男3人にしました
菜の花、花のなかでも地味な花である。ガーベラ!のような派手な響きもなければ薔薇のような艶やかさもない。文化系だ。擬人化するならばきっと眼鏡を掛けているような花だ。
今回、花を見る趣味がない男同士で行ったほうが企画の輪郭がはっきりすると思い、現在無職で時間に余裕が宮城さんを誘った。宮城さんとは以前、みかん狩りに行って仲良くなった(「微妙な仲の人とみかん狩り」)。職探しの手を休めて花を見るのもいいだろう。
月にいちど流しているデイリーポータルZテレビの素材になるかもしれないのでカメラマンの大北くんも呼んだ。テレビでは主にイベントの様子を伝えているが、次回のテレビ用に収録した素材が乙幡さんのイベント2件なので別の素材も欲しいと言っていたのを聞いたからだ。
だったら俺たちが花を愛でている様子を入れたらどうだということである。
色白の女性ライター(乙幡さんです)を削ってちょんまげが花を見ているところを入れるのだ。ウェブマスターとしてチャレンジングな判断である。
花を見に行くと思うだけで豊かな気分になる
朝9時45分、品川駅集合。会社に向かう人が足早に歩くなか、我々3人がこの駅でいちばん優雅な理由でここにいることを確信する。なにしろ花を見に行くのだ。ノーブルな気持ちになる。
目的地までは電車で2時間弱。さっき駅ビルに入っているクイーンズシェフ(高級スーパー)で弁当を買ったので各自それをあける。
宮城・大北はふたりともぼた餅を買っていた。
今回の主旨は「花は見て楽しいのだろうか?」なのだが、実はもうこの時点でかなり楽しくなっていた。花を見に行くためだけにわざわざ出かけるという行為がとても豊かな気分にさせるのだ。
ふたりのぼた餅もその現れだろう。
喜びの表現が江戸時代の農民みたいになっているのが気になるが、これもまた浮かれのひとつである。僕の写真のキャプションが七五調になっているのも浮かれだ。
そして花は逃げない
伊東駅で伊豆急行に乗り換えた。隣のボックスにいたおじさんの集団も同じ駅で降りた。あのおじさんたちも菜の花めあてだろうか。
僕らも急がなければ!と思ったが花は逃げないのだ。先着ではない。
みな区別なく花を楽しめばいいのだ。そんなジョンレノンみたいな気分で目的地の城ヶ崎海岸駅に到着。ここから歩いて20分ほどの伊豆海洋公園に菜の花が咲いている。
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