣言とともにラストティッシュが撒かれて、ティッシュフィーバーは終了。みんな自分の取ったティッシュを確かめ始めた。

 

おお、かなりの成果じゃないか

背面の紙が絵馬と同じデザインでうれしい

 

2つしか取れなかった私に対して、同行の妻の袋を確認してみると、かなりの数のティッシュが入っている。入っている紙の絵が絵馬のものと同じで、これはよい記念になるとうれしくなる。

そんな風にしていると、気がついたことがあった。

 

なんか緑の紙が入ってるぞ

別棟に向かう人たち

 

普通のティッシュに加え、緑色の紙が挿入されたものがあるのだ。

お寺の宣伝かと思っていると、近くにいた地元とおぼしき方が「それ持ってくと、なんかもらえるよ」と教えてくれた。確かにさっきから別棟の方に向かっている人波があるのを、なぜだかわからないままに見ていたのだ。

 

なんだか番号が書いてある

人でごった返す別棟

 

どうやらこの緑色の紙に書いてある番号に応じて、景品がもらえるらしいのだ。自分も人波に加わり、別棟の方に向かってみる。景品との交換を待つ人たちでにぎわっているではないか。

 そうか、だから必死だったのか、みんな。それにしても2つも当たりのティッシュを取れてよかった。

 

景品をさっと隠した50番が当たった女の子

 

棟の奥には番号の振られた景品が並べられている。順番が来るまで時間がかかりそうなので、他の人の様子を見ていると、開けるのを我慢しきれずに地べたに景品を置いて「50」と書かれた包みを開けている女の子がいた。

包みの中から出てきたのは、黒い地味なショルダーバッグ。女の子はバッグを見たかと思うと、その瞬間を撮ることができなかったほど、すぐに包みの中に再び戻した。

小学生の女の子にはふさわしくない、黒いショルダーバッグ。当たった喜びと、得たものの微妙さとのギャップが残酷な一瞬だった。

さて、だんだん人がはけてきて、奥に置いてある景品たちが見えてきた。自分の番号は10と100だが…。

 

あれ?

 

うーん。100って書いてあるのは、スヌーピーのぬいぐるみに見える。しかも結構でかい。

あー、でもまさかねえ。

 

一応うれしいっす

10番の方はかわいらしい柄の折りたたみ傘

 

なんとか心の中で否定していたのだが、手渡されたもののうちの一つは、やっぱりスヌーピー。

どうすんの、これ。帰りの新幹線でもこれを抱いていなくてはならないのだろうか。それはむごいだろう。

10番の景品は花柄の折りたたみ傘。こちらは妻が使うと言っているのでいいのだが、さすがに妻もスヌーピーのぬいぐるみを喜ぶような年ではない。

どうしたものかと戸惑っていると、近くにいた女の子の声が聞こえてきた。

 

「変な色の傘〜」

 

「変な色の傘〜」と、がっかりした声で言っている、小学生くらいの女の子たちがいた。言って5秒くらいすると、再び「変な色の傘〜」。全部で4回くらい言っていたと思う。

この子たちが気になる。よし、交渉開始だ。

 

あやしいおじさんではないよ

元気で暮らせよ、スヌーピー

 

「よかったらさ、このぬいぐるみと傘、交換しない?」と持ちかけてみたところ、二つ返事でオーケー。むしろ飛び跳ねて喜んでいるくらいだ。

そう、これでいいのだ。全てが丸くおさまったと思う。「やったー!」と言いながら帰って行く女の子たち。うっかりいいことしたな、と思いながら私も寺を後にする。

 

 

変な色の傘

踊りもその後のイベントも楽しかった久米仙人まつり。観光化されたお祭りではなく、こじんまりと地元に根付いた、味のあるお祭りだったと思う。地元に住んでいたら、確かにティッシュフィーバーに毎年参加するだろう。

駅までの道すがら、ふと思い出して「変な色の傘」の袋を確かめてみた。出てきた色は、ダークグリーン。

確かに小学生の女の子的には変な色なのかもしれない。でもおじさんにはちょうど実用的な色なんだよ。なんだかパーフェクトだと思った一日でした。

 

 
 
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