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土曜ワイド工場
 
自転車フォークリフト
 
道に迷っていると自転車が貼りついた工場を発見。

ある会社が自転車でフォークリフトを作ってしまったらしい。

フォークリフトは敷居が高い。荷物を扱うとなると専用の免許がいる。

なら自転車感覚で扱えるフォークリフトであればみんなが使えて便利なんじゃないのか、と、作られたそんな自転車フォークリフト。想像するに、そういうことか?

分かったような分からないような、微妙にのどを通らない自転車フォークリフトについて、作った人に聞いてきた。

(text by 大北栄人


大阪の和歌山にほど近い熊取というところにあるソシード技研という会社がそれだ。車で行ったらさんざん迷ったが、自転車が貼りついた工場を発見。

玉葱がぶら下がっているが、変り種自転車っぽい何かが。
阪上さん

夏の工場お昼は暑い。
こういう加工も手でやるとなると一時間。
おみやげにする旋盤の切りくずを選んでくれる阪上さん。

変な自転車を300種くらい作ったらしい

出てきたのは阪上さんという社長さんで、ソシード技研は阪上さんがひとりでやってるらしい。今までに作った創作自転車は300種以上。最近ではサイクルフォークリフトを作って取材も色々受けてるらしい。

ちょうどこの記事の掲載日に放送される、関西地方の『ナンボDEなんぼ』という番組にも出るそうだ。すでにテレビでやってるのかー、と、こちらがなえていると、タレントのいとうまいこさんに会ってきたよとなぐさめてくれた。

鉄砲との意外な共通点

さて、この変り種自転車工場は熊取にあり、自転車テーマパークの関西サイクルスポーツセンターは河内長野にある。取材当日の朝にはテレビで堺市の自転車博物館のレポートが放送されていて、どうやら大阪の南の方は自転車と縁深い。

この件について阪上さんになんでですか?と聞いてみたら「あ、それは堺の鉄砲筒ですわー。」とうれしい答えが。

戦国時代に鉄砲鍛冶を行っていた堺では現在自転車製造が地場産業となってるらしい。どちらも共通するのは筒。鉄砲は当然筒だし、自転車のフレームもパイプなのだ。

工場は初めてですんまへん

変り種自転車を作るここにも当然パイプ加工の機械がたくさんある。溶接用、旋盤、ドリルやらスライサーやら多々あって、これは?じゃあこれは?と聞いていたら、「工場は初めて?」と全部細かに説明してくれた。最終的にはクーラーについてもこれは何ですか?と聞いていたのでうんざりしてたかもしれない。

機械を紹介してくれる阪上さんのキメ台詞は「これを手でやるとなると1時間。」聞いてるこちらが「それが機械でなんと…!?」とあおると「まあ2分くらいですか。」とうれしい時間短縮が聞けるので「58分儲かりましたねー!」と、阪上さんを儲けさせてみる。場がどんどんホクホクしてきた。

旋盤の切れ子と呼ばれる鉄のゴミがばねのような形をしていて面白かったので、お土産にくれー、とねだると「ちょっとええのん選びますわ。」と良いゴミを選んでくれる阪上さん。ええ人です。

ちなみに入り口の玉葱は奥さんのご実家からだそう。

一通り工場の設備を紹介してもらって、肝心のあれを見せてもらうことに。

これがサイクルフォークリフト。意外と小さい。

70kg程度の男性を上げる動画。

くるくる回して荷物を上げ下ろし。

見つめあう二人が動く様子を動画で。

耐荷重=運転者+30kgが崩れそうになり一転ピンチ動画。

これがサイクルフォークリフト

上の動画で取材に同行してくれたそんちという男がハンドルを回し、70kgの阪上さんを持ち上げている。70kgを上げるのに力はそんなに要らなかったという。

左中段の動画では一番上まで上がった阪上さんと、「目を合わせてみた。」という運転手そんち君との視線の交差角度が尋常でない。こんなの初めてみた。

動画内で同行者が「楽しいっすわ。」ともらしているように、実際に楽しいのだ。ハンドルや駆動にあそびがなく、クイックイッとダイレクトに運転が伝わる。おっさんを高みに載せて前後に動くという異常事態がおもしろいのかもしれない。いやいや、やはり上げ下げと移動の感覚が新鮮なのだ。

基本的に楽しいもんなんですねー、と言うと、「せやから作ってても楽しいんですわ。」と阪上さんが笑顔になる。あるメーカーでは倉庫からトラックまでの荷物移動にこのフォークが使われているらしい。担当者は女性の方なのだが、仕事なのに乗ってて楽しいと好評のよう。

 

弱点もある

実際の重いフォークリフトならともかく、パイプでできたこのフォークだと、重い荷物を上げる際にバランスを崩してフォーク自体前に倒れるのでは?と聞くと「そう、だから耐荷重=運転手+30kgなんです。」という答えが。運転手が座ることにより、荷物の重さとバランスをとるのだ。弱点に触れてしまった同行者が怒られる様子はまた動画で。

 

そもそも何でこれを作ったのか?

阪上さんは色々な自転車を作っているうちに人力のノウハウみたいなものを身につけていった。世の中の動力はもっと人力でもええんとちがうかな、という思いで作ったらしい。「まあエコですわ、エコ。」と言うのだが、エコにしてはちょっとおもしろすぎる気がする。

このフォークを実際のフォークリフトの代用とするには、サイズや耐荷重などかなりニッチな条件が合致しないと無理なんじゃないだろうか。阪上さんはエコだ人力だと言うが、やはりその随分前に「おもしろいから」「楽しいから」という理由がある気がしてならない。あくまでもこちらの推測だけれど。


ところで阪上さーん、これなんですかー?


 

 
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