■父が遺したナマコは美味かった
親父は人を笑わせるのが好きだった。誰も得をしないようなウソをついたり茶番を演じたり、それで誰かが笑えばいいとばかりに、よくしょーもない事をしていた。人が笑う顔を見るのが好きだったのだろうと思う。
その親父が集めたナマコが人を笑顔にしている、それがなんだか感慨深くて、干しナマコの美味しさ以上に美味しく感じられた。これを親父にも食べさせたかったなぁと思っても、死んじゃってもういない。誰かに何かをしたくても、相手が死んじゃってたらなにも出来ない。
「親孝行したい時には親はなし」
しみるねぇ。しみる。干しナマコの味付けくらい沁みる。 |