前ページの看板を通ってから約40分ぐらい石を蹴りながら歩くと、道が開けたと同時にガスタンクが現れた。ようやく森の道が終わったんだと思ってホッとする。いまの僕にとってガスタンクは船乗りにとっての灯台である。
ここから人通りも増え、安心できると同時に迷惑にならないよう細心の注意を払いながら石を蹴らなければいけなくなった。
あと周囲の目にも耐えなければいけないが、これは心の殻に閉じこもることで対処していきたい。
ガスタンクからちょっと進むとここから札幌市であることを教えてくれる看板が出現した。
このときの時刻は16時10分。北広島駅を出発してから約3時間、だいたい8kmぐらいの距離だろうか。
これを見たときは感動した。石と一緒に看板を写した写真を10枚ぐらい撮ったほどだ。8km近くも石ころを蹴り続けるとそういう精神状態になってしまう。
感動ついでのここで三度目の計測。いままで見えなかった石の下側の線が見えている。
今更だが上から見るより横から見た方が変化が分かりやすいかったことに気づいた。上から見ることしか考えてなかったため、残念ながらスタート時の石を横から撮ってなかったのだが、石の高さがスタート時より明らかに減っている。
手に持った感覚も最初のそれより確実にマイルドな感じだ。つまり丸くなってるみたい。
札幌市を表す看板から20分ぐらい進んだところで、この日で最も過酷な道にきた。なにが過酷かって、この道は狭い上に人通りが多く、道路もでこぼこしてて、しかも外側に傾斜が傾いてるという鬼のような道なんである。
・・・こうやって文章にするとちょっと工事が必要なだけの普通の道路にしか聞こえないのは残念だが、石ころを蹴りながら歩いてる者にとってはその一つ一つが狡猾なトラップに思えてしまう。
そしてなによりも大変なのは他の通行者の方に邪魔にならないように石を蹴らなければならないことだ。
人通りのないところなら遠慮なく蹴れたが、ここは石が良からぬ方に行かないよう、足の裏で石を撫でるような蹴り方で進むほかない。
この動画を見てもらえば分かると思いますが、非常に歩みが遅い。
しかも歩行スピードは心理に影響するものなのか、気分も沈んでくる。石ころを蹴るという企画を忘れ、本当に落ち込んでトボトボ歩いてる気持ちになってしまった。
まだ蛇の出る森の中のほうが良かった。