歌謡ショーが始まる
薄着の歌手の方が出てきて「CDが売れないと社長に怒られるんです…」と言って歌い出す。
この寒い中その寂しい台詞はおもしろいが、今、はどうだろう、と。それは今、こんな焼肉食ってる今、は重要だろうか、と僕らは思ってしまう。通常のおもしろが肉と煙に、イベントの持つ魔力みたいなものに回収されてゆく。多分今、方位磁針があったら間違いなくくるくるしてる。変な磁場になっている。
だが熟練はちがう
しかし次に出てきた池政昇さんは違う。ベテランということもあるが、特筆すべきは北見在住なのだ。曲が始まるやいないや、「寒いねー、これから焼肉食べに行くからおれの分まで焼いといてよ、よろしくー!」とステージを降りてゆく。
肉を焼かなければ、池さんのために肉を焼かなければ、と魔力であったはずの肉はその瞬間「池さんのため」のものとなる。磁場、そして肉を味方にしている。肉あっての歌。そう、ここは北見。池さんのホーム・焼肉の街北見なのだ。(僕は今何を言ってるのだろう)
客席から歓声が上がる。歌の合間に「ありがとう、よろしくー!」と観客とのやりとりを楽しむ池さん。こういうの初めて!と浮ついていると、同行の林さんが「行くよ!」と言う。え!?行くの!?と思う間もなく駆け出していく。どうすんの!?と思っていたら、池さんとの2ショット写真状況をすでに作りだしていた。 |