●隙あらばコネタを仕込んでくるハッピーターン
黙々と作業していると、気づいたことがあった。
ハッピーターンはキャンディのような包み方で個包装されているのだが、その包装紙になんだかいろいろ書いてあるのだ。「小ネタでハッピー」とある。
その名の通り、恋愛や運勢にまつわる、おまじないなどの小ネタが書いてあるこの包装紙。おせんべいをポリポリ食べながら、軽い気持ちで読むのが楽しそうな小ネタがたくさん載っている。
それはいいのだが、それらの中には、内容がどうも気になるものも見受けられるのだ。
「輪切りの大根に…」で始まるこの小ネタ。そこまではいいのだが、続く言葉が「味噌で好きな人の名前を書いて、電子レンジで3分間加熱します。」なのだ。
料理のお手軽レシピかと思いきや、最後まで読むと、恋の占いではないか。
「幸運を祈る!!」と締められても、どうも釈然としない。ドキドキ恋愛占いと、「大根に味噌で好きな人の名前を書く」ということが、自分の中でまだつながらないからだ。
ぐずぐずになって読めなくなった味噌を前に、「もう恋は叶わない…」と思う場面もあり得ると思うとむごい。
こちらも恋のおまじないなのだが、どうも呼びかけていることが軽く呪術めいている。結局、持ち歩くのは消しゴムのカスなのだ。
「あの人が振り向いてくれるかも」とあるが、振り向く理由は「なんであの子、消しゴムのカス持ち歩いてるんだろ」という、いぶかしさなのではないだろうか。
振り向くかもしれないが、恋が叶うわけではない。確かにこの小ネタでも、恋が叶うとは言ってない。
印刷の関係で一部見切れているが、要約すると「パジャマを裏返しに着て寝ると、夢の中で好きな人とデートできる」という恋のおまじないだ。
そうなのか。個人的にはそういう意図なく、朝起きたらパジャマを裏返しに着ている自分に気づくことがある。
夢の中で誰ともデートなんかしていない。ぼんやりした頭に、うろつな情けなさが漂うだけだ。
これも占いやおまじないだと思って読み始めると意表を突かれる。最後まで読むとわかるが、言ってることはあくまで精神論なのだ。
しかも後半ではかなり無責任な感じになっている。ただ、その軽さがここではいい味になっているとも思う。
中には特別な小ネタもあった。
「幸運の包み紙」と「幻の包み紙」がそれだ。ただ、珍しそうな包み紙の割に、文のはじめは「ヤッター!」とか「すっごーい!」といったように、あくまで軽い。
それに続く文も、なげやりなまでに超ハッピーを主張。ほめ殺しのような雰囲気すら感じるくらいだ。
……などと、いろいろ考えながら地味にハッピーパウダー精製の作業を進める。先ほどからさらに一時間すると、二袋目がちょうど終わった。
ハッピーパウダーを取ったハッピーターンは、「ハッピーレスターン」とでも呼べばいいだろうか。食べてみると、確かに粉はついていないのだが、まずまずいつもの味がする。粉が取れたとは言え、その名残りはしっかり味として残っているのだ。
さて、夕食の調理に使う分は取ることができただろう。それではいよいよ、ハッピーパウダーを味わってみたい。