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フェティッシュの火曜日
 
亀とかから出てくる湧き水巡り

湧き水が見あたらない

今までは道路沿いにあるアクセスのしやすい湧き水をまわってきたのだが、次はちょっと難易度を上げてみようと、道路からちょっと離れた場所にある「弁財天」という湧き水にチャレンジだ。

そして迷った。

その場所は山々に囲まれた畑と田んぼが広がる場所なのだが、道路から見える範囲にそれらしきものはない。

湧き水は見あたらないが、そのかわりに大きなクワの木が一本あった。鳥やカメムシに混じってちょっと食べさせていただく。水もいいけれど木の実もうまい。こんな木が学校の通学路にあったら良かったのになあ。


黒くなって指で触るとぽろっと落ちるくらいが食べ頃。

さて、クワの実はうまいが水がちっとも見つからない。足を使って方々探してはみたのだが全然だめ。一気に難易度上がりすぎ。難しすぎるオリエンテーリングに参加した気分である。これがRPGだったら近くの人に聞くとヒントがもらえるところだ。よし私も人に聞いてみよう。

といっても、なかなか人がいない。

水を探すのも大変だが、それ以前に人を探すのもなかなか大変である。ようやく森で木を切っている親子に出会うことができた。

しかし、気のよさそうな娘さんに湧き水の場所を聞いてみたのだが、わからないわと首をかしげられてしまった。本当にここでいいのだろうか。


「おとうさーん、湧き水だってー」と、奥のお父さんに呼びかける。

娘さんは奥にいるお父さんに聞いてくれた。チェーンソーを止めて出てきたお父さんは、「あの杉の下だよ!」と遠くを指さした。


あの杉って、どの杉だ。

どの杉ですかと聞き直そうかとも思ったのだが、ピンポイントで説明できるような場所でもなさそうなので、とりあえずいってみることにしよう。いけば水の音がするはずだ。大体の場所がわかっただけでも感謝である。

 

湧き水への険しい道

だいたいの場所がわかったところで、杉の下にあるという湧き水を目指して元気にアタック。田んぼのあぜ道をダッシュして水源を探しに行く。


一緒にいった友人がだんだんついてこなくなる。

ここじゃなかった、ここでもなかったと、トライアンドエラーを繰り返し、ようやく湧き水を発見!

探しに行くのを面倒くさがって遠くで待っていた友人に、宝物でも見つけたかのようにブンブンと手を振る私。


「あったー!」 写真中央で私が両手を上げています。

道沿いのわかりやすい湧き水もいいけれど、草むらをかき分けて探さないとわからない湧き水というのもまた楽しい。ゲームでは味わえないリアルな発見の喜びだ。

 

湧き水その3 「弁財天」

水が湧いていたのは杉の木に囲まれた昼でも薄暗い場所で、さっきの二つとは違って石像からではなく、地面からポコポコと湧き出て小さな池になっていた。まさに自然のままの湧き水である。


オートで写真を撮るとフラッシュを焚いてしまうほどの薄暗さ。

本当にここが目指す弁財天なのか微妙に怪しいのだが、奥の苔むした石碑にそれっぽい文字が書いてあるので、きっとこれでいいのだろう。

水底には落ち葉がたまり、水面にはカエルが泳ぐこの湧き水。さてこれはどうやって飲めばいいのだろうか。


波紋を立てて気持ちよさそうに泳ぐアマガエル。 つかまえてみた。なかなか思慮深そうなカエルである。

どう飲もうかって悩んだところで、どうもこうもない。

手ですくってグイッと飲むのみ。

生水だってヘッチャラだ。と、水と胃腸を信じるぜ。


本当はちょっとびびりながら飲んでいる。

 

うまい!

手ですくって飲んだこの弁財天の水、これが他の二つに比べてはっきりとうまかった。同じ地域の湧き水の味の違いなんてわかんないと思っていたのだが、ここの水は明らかにまろやかなのだ。そして旨みやコクがあるような気もする。コクのある水ってなんだ。

亀や龍の石像から出てくるというイメージ的な問題は置いておいて、先に飲んだ水も十分にうまかったのだが、なんというか湧き水独特の微妙にざらついた砂っぽい感じがあったのだ。しかし、この水にはそれが一切無いのである。

湧き水に詳しくないのでこれが正しい見解なのかはわからないが、ここの水がまろやかなのは、自然に湧き出たところで一旦池に溜まるため、岩盤を通ってきた水の中に含まれていた細かい砂が、沈殿した状態で飲めるからだと思う。旨みやコクの成分は溜まった落ち葉のダシだろうか。

また溜まっている分だけ、少し水温が高かったのも味に影響しているのかも知れない。

あと付け加えるならば、この水を探して歩き回ったために、喉がカラカラに渇いているという理由もあるだろう。


湧き水からの帰り道、エラヤッチャエラヤッチャヨイヨイヨイと踊っているのではなく、手を挙げていないと草で皮膚が切れるのだ。 湧き水が自然に湧いているような場所は、地面がぐっしょりと濡れていて危険だ。

場所がよくわからない、草で皮膚を切る、靴がドロドロになる、カエルが泳いでいるなど、飲むにあたっては問題も多々ある水だったが、それでも十分にいくべき価値のある湧き水なのであった。


憧れの(たぶん)シュレーゲルアオガエル発見!
 
 

 
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