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ひらめきの月曜日
 
銅像のポーズを難易度で評価する
準備運動をしておかないと、予想だにしない部位のスジがつります。


われわれが何気なく生活していて、駅や公園などで見かける銅像たち。

毎日視界には入っているはずなのに、ゆっくり鑑賞はおろか、どんな姿・ポーズをしているのかも思い出せなかったりします。

しかし銅像の作者は、考え抜いたすえにポーズを決めて制作にとりかかっているはず。
そんなポーズをあらためて鑑賞、いや鑑賞だけでなく自ら同じポーズをとることで、そのポーズの意図を体感したいと思います。

(text by 加藤 和美



■難易度 レベル1

では難易度が低いポーズから紹介していこう。
芸術性の高い銅像は、細かいところ、例えば指先や足先までポーズがキマっていたりするのだが、そこまで細部にこだわっていない銅像は気楽にポージングできる。


ツボは帽子で再現。
タイトル 土器と母子
難易度 ★☆☆☆☆
ポーズ 左手は頭に乗せた土器を押さえ、右手で子供の手を引いている。
コメント 基本的には普通に歩いているだけだが、右手は子供を引っ張っているのでぴーんと伸びている。
モチーフは弥生時代のお母さんだが、足先が意外にエレガント。
視線はお母さんを見上げるように。
タイトル 漁民之像
難易度 ★☆☆☆☆
ポーズ 群像だが、皆さんそれほど動きがないので、ここは右端の子供のポーズで。両足は幼子独特のおぼつかない足取りで、両手は「お母さん、抱っこ〜」と甘えるように伸びる。
コメント ヒザを深めに曲げながら歩くのは足腰の強さが要求される。自分のヒザの弱さを実感した。
子供がかわいい。
火よ、つけ!と念じながら。
タイトル 火おこし
難易度 ★☆☆☆☆
ポーズ あぐらをかいて、両手は火をおこす道具にかかる。険しい表情で手元を見つめる。
コメント 大昔の道具で火を起こすのは、かなり根気のいる作業だったろう。じいさん(銅像)自身も難しい顔をして火おこしにとりくんでいるので、私も眉間にシワが寄ってしまった。

あ、これちょっとかっこいい。
タイトル 登呂の光
難易度 ★☆☆☆☆
ポーズ 左腕を斜めに上げ、手のひらの上には炎。視線は炎を見上げ、左手は体の後ろ側にまっすぐ下りる。左足が前に出て、足はややキメ気味で。
コメント 炎の代わりにペットボトルを手のひらに乗せたら、ポーズうんぬんよりそっちのバランスをとるのに必死。
力強く希望を感じるポーズなので、機会があったら使っていきたいポーズだ。

 

■難易度 レベル2

やや難易度が上がってレベル2。
レベル2の特徴は、一見すぐできそうに見えるが、微妙なところでひと工夫されており、細かなところに注意が必要な銅像たち。

特に体重をどちらにかけるかで、ポーズの意味合いが変わってくる。
例えば後ろ側に体重をかけるとどっしりと。
前の方に体重をかけると今にも前身しそうな意気込みを感じる。


無造作なポーズに見えるのだが。見るのとやるのでは大違い。
タイトル 黒田清隆之像
難易度 ★★☆☆☆
ポーズ 体重は前に出ている右足に乗っていながら、腰は左寄り。上半身は後ろに反らす。左手はコートの前を開け、右手は握手を求めるかのようにさりげなく前へ。
コメント 体重の落としどころがわからず、何度やってもへっぴり腰に。
偉人の銅像は何体かあったが、ほとんどポーズに動きがない。というかポーズきめきめの偉人像があったらすごい。

優美なバンザイ。
タイトル 雪娘
難易度 ★★☆☆☆
ポーズ 右手は望遠鏡を掲げ、左手は歓喜をあらわすかのように上に広がる。視線は望遠鏡へ。左足は後ろへまっすぐ引いている。
コメント うれしそうに体重が前のめりになっているのがポイント。左手がいまいち銅像のように優美にならず。
なぜ彼女が喜んでいるのかは知らないが、とにかくうれしい気持ちが伝わってくるポーズだ。

足先の向きがポイント。
タイトル
難易度 ★★☆☆☆
ポーズ 両手はシャツの第2ボタンあたりを外そうとしている。両ヒジは真横に。足はクロスしたうえ、足先が内側にグッと入っている。
コメント なんといっても足が特徴的。足をクロスさせて立ち(ヒザは曲げない)、さらにつま先をそれぞれ内側に向ける。足首の柔軟性が試されるポーズだ。
なかなか優雅に見えるので、ここぞという時には真似したい。
うまい具合に柵があったので、柵にまたがってポーズ。
タイトル 土器づくり
難易度 ★★☆☆☆
ポーズ イスに腰掛け、土器のようなものを両手で持っている。上体は前傾気味だが猫背ではない。右のつま先は伸ばす。
コメント 背筋を伸ばしたまま前傾させるのが難しく、フラフラしがち。
ポーズの方は、改めて見ると労働中の力強さがよくあらわれていると思う。しかしこれは土器づくりのどの工程のポーズなのだろうか。

妙に背景がゴージャス。
タイトル 若い娘の像
難易度 ★★☆☆☆
ポーズ 両手を腰に当て、体重は左側に落としつつ、腰の左側に上がっている。首は思いっきり左に。
コメント 「左に体重を乗せつつ、左腰は上げる」というのがなかなかできずに苦戦。
関係ないが銅像の足元にいた2羽のカラスがものすごい口ゲンカをしており心配になった。

 

■難易度 レベル3

このあたりから体のどこかが痛みをともなうポーズが多くなってくる。
また、片足で立つなど、バランスを保つのが難しいポーズも多く、自分の筋力もしくはバランス感覚の低下を痛感してしまった。

ただ、ポーズ自体はとても芸術性が高い。

右脇腹に激痛が走った瞬間。
タイトル 不明
難易度 ★★★☆☆
ポーズ 左足1本で立ち、左足は体の真後ろに浮いている。左手は前に、右手は後ろにまっすぐ伸び、指先には微妙なニュアンス。視線は上を向く。
コメント 片足なのでバランスを取るのが難しい。左腕は前、右腕は後ろに伸ばすため自然と上半身を強くひねることになり、右脇に激痛が走り、思わずうすら笑いを浮かべている。
まわりの視線がつらい。
タイトル 太陽と収穫
難易度 ★★★☆☆
ポーズ 右肩に荷物を乗せ、両手は頭の後ろに。体は直立だがつま先立ちしているところが難易度を上昇させている。
コメント とにかく厳しいのが「つま先立ち」。実際に荷物を肩に担いでいるのもあって、つま先立ちでフラフラ状態。なんとかブレずに写真におさまった1枚がこれ。
銅像というよりレリーフだ。
タイトル 有島武郎文学碑
難易度 ★★★☆☆
ポーズ 片ヒザを立ててしゃがんでいるが、右足先はできるだけ前へ。上半身の背筋を伸ばしつつ、首を前に出し、アゴは思いっきり上げる。
コメント 右足を前に出さないといけないので、しゃがんでいるだけに見えてけっこうキツイ。しゃがんでいると上半身が前に倒れ気味になるが、そこはグッとガマン。優雅に見えるが実際やるとプルプル震えがち。

一番撮りなおしたポーズがこれ。
タイトル リカ・立像
難易度 ★★★☆☆
ポーズ 足を開いて立ち、右手は後ろ側にまっすぐ落ちていて、左手は少し前に伸びている。上半身はヒネリがあり、顔は右下を向く。
コメント 今回の「意外性No.1ポーズ」。
無造作に立っているだけに見えるが、腰、上半身、首を別々にひねっているので実際にやると難しく、何度もやり直した。銅像あなどりがたし。

 

■レベル4

ここからは特に見た目と難易度のギャップがある銅像を紹介。
パッと見たところは楽勝かと思いきや、実際にポージングしてみると、なかなかうまくいかずに何度もやりなおすハメに…。


なぜか尻の筋肉がつった。
タイトル 足なげる女
難易度 ★★★★☆
ポーズ 両足を投げ出し、手は内モモに。上半身を後ろに倒し、首は思いっきり右を向く。
コメント 上半身が半端な角度に傾いているため、腹筋が必要になるポーズ。おまけに首が横を向いているのでそのまま倒れそうになる。
何気ない女性の1コマを切り取った銅像なのだろうが、実際にはけっこうハードなポーズ。

「マル!」と心の中で叫ぶ。
タイトル 開拓母の像
難易度 ★★★★☆
ポーズ 内股気味にしゃがみ、両手は頭の前で輪に。体はヒネリが入っていて、首は傾けて視線を子供の方へ。
コメント 両ヒザを内側向けてしゃがむのはバランスをとりにくい。腰は右側だが、上半身は左側にひねりながら傾いているのが再現できず。
よく見ると子供が浮かんでるな、こりゃ。
撮影後、観光客が何事かとこの銅像を見に来た。
タイトル 牧歌の像
難易度 ★★★★☆
ポーズ イスに腰掛け、足を開いて座る。両手は角笛を持って左上方面を向く。
コメント 普通よりハイテンションで角笛を吹いているらしく、両ヒジは上げ気味なのがポイント。左の銅像群に向かって吹け!足はけっこうがにまた。
この銅像だけ、他の銅像群から離れているのがちょっとかわいそう。

通行量の多い場所だったので、人が途切れるのを待って撮影。
タイトル 不明
難易度 ★★★★☆
ポーズ 右ヒジをもたれさせて座っている。左足は立て、右足は曲げて左足の下に。左手は浮いている。
コメント 銅像は何かにもたれているが、私はもたれるものがなかったのでとにかくガマン。
おまけにまわりにはハトがたくさんいてフンだらけ。色々な意味で試されたポーズだった。

 

■難易度 レベル5

さていよいよ最大の難易度の銅像たちを紹介。
見た目は美しいが、冷静に見ると「つらくない?それ」と声をかけたくなるポーズばかり。
このあたりになると、自分の気持ちも銅像のテーマになりきっていきたいと思う。


3ポイントシュートッ!
タイトル
難易度 ★★★★★
ポーズ 足は完全につま先で立っていて(バレリーナ立ち)、腕はゆるやかに上げ、指先は広げつつ伸ばす。
コメント まずこのバレリーナ立ちが無理。
腕や指先のニュアンスはがんばって出したつもりだが、バスケのシュート練習をする人にしか見えずがっかり。
それにしても高い場所にあるなー。
タイトル 不明
難易度 ★★★★★
ポーズ 左手は前に出して何かを持ち、右手は優雅に曲げつつ上げる。足はスキップした瞬間に止まったようなポーズだが、上半身は後ろに反らし、尻は後ろに突き出している。
コメント 見本の銅像が遠い…。なんとか真似はしたものの、片足で楽しげに立つのが難しい。
あの女性に、どんなうれしい出来事が起こったのだろうかと思わせる、喜びにあふれたポーズ。
表情に余裕がない。
タイトル 不明
難易度 ★★★★★
ポーズ イスに腰かけ、両足は前方に浮いている。右手は頭の後ろ、左手はまっすぐ前方へ。上半身は少しだけ後ろに傾いている。
コメント 見るだけなら、優雅きわまりない柔らかなポーズ。
がしかし、足は地面についていないし、上半身は後ろに傾いているしであちこちの筋肉が悲鳴をあげた。

立てない!とにかく立てない…。
タイトル 走向世界
難易度 ★★★★★
ポーズ 走っているというよりまさしく競歩中。肩と腰のひねり、手首の曲がり方に要注意。
コメント ただ歩いているだけだと思ったら大間違い!なポーズ。
左足は右に、右足は左に位置しているうえ、カカトとつま先だけで立たなければいけないのが難しく、自分でも笑っちゃうほど立っていられない。

本気でやってるのにこのフラフラ具合。

 

■難易度 その他

銅像は人間以外のモチーフもあるわけで、果敢にもチャレンジしてみた。
平たくいってオマケです。


この時はけっこう似ていると思ったが、冷静に見たら、ただのおどけている人だ。
花時計の針。腹筋に効きそうなポーズ。腰痛持ちにはキツイ。
えぞ鹿。蟷螂拳の使い手ではない。
今回一番の自信作。たまご。

■やってみないとわからない

今回、いろいろな銅像のポーズをやってみてわかったのが、難しくとも「絶対できない」というポーズはなかったので、彫刻家の皆さんもきちんと人体を計算したうえで、作品を制作されているのだなあということです。

また、何気なくポーズをとっているだけに見えても、実は手足の先、体重の乗せ方など美しく見えるように工夫されたうえでのポーズなのでした。

皆さんも、いつも通る駅や公園の銅像のポーズを、あらためて観察してみてはいかがでしょう。
気に留めていなかった「美」があるかもしれませんよ。

そりゃ顔面模写だ。

 
 
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