■ウサギの次は
「まだまだおもしろい狛犬がいますよ。行きましょう!」
「さあ、着きました。次はここです」「なんだかずいぶんこじんまりした神社ですね」「ここの狛犬もちょっとかわってます。さっきの調神社と同じように、神社の名前に秘密がありますよ」
「わかりましたよ。聞いたことがあります。この名前、狼信仰と関係あるんですよね」「おお、よくご存じで」「ということは…」「そうです」
御 嶽神社といえば青梅市の武蔵御嶽神社が有名だが、もともと山岳信仰とオオカミは関係が深いようだ。ヨーロッパなんかでは「オオカミ男」に象徴されるように「害獣」のオオカミだが、農耕の民にとっては畑を荒らす鹿などを食べるのでありがたい存在とされている。また、ヤマトタケルノミコトが武蔵から上野へ向かう途中、2匹のオオカミが彼を助けた、という言い伝えもあり、信仰の対象となっている。よく見ると上の看板にも「御神体 御嶽大神(ミタケオオカミ)」とある。
それはいいんだけど、これはほんとにオオカミと言えるのか?「そうなんですよね。なんとなく精悍さに欠けますよね」そう言って、吉野さんは胴回りを測りだした。ほら、メタボ、とか言いながら。わかったわかった。
■必ずしも鼻じゃなくていい
「でもこれ、鼻の拓が採りづらそうですね」「そうなんです。こういうときは別の部位を採ります」「いいんですか?」「いいんです。そもそもなんで鼻を採るかというと、そこに狛犬の特徴が凝縮されていると思うからなんです。だから鼻以外のところに特徴が出ているな、とい思ったらそこをとればいいんですよ」「じゃあ、このオオカミさんはどこ採りますか?」「オオカミ型の狛犬の特徴のひとつは耳が寝ているところにあります。だからそこを採りましょう」「なるほど」
これがおもったより難しいのだ。
「…これ、けっこう難しいですね」 「いやいや、なかなか上手ですよ」
吉野さんはとても褒め上手だということが分かった。
そうやってできたのがこちらだ。