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ロマンの木曜日
 
世界15カ国。教科書の挿絵を比較する

世界の小学生たちが使う教科書にはどんな挿絵が描かれているのか? 15カ国を対象に調べてみた。イギリス、イタリア、フランス、スペイン、スウェーデン、ドイツ、ハンガリー、ブラジル、タイ、マレーシア、オーストラリア、ロシア、韓国、中国そして日本。国によって挿絵のタッチは様々で、それぞれのお国柄を垣間見る事が出来る。ような気がする。

15カ国、全65点の挿絵を一挙に公開しましょう。

(text by 住 正徳



教科書図書館で資料を探す

世界の教科書を比較するといっても、普通の本屋さんに海外の教科書の取り扱いはない。教科書を専門に取り扱う本屋さんだって、海外の教科書までは仕入れていない。そこで色々と調べると、東京都江東区に「教科書図書館」という施設がある事が分かった。教科書の調査研究機関である(財)教科書研究センターと併設されていて、国内の小・中・高等学校で使用されている原稿教科書すべて、昭和24年以降の検定教科書などを所蔵しているという。そこに、諸外国の教科書が18,134冊も揃っているのだ(2007年3月末現在)。

早速、江東区の教科書図書館に向かった。


教科書図書館
教科書図書館

図書館の利用は無料で、資料を複写してもらう事が出来る。各国の教科書から挿絵のあるページを探し、コピーする事にした。

外国教科書の棚は国別に整理されていて、それぞれ初等教育、中等教育という分類分けがされていた。されてはいるのだが、外国の教科書なのでそれが本当に小学生の教科書なのか、中々見分けが難しい。英語以外の言葉は全く見当がつかないのだ。日本語の注意書きがされているものなど、小学生の教科書と判断のついたものだけをピックアップして、最終的に15カ国の教科書から挿絵をコピーする事が出来た。

それぞれ、「国語」を対象として、日本の小学1年生に相当する学年向けの教科書と、6年生相当のものから挿絵を集めた。該当する学年のものがないものもあるが、以下、ご覧いただきだい。


日本(現行教科書)

まずは日本の「国語」の現行教科書を見てみよう。学校図書から発行されている、「しょうがっこうこくご1ねん上」と「小学校国語六年下」からの挿絵である。


1年生の挿絵から おはよう(1年生)
1年生の挿絵から おはよう(1年生)

6年生になりました 討論する二人(6年生)
6年生になりました 討論する二人(6年生)

6年生になると子どもがかなり成長しているのが分かる。6年生ともなれば、もう立派な大人なのだ。討論にも熱が入っている。

続いて、日本のお隣り韓国の教科書を見てみよう。



韓国(1995年版)

1995年に発行された韓国の「国語」教科書1年生用と6年生用から。


姿勢良く勉強する1年生 礼儀正しい1年生
姿勢良く勉強する1年生 礼儀正しい1年生

横断歩道を渡る6年生 ポロシャツを着こなす6年生
横断歩道を渡る6年生 ポロシャツを着こなす6年生

1年生の描写は日本の1年生よりも大人っぽいが、6年生は日本の方が大人っぽい。1年生の時は長袖なのに6年になると半袖なのが原因か。

次は中国の教科書から。



中国(1989年版)

中国は1年生の教科書しか見当たらなかった。以下、全て1年生の「国語」にあった挿絵だ。


お手伝いとサッカーをする1年生 帰路につく1年生
お手伝いとサッカーをする1年生 帰路につく1年生

学校生活。手の上げ方が気になる 書道、図工など
学校生活。手の上げ方が気になる 書道、図工など

全体的に黒目がちな小学生たち。

続いてはロシア。



ロシア(1980年版)

ロシアも中国と同様、1年生の教科書のみであった。「ロシア1年生読本」から、ロシアの小学生たちを。


楽しそうに帰るロシアの1年生たち 何だか大変な事になっている様子
楽しそうに帰るロシアの1年生たち 何だか大変な事になっている様子

ロシアらしく雪の深い情景も かと思えばランニング姿も
ロシアらしく雪の深い情景も かと思えばランニング姿も

リッチな描き込みのイラストが多用されていた。ロシア・アヴァンギャルドの影響か。

次はタイにいってみよう。



タイ(1987年版、89年版)

タイは小学校2年生(87年版)と6年生(89年版)の国語教科書から。


しゃぼんを飛ばすタイの2年生 全体的に深刻な雰囲気のクラス(2年生)
しゃぼんを飛ばすタイの2年生 全体的に深刻な雰囲気のクラス(2年生)

6年生になって悪い友だちと合流 遊びに誘われるタイの6年生
6年生になって悪い友だちと合流 遊びに誘われるタイの6年生

2年生の時は無邪気にシャボン玉で遊んでいたが、6年生になって上半身裸の男が率いるグループと接触。悪い遊びに誘われてないか、心配である。

次はマレーシアだ。



マレーシア(1990年版)

「マレーシアの学習 5年生」という国語教科書から。


いいアイデアが浮かばないマレーシアの5年生 右の少年は国旗と同じ柄のシャツ
いいアイデアが浮かばないマレーシアの5年生 右の少年は国旗と同じ柄のシャツ

左の大人に良く似た人を知っている マレーシア版ズッコケ3人組か
左の大人に良く似た人を知っている マレーシア版ズッコケ3人組か

熱弁をふるう学生 表彰されている学生
熱弁をふるう学生 表彰されている学生

イラストのタッチが気に入ったので6枚載せた。青木雄二さんの作品のようだが、これは銭の話の挿絵ではなく、マレーシアの国語教科書からの抜粋である。

次はオーストラリアを見てみよう。



オーストラリア(発行年不明)

「WORK BOOK FOR A BOOK TO READ」という小学1年生用の国語教本より。


登場人物たち 水たまりに船を浮かべて遊ぶオーストラリアの子どもたち
登場人物たち 水たまりに船を浮かべて遊ぶオーストラリアの子どもたち

どのイラストにも色が塗られていないので一見塗り絵教材のようであるが、そうではない。マレーシアの次だと尚更淋しい感じもするが、このような線画も味わいがあっていい。

 

次ページではヨーロッパ地域を中心に、国語教科書の挿絵を見ていこう。






 

 
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