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ちしきの金曜日
 
東壁とマッカーサー

■これも大満足のようだ

都会のど真ん中に残るビンテージ物件。杉浦さんにお眼鏡にかなうか。

「やだ、これいい。どうしよう」と杉浦さん
思わず駆け寄る壁鑑賞の第一人者

薦めたものがその道の第一人者に認められるというのは気分がよいものだ。真剣な面持ちながらあふれる喜びを隠せない彼女を見て、うれしい気持ちになった。

ところで表題の「マッカーサー」はどこへいった、とお思いの皆さん、もうしばらくお待ちください。

 

■「カタチじゃなくてテクスチャ」


壁ににじり寄ります

公園で遊びに夢中な我が子を温かく見守る親のような気分で彼女の壁鑑賞ぶりを見ていて気がついたことがある。それは、杉浦さんは壁に接近しすぎじゃないか、ということ。

ぼくが撮った最初のページの写真では、このマスクメロン壁の全体像が写っている。補修の模様も良いが、建物そのものの形がかわいらしいと思ったのでそう撮ったのだ。しかし、杉浦さんは全体の形を見ることにはほとんど興味がないようだ。

「杉浦さんって、どんどん壁に寄ってくね」
「ああ、建物の形はあんまり。壁のこのすすけぐあいを見たい」

彼女の壁鑑賞はあくまでそのテクスチャにあるようだ。


なにやら大きく伸びをするようなポーズ

「なにそんなに背伸びしてるの?」
「見上げる角度とか嫌で。なるべく正対してフレームに納めたい」
「その高さの部分を撮りたいんだ」
「ほんとはもっと高い…あー、脚立ほしい」

このとき彼女が撮ったのは下のようなものだった。



ぼくの世界を見る目と彼女のそれとはまったく違うんだな、と感じた。ぼくにとっては街は建築物という「彫刻」がならんでいるところだが、おそらく彼女にとっては「絵画」が並んでいる場所なんだと思う。

このとき「そういえば」と思い出したことがあった。このマスクメロン壁のように、隣の建物がとり壊され、それまで見えなかった壁がむき出しになっている物件がたくさんあるところがこのそばにある!

「道路通すために地上げされてる途中で、こんな建物がたくさんあるところがあるんだけど、行く?」
「行きたい!」

中学生の頃、こんなふうに女性を誘う日が来るだなんて思いもしなかったよ。


 

 
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