街でときどき見かけるいろんな銅像。特に役所関係に出かけると、なぜだか見かけることが多いと思う。
普段はなんとなく見過ごしているが、よくよく見ると興味深かったり面白かったりするのではないだろうか。自治体によって作品の違いや共通点はあるのだろうか。
そういうわけで今回は、東京23区の区役所を回って、そこにある銅像を見てきました。
(小野法師丸)
銅像の定番と言えば、やはり女性をモチーフとしたものだろう。区役所めぐりの中でも、最も多かったのはこのカテゴリだ。それでもやはり、いろいろなポージングが見られた。
基本的にはかっこいいポーズのものが多いと言えるだろうか。先日の記事で加藤さんは自らポーズをとって楽しんでおられたが、確かに日常的にはなかなかしない、ちょっとやってみたくなるポーズが多く見られた。
いわゆる裸婦像というものだ。改めて回ってみて、子供の頃に見てどきどきした気持ちがよみがえってきた。子供の気持ちを忘れない大人、というのはこういうことでいいんだろうか。
上の4作品は全裸なのだが、中には一部服を着た作品もあった。半裸像と言えばいいだろうか。
港区と杉並区の銅像、ともに半裸像である。ぱっと見て、いろいろとお気づきになることがあるのではないだろうか。
服装に注目してみよう。港区の作品はシャツだけを羽織っているのに対して、杉並区の作品はズボンだけを履いている。同じ半裸とは言え、対照的な服装だ。
しかしそれよりもなによりも、この2つ、ポーズがほとんど同じではないか。
作品をよく見てみると、作者も一緒だった。着ている服を題名につけるというルールも共通だ。製作された年は7年の違いがあるが、かなり似ている両者。改めて作品をよく見ると、交差させた足の前後が違っている。何かあったのだろうか。
少数派だが、女性をモチーフとした作品にも服を着たものはあった。
服を着るとなんとなく作品が現代風な感じがする。特に文京区の「ローリー」は、作品名もポージングも気になる雰囲気をかもし出していると思う。
さらに女性像のカテゴリに含められるものとして、母子像があった。
さきほど挙げた裸婦像に子供がプラスされると、一気におかあさんテイストが湧いてくる。同じ女性像でも、子供が一緒にいるだけでずいぶん感じが変わるものだなと思う。
●少数派の男性像・子供像・動物像
街の銅像というと、なぜだか女性像の比率が圧倒的に多く、男性像は数少ないような気がする。その傾向は区役所の銅像の割合でも同様だった。
これもたまたまなのだが、ポージングがほぼ左右対称の作品同士となった。女性像と比べて、力強い様子がよく表れていると思う。
板橋区の「平和祈念像」には見覚えのある方も多いと思う。そう、長崎の平和祈念像と同じ作者の作品なのだ。長崎のは座っていて、こちらは立っている。解説によると、長崎の像は初め立像で試作をしたとのことなので、こちらは原点に帰ったものとも言えるらしい。
豊島区のものはレリーフであり、写真の反対側には女性がモチーフとなったものがあって対になっているのだが、男性像は珍しいのでこのカテゴリでの紹介とする。
七三分けが男らしい作品だ。顔だけ見ればひと昔前のサラリーマン風にも見えるのだが、全体像を見るとこんなサラリーマンはいないとわかる。
また、男性像と同様、少数派だったのは子供像だ。
躍動感あふれる渋谷区の作品に対し、抽象的な概念をテーマにした練馬区の作品。同じ子供像でも対照的だ。
練馬区の作品は子供像でときどき見かけるポージング。このポーズの像にも、子供の頃に裸婦像とは違った意味で凝視してしまった思い出がある。
台東区ではパンダ像を発見。ずいぶん唐突だなとはじめは思ったのだが、よくよく考えてみて上野動物園が思いついた。そうだ、これはきっとご当地像なのだろう。
ただ、同じルールで中野区の像を見てはいけない。ライオンだ。中野区にはライオンはいないと思う。
●発見できなかった区も
中には銅像が発見できなかった区もあった。私の調べ方が不十分である可能性もあるので、銅像な確定ということではなく、今回は見つけられなかったと解釈していただきたい。
それぞれ銅像を見つけられなかったので、建物内やその近くで目に付いたものを撮っておいた。北区の看板はその絵柄によって、文字で書かれているメッセージ以上の訴求力をもっていると思う。
さらには、銅像ではないがオブジェとして気になるものが見つかった区もあった。
これは何だろうか。機能として考えたとき、それはきっとベンチということになるのだと思う。ただ、モチーフは何かと考えると、すぐに答えが見つからない。
しばらく考えて思いついたのは、枝豆。多様な解釈が許されているというのも、優れた作品のもつ特性だと思う。
●カテゴライズできなかった区の作品たち
最後に、カテゴリ分けがどうもできなかった区の作品たちを紹介したい。どうにも独特なのだ。
銅像ではないかもしれない。一瞬なんだかわからなかったのだが、題名を見てモチーフを理解。これまでのものとは一線を画す独特な作風だ。
これは複数の像でひとつの作品となっているものだが、他にも同様の形式で、さらにドラマ性をもたせた作品があった。
先に杉並区は「ジーンズ」を紹介しているのだが、もう一つ区役所前に気になる作品を発見。男性と女性が組になった作品、どうもそこにはドラマがあるようなのだ。それは男性の裏側に回ってみるとよくわかる。
男性は後ろ手にリンゴを隠し持っている。女性の表情と合わせて、「お誕生日おめでとう」という題名の意味が伝わってくる。これまでにはない展開を見せる像だ。荒木飛呂彦の漫画に出てくる人のようにも見えた。
区役所というとお堅いイメージのいかにもな像ばかりかと思っていたが、実際にまわってみるといろいろなバリエーションがあって面白かった今回の銅像めぐり。想像以上に自由な幅があって、楽しめました。