あ、南部せんべい。
生地は前回石鍋で焼いたときと同じ粉の配合にしてある。あの時はておてもおいしく焼けたのできちんと焼けてさえいれば最悪、まずいということはないはずだ。あむあむあむ。
おや? あむあむあむ。これは……。
「美味しい……、けど、ナンじゃないですね」
そうなのだ。ナンじゃない。じゃあ何だ。状態としては、外はバリバリ。中はふわっふわというよりもややもっちりした感じ。パンでもないし、何ともいえない炭水化物になってしまった。でも、決してまずいわけじゃない。どちらかといえばむしろ美味しい。
「あ! これ、南部せんべいだ。南部せんべいのあのはじっこのところですよ」
全員が、あっ! となった。そうだ、これ、南部せんべいだ。南部せんべいのあの周囲のパリパリしたところだ。
だいたいナンというのは強火で5分もかけずにワーッと焼くもの。それを今回は25分もかけて遠火の弱火状態でじっくり焼いてしまったためこんなことになったようだ。
「ナン部せんべいですね」工藤さんが言って、一同また「あー、そうだねえ」となっていた。 |