取材後記
工場の感想をひとことで言うなら、夢の中のようだった。
妙にはっきりとした夢を見たようだった。
宮殿も、本社の馬鹿でかいエントランスも、抜けるように晴れた取材日和も、今治もみんなみんなウソだったんじゃないか。
工場のそばには地中海かと思えるぐらいきれいな海があって、思ったより早く取材の終わった僕らは海岸で一休みしていた。林さんと、斉藤さんと僕と藤原君。年齢も職種も違う男4人が最後に海にたどり着いた。単館映画のラストみたいな雰囲気。
その写真を最後に使いたかったのだが、撮ったはずのカメラに画像が残っていない。やっぱりあれは夢だったんじゃないか。そういえば海で藤原君が自分の親指と会話していた。やっぱりあれは夢だ、きっと。そうに違いない。 |