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はっけんの水曜日
 
青春、吹き矢甲子園
公式の矢と、得点表。この矢が的に突き刺さります。


 6月に当サイトに掲載された記事「高校生の前で講演、50分」の取材をした際、取材先である大竹学園の先生から「吹き矢の大会で優勝したんです」という話を聞いた。

吹き矢?大会?優勝?

 更に詳しく聞くと、なんだかとっても面白そうだった。 高校生の体育大会で吹き矢部門があるのだという。しかもこの夏、全国大会に参加するとの事。というワケで、今回は吹き矢に掛ける青春を追ってみた。

(text by 松本 圭司

この的を6m離れたところから狙います。結構当たらない。

■以前吹き矢は当サイトで紹介しましたが

 以前、火曜日ライターの乙幡さんが「吹け!スポーツ吹き矢」という記事を書いたが、それの高校生版と考えると話が早い。

 ルールは簡単。指定の筒(長さ120cm)、矢を使い、6m先の的に当てる(級によって最大10m)。的には中心から7点、5点、3点、0点の同心円が書かれていて、5回吹いて得た得点の合計を競うことになる。

つまり、最高35点を争う競技だ。大竹学園の選手は30点以上は軽く取るのだという。すげぇ。

 本大会では10人が選手として参加、全員が競技を行うのだが得点として競うのはそのうちの上位3人の得点となる。これならたまたま調子が悪かった選手も責任を感じなくて済む。人に優しいルールだ。

 

軍曹殿!と敬礼したくなる雰囲気。

■中山先生です

 以上のルールを説明してくれたのは中山先生(写真左。右は前回の記事の大竹先生)。見るからにスポーツが得意そうな感じである。きっと僕が生徒なら

「こらー!松本ー!真面目にやれー!!」

って怒られてたに違いない。僕の体育の成績は、柔道を除けばいつも最低だった。

トロフィーや盾の数々。課外活動にも力を入れています。

 大竹学園は吹き矢競技で去年と一昨年優勝している。つまり今年は3連覇が掛かっているわけだ。

 その為か、先生達も気合いが入っていた。去年の成績だが、個人でも1位から6位までの3人が大竹学園の選手だったそうだ。どんだけ吹き矢強いんだ。隙を見せたら狩られるかもしれない。

では、校内選考会の様子をご覧いただこう。

 

■選考会は体育館で行われた

 体育の授業などで1次選考を行い、この日は2次選考を行っていた。最終的に出場する10名を決める大事な選考会だ。そんな大事な場をウロチョロして写真を撮って良いのか一瞬悩んだりもしたのだが、出来るだけ選手の視界に入らないように撮影をした。

みんな、上手い。


わりと和気藹々な雰囲気で行われた選考会。

 流石1次選考を通っただけあって、みんな上手くて、ちゃんと的に当たるし、中心に近い位置にヒットする。矢は筒から真っ直ぐに飛び、目にも止まらないスピードで的に突き刺さる。

 企画会議の時にニフティの安藤さんが「好きな子に吹き矢を当たられたい」って言ってたけど、これ、当たったら確実に血が出る。っていうか、矢を当てられたいっていうのはどういうフェチなんだろう。


姿勢が良い。構え方も良い。

 

模範演技をした中野先生。超上手い。

■上手い人の実技を見るのは気持ちが良い

 選手はまず一礼し、矢を掲げる。そして構えて吹く。矢は真っ直ぐに飛んでいき、的の中心を貫く。一連の動作は緩やかでよどみが無く、美しい。

 所作が美しい生徒はやはり結果の得点も良い。なるほど、単なる形式ではなく、吹くまでの動作がちゃんと精神の集中に役立っているのだなぁと感じた。理由あっての様式美なわけだ。

 ふっ!と吹かれた矢が真っ直ぐに的に飛んでいく様は、見ているだけで気持ちが良い。

中野先生の結果。29点だった。十分凄いと思うが、本人はいまいち納得できてない様子。

 選手を指導している中野先生の模範演技も美しかった。選考会の前に模範演技として5本吹いたのだが、吸い込まれるように的の中央に矢が突き刺さった。結果は29点。流石、と思ったのだが。

大竹先生「この学校で一番上手いのは理事長ですね。軽く満点を出しますよ。」

だそうだ。理事長すげぇ。

 

おっかなびっくり吹き矢初体験。当たると気持ちいい。

■やってみた

 写真を撮りながら記事の構成などを考えていたら、「やってみますか?」とのお声が掛かったので、僕もやらせてもらう事にした。すでに筒と矢が用意されていて、簡単にやり方を習った後に礼、筒を掲げて構え、口にくわえた。

 意外に太い筒に息を吹き込むと、矢が真っ直ぐにヒュン!と飛んで、的を外れた。うわ!こんなに凄いスピードなのか!自分で吹いてみてやっとわかった。5本吹いて、的のどこかに当たったのが2本。得点は、3点。

吹き矢、難しい。これで満点とかマジありえないと思った。

全然的に当たってない。かろうじて3点。

 矢は放物線を描いて飛んでいくのかと思ったら、意外にもほとんど真っ直ぐ飛んでいった。予想より高さが落ちないので、結果、矢が的の上に集中してしまった。

 しかしまぁ、的に当たった時の気持ちよさといったらない。WOW!!と、パツキンガールみたいな声が出てしまう。この爽快感はちょっとたまんない。

吹き矢、面白い。

 

お話を伺った上さんと花田さん。全国2位と3位が目の前に。

■選手インタビューです

選考会を終え結果発表。好成績を納めて選手として選ばれた花田さんと上さんにお話を伺った。

松「こんにちは、すごい上手いですね、なにかコツがあるんですか?」

花田さん(以下花)「感覚というか、勘というか。筒は手に乗せるだけみたいな感じです。吹くのは力強く吹くと良いです。矢が真っ直ぐ飛びます。」

松「なるほど、左手は添えるだけ!みたいな」

二人「??」

スラムダンクネタは高校生には古すぎた。

生徒の指導を主にしている中野先生。吹き矢は3年前、生徒に教えるために練習したのだとか。

 花田さんと上さんの二人は中学校から一緒の友達で、去年の大会に1年生で参加。2位と3位の成績を収めた吹き矢のエキスパートだ。全国で2番目と3番目に吹き矢が上手い高校生が目の前に!

松「なにか他に、スポーツとかやってるんですか?」

花「運動部じゃなくて吹奏楽をやっています」

 なるほど、吹くという点では共通するのだろう。花田さんは結構遠くから自転車で通っているとのことで、普段の生活が知らず知らずに吹き矢の成績に繋がっているんだと思う。重いビールのケースを運んでたら腕力が付いたという高橋名人に通じるエピソードだ。

上さん(以下上)「わたしは特に」

上さんは特にスポーツも吹奏楽もやっていないのだそうだ。ってことは、単純にセンスで勝ってきたのだ。すげー。

大会は富士山の裾野、河口湖で行われました。

松「練習とかどうするんですか?」

花「もう夏休みですから、教室に的と吹き矢が用意されてるんです。学校に来たらその教室に行って勝手に練習したり、あとは大会前に特別練習があったりします。」

 なるほど。この選考会は7/2に行われ、実際の大会は7/30に行われた。次のページでは大会の様子をお伝えする。

中野先生は「今年ももちろん優勝、3連覇します」と言い切っていた。果たして結果は?!


 

 
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