●眉毛以外のつながる何か

この日は実家に行くことになっていたのだ。せっかくおめかししたので、このまま出かけることにしよう。

　モサモサとしたコネクト部分も頼もしいのだが、外出するということもあって、ここは迫力よりも自然な感じを狙いたい。形を本眉毛となじませ、毛の長さもトリミングして調整。

　…少しはナチュラルな感じになっただろうか。

　そもそもナチュラルもへったくれもない話だと思うが、微妙な変化を大事にしたい。さあ、車を運転して実家に向かおう。

　実家のドアを開け、いつも通りに入る。迎えて出た母が、息子の異常に気がついた。

　母とつながり眉毛、初めての対面の瞬間が右の写真だ。ぶれているのは撮影者である妻がここでも笑っていて、カクカクしながらシャッターを押したからだ。

　「これは大事な写真だから、脇をしっかり締めて撮るように」と、あれほど事前に念を押したのだが、できてない。

　大変申し訳ないが、ぶれた画像の奥にある母の表情を読み取ってほしい。あっけに取られている様子がなんとかわかるはずだと思う。

　玄関での騒ぎを察したのか、父も奥からやってきた。母がまだ事態をよく飲み込めていないのに対して、父はいきなりの爆笑。予想以上のリアクションだ。

　こんな父の笑顔を見たのは、いつ以来だろうか。

　爆笑したあと、何の説明も聞かないまま再び奥に引っ込んで新聞を読み始めた父に対して、母はつながった眉毛に興味津々。こんなところにも対比が表れた。

　いまだ眉毛に釘付けの母は、「ちょっと触らせてよ」と言い出した。「思っていたより硬い」という感想らしい。

　プロピアでつなげたこと、製品の特徴を説明すると、「ああ、そうなんだ、ふーん…」と、わかったようなわからないような反応。そのリアクションの原因は、私が「なぜ眉毛をつなげたのか」という部分について説明していないことだと思う。

　ただ、それはうまく説明できない。なんとなくおもしろそうだから、くらいでしかない。母もそれを察したのか、それ以上は深く聞いてこなかった。

　せっかくだからということで(それもよくわからないが)、家族三人で記念撮影。父も母もいい表情をしていると思う。こんな写真を撮るなんて、随分久しぶりだ。

　もしかすると、私が眉毛をつなげたことで、家族の心もつながったのかもしれない。