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はっけんの水曜日
 
足跡を気にする

足跡。

インターネットの世界ではなにかと気になるのが「足跡」だ。「足跡」をたどれば誰が自分のページを読みに来たのかわかってしまう。役立つけどちょっと厄介、そんな存在、足跡。

バーチャルの世界でこうなんだから、実際の足跡にも役に立つ情報が含まれているんじゃないか。あまり深く考えずに採取してみた。

安藤 昌教



歩道に紙を貼ります。

セッティング

採取する場所は自分の店の前。うまくいけばどんな人たちが店の前を通り過ぎているのかわかるかもしれない。小学生とかしか通らないことが判明したら移転しよう。

採取法は簡単、歩道に紙を並べて貼り付けるのだ。踏んだ分だけ足跡が残る。紙は表面強度と耐水性の高いケント紙を選んだ。

そのままでも踏めば足跡が付くのだが、より濃くサンプリングするため周囲一帯に灰をまいておいた。このあたりの知恵は動物の足跡取りの方法から学んだ。動物の場合は墨汁を染みこませた雑巾とかを周りに置いておくらしいが、さすがに人にそれは通用しないと思い灰を選んだ。

人が通りそうな場所をカバー。
前後広範囲に灰をまく。
伝わるだろうか、僕のメッセージ。

しかしいきなり歩道に紙が貼られていたら怪しまれて踏んでもらえないかもしれないなと思い、一応踏んでよい旨を記載しておいた。これで準備完了だ。

紙を設置している間にすでに何人か紙を踏みながら僕の横を通り過ぎていった。すかさず紙を観察するとばっちり足跡が残っている。さいさきのいいスタートだ。

測定時間は朝10時から夕方4時までの6時間。はたしてどれだけの足跡が残されるのだろうか。

記念すべき足跡第一号はこの方、知らない人。
その後も次々と足跡は増える。

 

こうやって完全に踏んでもらえるとうれしい。

踏まない人が多い

観察していると、この道は思っていたよりもずっとたくさんの人が通り過ぎていた。眺めていると人は二種類に分けられることがわかった。怪しいものを気にせず踏む人と、踏まない人だ。圧倒的に踏まない人が多い。みんなそれとなくよけて歩く。

見えない振りをしてまたいでいく。
こちらはささっと避けて横を通過。

 

掃除の人に目をつけられるとやばい。

興味を持つ人も多い

横でカメラを構えながら見ていると、何人かの方から質問された。

  • これ、なに
  • 工事か何か?
  • あ、ごめんなさい踏んじゃった

途中、周辺で街路樹の伐採作業が始まってしまい作業員の方がぞろぞろとやってきた。ほぼ全員に同じ質問を受ける。

「これ、取っていいの」

ごめんなさい。

前に名古屋でへんなことしていたときにも周りの人が興味の目でずっと僕を見ていたのを思い出した。林さんは「東京では何やっても周りはほとんど無関心です」みたいなことを言っていたが、沖縄では興味ありありだ、そして納得するまで聞いてくる。

はからずも県民性まで浮き彫りになってきたなと思っていた矢先、目の前で自転車がこけそうになった。僕の貼った紙をよけようとしたのだ。

タイヤ痕はすべてを語る。

ごめんなさい

でもこけなくてよかった。紙にはしっかりと避け切れずに斜めに走行したタイヤ痕がのこっていた。

紙を回収します。

6時間、たくさんの質問やご意見を頂きました。ごめんなさい、ご迷惑をおかけしました。紙を回収していよいよ足跡の解析に入りたいと思います。

 

足跡を解析する

回収した紙には実にたくさんの足跡が残っていた。

しかし足跡が多すぎて何重にも重なり、判別できるものが正直すくなかった。採取時間が長すぎたのかもしれない。その中から判別することのできた足跡をいくつか紹介します。


でかい円がソールに二つ。推定サイズ28センチ超。アメリカ人かも。
ジョギングシューズらしき跡。推定24センチ。女性ランナーか。
パンプスのかかと跡とみられるもの。裏の形状が完全に残っていることから、あまり減っていない新しい靴だと推測できる。想像力だけは人一倍だ。
べたっと付いたスニーカーらしき足跡。はみ出しているので計測不能だが、かなりでかい。はっきり残った跡は彼がゆっくり歩く人だということを語る。
斜めに横切る自転車のタイヤ痕がいくつもあった。やはり避けようとしてハンドルを切ったのだろうか。見ていた限りでは誰も転ばなかったが、これからは自転車のあまり通らないところでやりたいと思う。
とがったヒールの跡。フェチ心がうずいてかかと部分も必死で探したが、残念、見つからなかった。もちろん女性のものと思われる。

今回の調査からわかったこと

  • 怪しいものは避けて通る人がほとんどだ
  • 実際の足跡はたくさん集まると個々の判別が難しい
  • 足跡は想像力を掻き立てられる
  • 対象を絞らずに実験をすると全員に説明するのが面倒だ

ネット上の足跡だと誰が来たか一目瞭然なのだが、実際の足跡だと限られた情報しか得られない。しかし少ない情報から想像を膨らませるのがまた楽しいのだ。素足の跡とかあったらそうとう狂おしかったろう。またひとつ、アナログのよさを再確認しました。

メッセージを読みながらも避ける。

 
 
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