それにしても高すぎやしませんか?
……1万3,000円あれば何が買えるだろう……1万3,000円稼ぐには何時間働けば足りるだろう……1万3,000円あれば東京から新大阪まで新幹線で帰れるよな……。六本木までの道中、そんなことばかりを考えていた。どう考えてもハンバーガーが1万3,000円もするなんて高すぎると思った。どんなにおいしいハンバーガーが出てきても納得できないんじゃないだろうか? だって1万3,000円だもん。ぶつぶつ……
どうも高級ホテルが苦手です
六本木の東京ミッドタウン、取材日が週末ということもあってか、多くの人でにぎわっていた。ミッドタウンはこの日が初めてだったので、敷地の中で少し迷うかと思ったのだが、迷わなかった。ミッドタウンで最も高い建物がリッツカールトンだからである。
正直、もう少し迷いたかった。もう少し先延ばしにしたかった。気持ちを整理する時間が欲しかった。どうも僕は高級ホテルとか、高級レストランとか、そういった類のものが苦手だ。どうしていいのか分からない。でもここまで来たからにはしかたない。別に僕は食い逃げしよう、と思っているわけではないのだ。後ろめたいことは何もない。怖気づく必要もない。それなのになぜか少しびくびくしながら、ああもう少しいい服着てくればよかっただとか、ああ僕の顔はどう見ても貧乏そうだとか、ぶつぶついらぬことを考えていた。(気持ち分かりませんか?)
どうも高級ホテルがわかりません
1F(ホテルではグランドフロアって言いますよね)のエントランスをうろうろしていても一向にロビーらしきものが見当たらない。すると今度は『これより先は、ホテルのお客様のみご利用になれます』との看板。僕はホテルのレストランを利用するので入っていいはずなんだけど、でもちょっとびくびくしながら、ああ、自分は本当に気が小さいな、と思いながらまわりをきょろきょろ見渡す。さっきからホテルのボーイだと思しき人がこちらをちらちら伺っている。あまりにきょろきょろしていても挙動不審だと思われるので、ボーイさんに『すみません、ロビーはどこですか?』と聞くと『ロビーは45階です』といわれる。
ロビーが地上階じゃないのか! ロビーがそんなに高所にあるとは! そりゃ1階でうろうろしていても見つからないわけである。僕はていねいなボーイにエレベーターまで案内してもらった。最後に『どうも』と礼を言うとき、自分の声だと思えないほど低い声だった。緊張しているときやよそ行きのとき、男性は低い声になり、女性は高い声になるらしい。 |