本当に気まずい
本来ならば、酒解禁時間まで残り1時間だったのだが、急にいたたまれなくなってきた。自分ひとり酔っ払っている状況が、おそろしく気まずく感じる。
「じゃじゃじゃじゃあ、もう止めていいことにしましょう! みなさん、一緒に飲みましょう!」
思わず、そんなことを口走っていた。なにより、上戸の皆さんに申し訳ないという気持ちが強い。正直、もう企画のことなどどうでもよかった。すでに、この場を和ませることしか考えていない。
しかし、そんな私の提案を上戸の皆さんは「いやいや、いいですよ、せっかくなんだから、あと1時間頑張りましょうよ」と言ってくださる。せっかくのこちらの申し出を、誰も受け入れてくれない。
…どうしたんだ。下戸の方の優しさが感染したのだろうか。いや、でも。…ああ、いたたまれない。
そんなツライ状況から目を背けさせてくれる魔法の液体が目の前にある。酒だ。
もう、ぐんぐん飲んだ。この状況を忘れるために、飲んだ。そして隣に座っている藤原に絡んだ。なぜか下戸の土屋さんも一緒になって絡んでいたが、絡まれた藤原くんにはこの場を借りて謝罪する。すまなかった。
まるで飲んでる人たちみたいだ
記事を書く人間(私のことです)が一番冷静に周りを観察しなければならないというのに、間違いなく一番周りが見えてない。
明らかに失敗だ。どうするんだ。どうやって記事をまとめるんだ…と頭を抱えつつ、目の前の問題から逃げるために、また酒を飲む。そして、話題に詰まると藤原いじりだ。
そんなとき、途中から遅れて参加していた宮城さんが、チョンマゲの髷をほどきだした。こうなると私を含めた皆の興味が、藤原から宮城さんに移行しないわけがない。
おのおの髪の毛の匂いを嗅いだり、ヒゲを触ったり、もう好き放題やらかしている。されるがままの宮城さんもニコニコと、とても嬉しそうだ。
もし知らない人がこの場を見たら、確実に全員酔っ払っていると思ったことだろう。しかし、私以外は全員シラフだ。一滴たりとも飲んでいない。
まるで「宴会に酒は必要ありませんよ」と言い切りたくなるほどの盛り上がりっぷりである。
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