近づくにつれ色濃くなる記憶
昼食をとりに入った飯屋にドラム缶橋の写真があった。紅葉がきれいな写真だった。僕が行ったときはここまで鮮やかな色ではなかった。もう1週間遅めて訪れたら紅葉もピークだったろうか。そうすればカメラも。いや、それはどうだったのだろう。
あの日のこと
バスでも動画を撮影していた。紅葉のシーズンで週末であったから車内は満員だった。カメラを片手に構えたまま山道のゆれにバランスを崩し、つり革につかまることもできず、そのまま座っている乗客の上にお尻から倒れた。幸いにも乗客が良いクッションとなって僕もカメラも何事もなかった。この人は良いクッションだなあと思ったのを覚えている。
うっかり「奥多摩湖」というバス停で降りたのだが、そこからドラム缶橋までは歩いて1時間あった。しかも山道で歩道がなく、そばをビュンビュン車が通り過ぎて大変危ない目をした。トンネルは特に恐ろしく、友人が早く抜けようと走り出したのを覚えている。寒く、怖く、口数も少なかった。
カメラを沈めた帰り、暗くなってはダメだ、と当サイトウェブマスターに笑い話として電話をしたのがこのバス停だった。どんなカメラを買ったか使い心地はどうか、と色々気にかけていてくれた人だ。
ウェブマスターはひとしきり笑った後、「それで、おれにどうしろと?」と言っていた。へらへらして電話を切った後は、寒さに耐えるためジャンプして体を温めてバスを待った。そのとき僕はマサイ族のようだった。